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ナビの示す先は異世界でした  作者: フツカ
ゲリラライブでお金持ちに!? 歌で異世界を圧倒する私、聖樹の力でさらなるチート能力に目覚める

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門番に日本酒とさきいかを差し出した結果、美味すぎて職務放棄を始めました

 数時間後――

 荒野の果てに、赤茶けた岩壁をくり抜いて作られた巨大な門が見えてきた。


「……見えた! あれが人狼の里だよ!」


 アンが指差した先には、ナニヴァルとはまるで違う、野生の力強さと独特の文化が混ざり合った集落が広がっていた。


「本当にあっという間だったね」

「うん、思ったより早かったよね。それじゃ、二人とも車を降りる前にこれをつけて」

「ミュウ、これなに? カチューシャ? ……耳……?」


 アンとジークに、キャンプでつけようと思っていたパーティグッズの『犬耳カチューシャ』を渡す。


「人狼族って排他的だったんでしょ? 少しでも“歩み寄る姿勢”を見せた方がいいかなと思って」

 

 私は白い丸耳。アンは黒柴耳。ジークはリアルなウルフ耳だ。


「面白そうだからいいよ! わおーん!」

 アンは早速カチューシャを装着し、ノリノリでポーズを決めている。


「俺も……つけるのか……」

「うん、似合うと思うよ。あ、手袋も――」

「それは勘弁してくれ……」


 アンと私は肉球つき手袋まで装備した。


 さらに、手ぶらで訪問するのも失礼だと思い、姉が車のトランクに積んでいた純米大吟醸の一升瓶と、大袋のさきいかを持っていくことにする。



 車を小さくしてポケットに忍ばせ、門に近づくと━━大きな耳とふさふさの尻尾を持つ門番が、鋭い槍を交差させて立ちはだかった。


「そこの三人、止まれ!」



 肘から先、膝から下はふかふかの毛で覆われ、鋭い爪が覗く。幾何学模様の布をラフに着こなした服装は、まさに野生の戦士だ。


「すみません、森への立ち入り許可をお願いしにきました」

 私が一歩前へ出て声をかける。


「人間……か? だが、その耳は悪くない。友好の意思を示す風習か?」

「はい。少しでも仲良くなれたらと思って」

「……殊勝だな。森に入るには族長の許可が必要だ」

「お願いしに来た立場なので、贈り物も持ってきました。お酒とおつまみです」


 若い方の門番の目が、カッと輝いた。

「おおっ! 酒だと!?」

「バカ者、待て! 人間の持ち物だ、毒が入っているかもしれんぞ」

 年配の門番が渋い顔で制する。


「そんな毒なんて! じゃあ私が飲んで――」

 私が袋から取り出そうとすると、二人は一歩前へ踏み出してきた。



「いや、こちらで毒味をする!」

「俺がするよ! あんたは昨日、腹を下してただろうが!」

「何を言う! お前には子供が生まれたばかりだろう!ワシが飲む!」

「いや、若い俺の方が毒に強い!」

「ワシの方が適任だ!!」


 ……ただ自分が飲みたいだけでは?


「どっちでもいいから早くしてよー!」

 アンが呆れて叫ぶと、二人の言い合いはさらにヒートアップした。


「……二人で少しずつ飲んで確認すればいいだろう」

 ジークの冷静な提案で、ようやく決着がついた。


 私は使い捨ての紙コップを取り出して渡す。


「はい、どうぞ」

「なにっ……恐ろしく軽いぞ!?しかも白い……」

「紙でできています」

「人間の技術はそこまで進化しているのか……!」


 そして瓶を見た瞬間、二人の耳がピンッと同時に直立した。

「なんと美しい透明な瓶だ……! 一体どうやって作っているんだ……?」

「おい、中の酒も水晶のように澄み切っているぞ……こんなものは見たことがない……」


 蓋をキュッと開けた瞬間――

荒野の砂っぽい匂いが、一瞬で果実の甘い香りに塗り替えられた。

 二人の鼻がヒクヒクと同時に動き、ふさふさの尻尾がパタパタと大きく揺れ始める。


「……っ!? なんだこの匂いは。酒……なのか? まるで果実の精霊を閉じ込めたような……」

 二人は恐る恐る、コップに口をつけた。


「こ、これは……! 水のように滑らかで、喉をすっと通っていく……!」

「雑味が一切ない……! 蜂蜜より甘く、湧き水より澄んでいる……神の飲み物か……!?」


「どうですか? 毒はないですよね?」

「いや、一度では判断がつかない。もう少し試す必要がある!」

「たしかにそうだな、俺ももう一口……」

「あ、お前! その袋は何だ!?」

「おつまみの『さきいか』です」

「ほう、それも毒味をしておこう!」

「あっ、俺も!」

 

 袋を開けてさきいかを渡すと━━二人は一口噛んだ瞬間、目を見開いた。

「おい……この乾燥した紐、噛めば噛むほど濃い出汁と旨味が出てくるぞ……!?」

「噛み応えも最高だ……酒との相性が恐ろしいことになっている……!」


「おい、酒を飲むと、この紐が欲しくなるぞ!?」

「この紐を噛むとまた酒が欲しくなる……!」

「なんだこれは……呪いか!?」

「危険だ! だがやめられん!」


 まろやかな日本酒の甘みと、さきいかの塩気とうま味。

 『甘い・しょっぱい』の禁断の無限ループが完成し、二人は「毒味」と称して酒とさきいかを猛烈な勢いで消費し始めた!

 


「お二人とも、もうそろそろ……」

 たまりかねて私が声をかけた時には一升瓶の酒もさきいかも、綺麗に半分に減っていた。


「お前、いいやつだな!!」

「大歓迎だぜ! あ、おい、そこのお前! ちょっと来い!」


 通りかかった人狼族の少女が呼ばれ、私たちはそのまま族長の館へ案内してもらえることになった。



 ……手土産が半分に減っちゃったけど、族長さんへの分、足りるかなぁ……?



 門の向こうでは、大勢の人狼族たちがこちらを見ていた。


「おい、うまい酒を持ってきた人間か!?」

「あの白い袋の食べ物は何だ!?」

「族長に知らせろ!」


 ……なんだろう。

 私たち、薬を探しに来たはずなのに。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

せっかくの手土産が半分に減ってしまいました(笑)


次回は【9/13(日)19:00】に更新予定です。

族長に森への立ち入り許可をお願いしにいきますが、またそこでも一騒動あります。そして族長の誕生祭に出席することに……!?

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