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ナビの示す先は異世界でした  作者: フツカ
転移先は異世界!?出会いと学院生活、そして放課後の罠

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二日酔いに効く魔法!?先生のドヤ顔と、地下での実戦訓練

 次は同じ二階にある教室で、個人レッスンだ。


「……失礼します……」

 教室に入ると、昨日と同じくカサンドラ先生が待っていた。


「今日もよろしくお願いします……」

「美優、今日は元気がないわね。それにハーブの匂いがすごいわ」

 ここでも同じことを言われた。


「すみません、先生……飲みすぎてしまいまして……

あの、こういう状態に聞く呪文はありませんか?」

「あらあら、それは大変ね。飲みすぎには気をつけるようにね。でもちょうど良かったわ。

解毒の魔術を教えるわね。麻痺毒に晒されたり、毒を飲まされてしまった時にいいのよ。

ただし二日酔いは完全回復ではなくて、楽になる程度ね」


 毒って何だか物騒だなあ。そんな目に遭わないといいけど……



「東エリアの酒場で昨夜騒ぎになった歌姫の話を聞いたの。

聴いたこともない神聖な異国の旋律を歌って、酒場の淀んだ空気を一瞬でカラッと晴れ渡らせたらしいわね。

貴女のことではないかしら?」

「……酒場には行きましたし、つい、歌ってしまいましたが……」

 アンから聞いていたけど、そこまで話が大きくなってるとは……


「やっぱり貴女だったのね!」

 カサンドラ先生の顔が輝いて見える。

「あの浄化の波動……魂が澄んでいる者にしか出せないわ!」

「そ、そうでしたか……」


「貴女のその清らかな魂の歌だもの、それくらい奇跡が起きて当然よ」

 ……先生はすごく楽しそうだ。



「それじゃあ、今日は解毒の呪文を教えるから地下へ移動しましょう。

実験、訓練用の場所よ」

「わかりました」


 地上とは違って、地下は下に行くほど部屋が広くすり鉢状になっていく。

 まるで『逆ドリル』のような不思議な構造だった。

 薄暗く厚い石壁に囲まれていて、外の街の賑やかさが完全に遮断された静寂が広がっている。



「先生、なんだか……秘境のダンジョンみたいですね……」

 ちょっとワクワクするかも。


「魔術師はね、光の下で戦うわけじゃないのよ。地下で出来ない魔術は外でも出来ないわ」

「そうですか……」


 カサンドラ先生によると、毒草や汚れた魔石は地下保存が基本らしい。

 地上だと魔力が暴発した時に危険なようだ。



「ところで美優、昨日から今日にかけて他の教授たちにとても羨ましがられたのよ」

 ん?なんだろう?


「私の初めての生徒が、あんな伝説級の綺麗な花を咲かせたのでね!

本当に素晴らしいわ!」

「あ、ありがとうございます……」

 わぁ~……ドヤ顔で胸を張っている先生の笑顔が眩しい……



 その部屋は光を吸う魔石があり、結界の光がぼんやりと浮かんでいる。

 壁にはよくわからない魔法陣が刻まれていた。


「では、始めましょう。

教えるのは『ピュリファイ』、光属性の浄化系のものよ」

「先生、水属性ではないのですか?」

「水は『洗い流す』イメージで毒そのものを分解するには弱いのよ」

 そういうものなのか……


「呪文を教えるわね。

清らかなる光の雫よ、汚れを祓い、清き流れを取り戻せ━━━ピュリファイ」

 先生に続いて繰り返す。


「緊急時用に省略版も教えておくわね」

「省略?そんなことができるのですか?」

「詠唱は“魔力を整える補助”よ。

初心者は魔力が不安定だから、長い詠唱でリズムを作るの。

でも熟練すると、魔力そのものが安定してくる。

だから言葉を省いても乱れないのよ」

「わかりました」


 なるほど……

 最初は一つずつ確認しながら動くけれど、慣れれば自然にできるようになる。そんな感じかな。


 短縮でできるってかっこいいし、できるように頑張ろう。



「光よ、清めて━━━ピュリファイ」

 こちらも先生に続いて繰り返した。


「いいわね。

じゃあ、実際にやってみましょうか。まずは触ると手が腫れる毒草の浄化からよ。

魔力は細く、まっすぐ流すこと」


「はい。

清らかなる光の雫よ、汚れを祓い、清き流れを取り戻せ」



 「ピュリファイ」



 葉の黒ずみが薄くなった。

 少しできたのかな?

「六割ってところね。上出来よ」

 毒草で何回か繰り返した。


「次はこの汚れた魔石の浄化ね。

毒草より魔力の流れが複雑よ」

「はい」

 魔石ってこんなに濁るんだなあ。


 長い方の呪文を唱える。

 魔石の内部が一瞬だけ光り、すぐに濁ってしまった。


「焦ると逆に濁るから注意よ。魔力の押しすぎね。

魔力は細く、均一に、よ」

 光が弱々しすぎて浄化しきれない。難しいなあ。


「詠唱に気を取られて、魔力の流れが乱れているわ。

言葉は補助。主役は魔力よ」

 毒草より何回も繰り返してやっと出来た。



「じゃあ、次は実戦ね。麻痺毒を霧状にしたものを使うわ」

 先生が魔導具を取り出した。

急に実戦とか……うまく出来るかなあ……出来なかったらヤバいよね……


「行くわよ━━はい!」


 先生が手元の魔導具を傾けた瞬間、紫色の怪しい霧が足元から一気に広がってきた。

 肌に触れた瞬間、ピリピリとした軽いしびれが走る。


「解毒して。短縮詠唱で」


(……死なないって聞いてても、やっぱりめちゃくちゃ怖いんだけど……!)


 焦りのせいで、詠唱が途中でつっかえてしまう。

 しびれがだんだん強くなってきた。


「落ち着いて、深呼吸して。短縮詠唱で」



 私はギュッと目を瞑り、自分の内側にある魔力を、細く、まっすぐ流すイメージに集中した。



「光よ、清めて━━━ピュリファイ!」



 私の体から、ぽうっと柔らかな白い光が放たれる。

 それと同時に、しびれがスッと抜け、重かった頭の二日酔いまで劇的に楽になった。

 頭の奥を叩いていた金槌が止まる。

 胃のむかつきが嘘みたいに消えていく。

 視界の霞が晴れた。


「えっ」


 思わず自分の額に触れる。

 さっきまで地獄だったのに。


 なんとか成功したようだ。苦しいけど、焦らないのがポイントだな……



 その後、練習を何回か繰り返した。

「よく出来たわね。合格よ。これで実戦でも死なないわ」

「ありがとうございました」

 死なないとか……ひぃ、怖い!



 地下の階段を上がる頃には、二日酔いもほぼ消えていた。


(……歌の噂、どこまで広がってるんだろう……)


 そう思った時だった。廊下の向こうから、


「あっ、歌姫だ」


という声が聞こえた。

読んで下さり、ありがとうございます。


第34話はよれよれの二日酔い(&魔力酔い)のまま突入した、カサンドラ先生の個人レッスン第2弾でした。


教室に入るなり「ハーブの匂いがすごいわ」と速攻で見抜かれる美優ですが、昨夜の酒場での大騒ぎもすでに先生の耳に届いていました。

「あの浄化の波動は貴女ね!」と大喜びするカサンドラ先生、美優の才能を誰よりも信じてくれていて本当に良い先生です。

そして舞台は、まるで「逆ドリル」のような不思議な構造をした、秘密基地感あふれる地下の訓練場へ。

今回教わったのは、毒を分解する光属性の浄化魔術。

先生が容赦なく放った実戦の麻痺毒の霧に焦りつつも、極限状態で放った「ピュリファイ!」。

現代のガムやスプレーより、魔法ひとつのほうが効く魔術都市、恐るべしです。


次回、第35話は6/8(日)の19時頃に更新予定です。

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