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ナビの示す先は異世界でした  作者: フツカ
ゲリラライブでお金持ちに!? 歌で異世界を圧倒する私、聖樹の力でさらなるチート能力に目覚める

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神改造マイカーの超性能に人狼たちが大興奮! & 秘密のプロポーズ大作戦

 眩暈がするほどの浮遊感のあと、すっと足が地面についた。

 鼻をくすぐったのは、ネオンや排気ガスの匂いではない。

 人狼の里を包む、懐かしい夜の森の匂いだった。


「……戻った、か」


 ジークが周囲を油断なく警戒しながら、私の手をそっと離した。

 役目を終えたチケットは、ただの古びた紙切れに戻っている。

 そして、私たちの足元には――。

 上の世界で爆買いした、大量のレジ袋。


「わぁっ!? ミュウにジーク!」

 駆け寄ってきたアンが、私たちの荷物を見て目を丸くする。

「一瞬消えたと思ったら……なにその大荷物!? 一体何があったの!?」


「え? 一瞬……?」

 

 あちらでは三時間も怒涛の爆買いをしていたのに、下の世界ではほんの一瞬しか経っていなかったらしい。


「族長さんにもらったチケットで、女神様のいる上の世界に転移してたんだよ」

「簡単に説明すると、怒涛の買い出しツアーだったな……」

「怒涛ってレベルじゃないよ! 何をそんなに買ったの!?」


 アンがレジ袋の山をのぞき込む。

 私は手に入れた現代品を見せながら、上の世界での出来事を手短に説明した。


「へえ……! そんな世界があるんだ!」

 アンは目を輝かせたあと、ふっと表情を引き締めた。


「でも、これだけあれば薬草を探す準備もできそうだね!」

「うん。マリアを助けよう」



 そのまま族長のレグルスさんへ立ち入り許可の報告へ向かうと、

「おお〜行ってこい行ってこい! 俺の誕生祭を盛り上げてくれたんだ、森の聖樹でもなんでも好きに使え!」と二つ返事で許可を出してくれた。


 里を出ようとした時。


「美優! 」


 若い人狼のルプスが、隣にいたミラと一緒に駆け寄ってきた。


「僕たちも同行させてほしい! 案内もできるし!」

「もちろん! 二人が来てくれたら心強いよ! じゃあ、みんなで車に乗って行こう!」

 私は笑顔で頷いた。


 ルプスがそっと私の袖を引く。

「美優……ちょっと、いい?」

「ん? どうしたの?」


 ルプスはミラの方をちらりと見て、声をひそめた。


「実はね……僕、聖樹のところでミラにプロポーズしたいんだ」

「ええっ!?」


 思わず声が裏返った。

「プロポーズ!?」

「しーっ! ミラに聞こえちゃう!」

「あ、ご、ごめん!」


 慌てて口を押さえる。

 ルプスは耳まで赤くしながら、それでも真剣な顔で続けた。


「僕、ずっとミラと一緒にいたいんだ。だけど……ちゃんと言葉にして伝えたことがなくて」


 いつも元気いっぱいなルプス。

 そんな彼が、今は落ち着かない様子で自分の手を握りしめている。


「だから……美優の最高の歌で、応援してほしい!」

「……うん!」


 私は思いきり頷いた。

「任せて! とびっきりのプロポーズにしよう!」


「私も光の魔法で、最高のムードを作るよー!」

 いつの間に聞いていたのか、アンまでノリノリで手を挙げた。


「アン、聞いてたの!?」

「聞こえちゃったんだもん!」

 アンはにっこり笑う。


「大丈夫! 絶対、二人の一生の思い出にしてみせるから!」


 ルプスは少し照れくさそうに笑った。

「ありがとう……!」


 よし。これは責任重大だ。

 マリアを救うための旅の途中だけど、大切な仲間の人生の節目でもある。


 せっかくなら、忘れられない夜にしよう。

 私は、こっそり拳を握った。

 ――最高の演出、やってやる!



「うわああ! 美優の乗り物、すっげー!」

 ミニチュアカーを元の大きさに戻すと、ルプスが目を輝かせた。


「小さかったのに、こんなに大きくなるのですね……!」

 ミラも驚いたように車を見ている。


「ふふん。神改造の力だよ」

「ミュウ、説明になってない!」


 アンのツッコミを聞きながら、私たちはなんとか車に乗り込んだ。


 ただし、車内は爆買いした荷物で大変なことになっている。

 足元にも、膝の上にも、荷物、荷物、荷物。


「ミュウ! 買いすぎ! 狭いよ〜!」

 百均の大袋を膝に乗せたアンが抗議した。


「ごめんごめん! でも、必要なものばっかりだから」

「その必要なものが多すぎるんだってば!」


 助手席のジークは、懐から爪切りのパッケージを取り出して、なぜか満足げに眺めている。

「フッ……ミュウの買い出しのバイタリティは、ドラゴン並みだったからな」

 どうやら、あの爪切りはすっかりお気に入りらしい。


「すごい! こんなに綺麗な袋、見たことないです!」

「ねえミラ、これ食べられるのかな!?」

「ルプス、それは袋だから……」

「そっか!」


 私は思わず笑ってしまった。

 お菓子はあとで分けてあげよう。


 私は眠くならないように辛い味のガムを噛み、減った体力をゼリー飲料で補給する。


 (さすがに、三時間も全力で買い物すると疲れるな……)


 運転は神改造の自動運転に任せているけれど、精神的にはなかなかハードだ。


「ミュウ、大丈夫か?」

 ジークがちらりとこちらを見た。


「うん。ちょっと疲れただけ。ジークは平気?」

「訓練に比べれば、どうということもない」

 頼もしい。

 

 眠気を紛らわせるため、私はミラに話しかけた。


「そういえば、ミラ。人狼族の魔法って、人間の魔術とは違うんだよね?」

「はい。私たちの力は、咆哮や息、鼓動などを通して発動します。人間の魔術よりも、本能に近いものですね」

「へえ……! 詠唱もするの?」

「短いものなら。歌のように、音に力を込めるのです」

「歌みたいに……」


 私は思わず、ハンドルの向こうの夜道を見つめた。


 音に力を込める。

 歌で、誰かの心を動かす。


 私の歌も、この世界で何かを変えられるのだろうか。


「例えば、どんな魔法があるの?」

「軽い治癒の『月癒』、防御力を高める『月護』、攻撃力を高める『月鼓』などです」

「私にも使えたらいいのになあ」


 すると、ミラは少し考えるように視線を落とした。


「これは、私たちの血が持つ力ですから……美優さんには、同じ形では使えないと思います」

「そっか。残念」


 私が肩を落とすと、ミラは優しく微笑んだ。


「でも、美優さんは私たちとは違う“月”に触れている気がします」

「違う月?」

「はい。だから……あなたは、あなたの形で誰かを癒せるようになるのかもしれません」


 その言葉が、胸の奥に小さく残った。


「……そうなれたら、いいな」


 マリアを助けたい。

 目の前で困っている人を助けられる力が欲しい。


 そして今夜は――

 ルプスの願いも、ちゃんと届いてほしい。


 そんなことを考えていると、後部座席から元気な声が飛んできた。


「すっげー楽しいー!! 景色が溶けてるー!」

 ルプスが尻尾をぶんぶん振り回している。


「ルプス、あまり尻尾を振ると荷物に当たるわよ」

「だって、こんなの初めてだもん!」


 ミラはシートにもたれ、流れていく景色をうっとりと眺めていた。

「本当に不思議な乗り物ですね。まるで疾風になった気分です」


 どうやら二人とも、車酔いとは無縁らしい。


 途中、道に飛び出してきた魔物を車がひょいっと飛び越えた時には、ルプスが大歓声を上げた。


「今の、もう一回やって!」

「アトラクションじゃないんだから!」


 そんなやり取りをしながら、車は夜の森を滑るように駆け抜けていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

人狼の里に戻りました。


次回から、実験的に時間を変更し、【10/25(日)12:20】に更新予定です。

プロポーズを盛り上げていきます。


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