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マヨネーズは金貨の価値?商人令嬢が震えた“異世界文具”

「ずっと気になっていたのよ。そのペンと綺麗な紙を是非見せてちょうだい!」


 リサは目を輝かせている。

 シャーペンとマーカー、ルーズリーフを渡す。


「いいよ。はい」


「この細い芯、本当に折れないの……?

インクがいらないなんて……馬車でも字が書けるわ!書き味が滑らかね……!」


(そんなに感動してくれるんだ……なんだか嬉しいな)


「うん、芯を繰り出して書くんだよ。間違えても消せる道具もあるよ」


「まあ……本当に消えたわ!画期的ね!効率的だわ!」


 リサは本当に楽しそうだ。

 見ているこっちまで楽しくなる。



「その紙も素晴らしいわ。絹みたいにサラサラして白くて……穴が空いているのね?」


「綴じて使えるんだよ。良かったら、ちょっとあげるよ?」


「こんなに素晴らしいもの、タダではもらえないわ。

友達としても、それは嫌なの。……そうね、一枚これくらいでいかがかしら?」


小銀貨が提示された。

(えっ……千円くらい……?そんな……コピー用紙感覚だったのに……)



「それじゃ、二十枚いただくわ。領収書を書かないとね」


 なんだか大ごとになってきたなあ……リサは羊皮紙とガラスペン、それに携帯インク壺を出してきた。

 これなら書きやすそう。


「なんだかありがとう……」

「こちらこそ、本当にありがとう。大事にするわね」

 リサはものすごくうれしそうだ。



「じゃあ、このボールペンもいる?」


「まだペンがあるの!?……これもインク無しで書けるのね!

滑らかすぎて怖いくらいの書き味……!変わった紋章が入ってるわ!

……そうね、大銀貨一枚を出すわね」


「ええっ!あげるのに……」


(ノベルティでもらった物なのに……一万円……?)


「そのペンは、再現が難しそうだわ……金属加工の精度が追いつかないわね。販売はまだ無理そうね。

まぁ、それはそのうちね」

 なんとボールペンを売りたいらしい。この世界では画期的だものね。



「ねえ、一緒にお弁当を食べない?」


 リサのお誘いに頷く。

「うれしい!私もお弁当持ってきたよ。お菓子もあるから一緒に食べよう」


(女子同士でお弁当を広げるの、なんだか懐かしいな……)


「美優のお弁当とお菓子はすごそうね。楽しみだわ。

ところで……気になっていたんだけれど、あなた異世界からの『転移者』?こんなに珍しいものを持っているのですもの」

「うん、そうだよ。やっぱりわかる?」

「すぐそう思ったわ」

 話しながら、学院の裏へ移動することにした。



 公園の木陰は風が気持ちよくて、

リサの豪華な多段式ボックスのお弁当も、私のサンドイッチも、どちらも美味しそうに見えた。


「まあ……!この白いパン……ふわふわしている……!

ハムもチーズも薄くて柔らかいし、この黄色いソースが最高だわ!」


「この三色蒸しパンも柔らかくておいしいよ。キレイだね」


 三色の蒸しパンはナッツの粉が振りかけられて見た目にもカラフル。

 なるほど、蒸せば柔らかさを実現出来るわけだ。私もやってみよう。


「そのキッシュもおいしそうだよね」

「これはジャイアント・アントの卵よ。栄養満点なの」


「えっ……そうなんだ……」


(アリの卵……見た目はタピオカみたいなのに、味は濃厚なクリーム……異世界、奥が深すぎる……でもおいしい……!)



「ゆで卵とこのソースを和えたものもおいしいわね……これは是非、レシピを知りたいわ!」

「じゃあ後で教えるね。

あ、お菓子もあるよ。小さなパイの上にジャムが乗ってるの」

「一つ一つ、透明な紙に包まってあるわ!?なんて贅沢なの……

それにこんなに小さいパイを作れるなんて……!

とても甘くておいしいわ!」


 サンドイッチもお菓子も喜んでもらえて良かった。

 水のペットボトルにも、美しいのに軽い!と驚かれる。



「ではそのまよねーず?の作り方を買い取るわね。

それではこれくらいの値段でいかがかしら?」


 金貨が提示された。

 マヨネーズのレシピに金貨を出す時のリサの目が、一瞬だけ、朝のエーリヒ先生のような鋭い知性の光を宿した。


(き、金貨……!?

もしかして、ピアス類を売ったお金、とんでもない額だったんじゃ……金貨の重みに手が震えそう……)



「……ちょっと、リサ……そんなにもらえないよ……」

「それの価値は本当に高いわよ!あなたが思っている以上にね。

でも、その分だとまだまだ素敵な情報がありそうね。是非、今度ゆっくり我が家へお越しいただきたいわ!

はい、これ名刺。

いないかもしれないけれど、いつでも訪ねてきてね!大歓迎よ!」

「わぁ、ありがとう!」


 リサから華やかな名刺を受け取る時、実家で御札やお守りを扱っていた時みたいに、つい両手で恭しく受け取ってしまった。


「美優、あなたのその丁寧な身のこなし、普通の『転移者』とは違うわね。どこかの神殿の、巫女様みたいだわ」

「リサって……すごいね。実家が神社……神職だから巫女をやっていたよ」

「まあ、やっぱり!どこか空気が静かなのよね」



 まだまだ喋り足りないけど、予鈴が鳴ってしまった。


「またお話しましょう!」

「うん、楽しみにしてる。またね」


別れたあと、胸がぽかぽかしていた。

(……友達ができたんだなぁ)


読んで下さり、ありがとうございます。

マリアの友人・リサとの「女子会ランチ」……のはずが、気づけばとんでもない商談に発展!?

私たちが普段何気なく使っているシャーペンやボールペン、そして冷蔵庫の隅にあるマヨネーズが、異世界では金貨が飛び交うほどの価値を生む。

美優にとっては「ただの文房具や調味料」でも、リサにとっては「世界の歴史を変えかねない大発明」なんですよね。

そしてリサの鋭い洞察力。

美優の丁寧な所作から「巫女」であることを見抜くあたり、さすが商人の娘です。

「空気感」が伝わる二人だからこそ、すぐに打ち解けられたのかもしれません。

友達ができて胸を弾ませる美優ですが、午後はついに……あの「カサンドラ先生」による個人レッスンが始まります。


そして、次回第28話。

褒めて伸ばす(?)教育方針のベテラン先生を前に、美優の規格外の魔力がついに火を吹く……!?


28話も更新しているので、よろしければ一緒にお楽しみ下さい。

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