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Wi-Fi開通! 神様パワーでスマホが進化しました

 すぐそばなので、あっと言う間に着いた。

 あとは祠の探索をする。祠は苔むしていて古いみたいだ。

 ゲームなどでは、神様や精霊がいたり、大きな力を授かったりするから期待が高まる。



 先程とは違ったドキドキで車から出ようとしたら、

ゴゴゴゴゴ……という低い音がした。


 まさか、祠が……?!



「またお腹が鳴っちゃったー!」

 アンのお腹が鳴る音だった。


「お腹すいちゃったよ!」

「飴を食べていただろう」

 ジークに突っ込まれているけれど、朝が早く、もうお昼をとっくに過ぎているからお腹もすくだろう。

 言われると私もお腹がすいてきた。


「じゃ、祠探索の前に何か食べようか」

「わーい、さんせー!」



 車から降りて準備することにした。

 何がいいだろう?簡単に食べることが出来てお腹に溜まるものがいいな。



 クーラーボックス内をかき回しながら考えていると、何かに耐えるような顔をしたマリアが話しかけてきた。

 

「あの、ミュウのご飯はとても美味しいのですが、私たちの荷物も戻ったことですし遠慮させていただこうかと……ミュウの食料に頼りすぎるのは……」

 本当にとても美味しいのですが、ともう一回言った。 



「やだー!ミュウの異世界ご飯がいいよー!毎日同じものばかりなんだもん!」

 アンが大声で言う。今までで一番大きな声だ。 

「しかし……」

 ジークは目を閉じ、腕組みをして考えているようだ。


「いいよ別に。大事な食料は取っておきなよ。まだこっちにはあるからね」

「やったー!」


 アンがその場でクルクルと回る。



「でも……」と言うマリアと、

「うーむ……」と唸るジークに、

「遠慮しないで!」

といい、私は作り始めることにした。



 作るのは鉄板で焼きそばだ。

ジューッという鉄板でソースが焼ける音、そして強烈なウスターソースの酸味と甘い香りが周囲に漂う。


 野菜も切った状態で綺麗な袋に入っているとジークとマリアに驚かれる。

 欲しがったジークに袋はあげた。

「これなら濡れた獲物を入れても平気だな……」

 ええー……そんなのを入れるんだ……

 透明で丈夫な袋は宝物だと言われた。

 ジークは大事そうにリュックにしまっていた。



「なんだこの匂いは……!焦げた匂いなのに、たまらなく美味そうだ。食欲を引きずり出されるかのような……

さっきまでの魔物との戦闘の疲れが、この匂いだけで消えていく気がするぞ」

 ジークがそばに来て匂いを嗅いでいる。


「外でこういうことってしないんだ?」と私が聞くと、

「煮込みや直火が中心で、鉄板でじゅうじゅうと香ばしい匂いをさせながら作る料理なんてないな」


「ミュウ、その黒い液体は何?魔物もイチコロにできそうな強烈な匂いだけど!」アンの大きな声。

「こんなソースってないの?」

「ないよ!そんなおいしそうな匂いのは!早く食べたいー!」


 マリアは紅しょうがと青のりの彩りが気になるようだ。

「ハーブでしょうか。食欲をそそられますね」

「赤く染められた漬物と乾燥させた海藻だよ」

 と言ったらとても驚かれる。

「まさかそう来るとは……」


 ソースが焦げて、じゅわっと泡立つ。香ばしい匂いが立ち込めた。

「みんな、鉄板焼きそばが出来たよー」


 普段作るのもいいけど、鉄板だとまた違う。


「ああーいいにおいー」

 アンが目を輝かせている。

 紙皿に盛り、皆に配った。

「おい、お前……またこのような贅沢品を……」

 ジークが、動揺している。

「まだまだあるから大丈夫だよ。冷めないうちに食べてね」



「いただきます」



「美味し〜!お肉いっぱいで贅沢〜」

 アンが熱さに悶絶しながら頬張る。

「この香ばしいソースの香りがとてもいいですね」

「変わった麺料理だが、美味しいな。これは、酒が欲しくなるな」

 マリアとジークも気に入ってくれて良かった。

「お酒は今夜にね」

 バーベキューのつもりだからよく合うだろう。


 ついさっきまで戦っていたのに、こうやっていると異世界ということを忘れられる気がした。


 

 焼きそばが少し余っていた。

「誰か食べる?」と声をかけたら、

「食べる食べる〜!」

 というアンの声のあとに、

「ワシも〜」

 という高い女の子の声が聞こえた。


「えっ、今の誰?!」


 一斉に、声のしたアンの斜め後ろを見る。


 影が一瞬だけズレて見えた。


 そこには、いつの間にかふわふわしたとんがり耳の女の子がいた。見た目はアンより少し下くらい。

 ふんわりと長い髪に、もふもふのしっぽ。袴かと思えば、下はプリーツのミニスカートになっている。ニーハイにぽっくり下駄という不思議な組み合わせが妙に合っていた。どことなく和風だ。


 耳がふわっと揺れた瞬間、空気が澄み、目が一瞬だけ金色に光った。


 その子は当たり前のように焼きそばを見つめていた。



「人間の気配ではない。魔物……でもないな」

「魔物などと失礼な!ワシはここに住んでこの辺りを見守っておるのだ」


 ジークの言葉に祠を指差しながら女の子が答える。

 ここ……ってまさか……



「かっ神様でいらっしゃいますか?!」

 マリアの声がひっくり返る。

「ああ、そうなるな」

「そのわりに、あまり強そうじゃないね」

 アンの言葉にマリアが慌てて謝る。

「ひっ!も、申し訳ございません!」

「かまわんさ、その通りだからのぅ」



 聞けば、戦いの神ではないらしく戦闘は得意でないようだ。

 お腹をすかせている時に、香ばしい匂いに惹かれて出てきてしまったらしい。


「だからそのいい匂いがする食べ物をくれ」 

「……少々お待ち下さい!」



 急いで車に引き返す。

 確かこの辺に、100均だけど大事に使っている漆器風、高見えのお皿があった。丁寧に盛り付けて差し出した。


「どうぞ、お召し上がり下さい……」

「うむ!有り難くもらうぞ!」


 皆がじっと見守る中、モフモフ耳の神様は美味しそうに食べ始めた。


「これはとてもうまいな!そーすとやらがとても香ばしい」


 お口に合ったようで良かった。食べる姿を見ると親しみやすさを感じた。

 

 神様だから、色々聞けることがあるんじゃない?今がチャンスなのでは?

 と思い、食べ終わった時を見計らい、一番気になってることを聞いてみることにした。



「あの、神様?」

「ん?なんじゃ?」

 

 少し声が震える。返答により私の運命が決まるかもしれない。

 帰れないと言われたらどうしよう……

 声を必死に抑えて問いかけた。


「私は異世界人なのですが、もとの世界に帰る方法はありますか?」


 神様はじっと私を見る。

 風がやんだ。


「アステリア様の力を感じるな」

「アステリア様?」 

「創世の女神様ですよ」


 マリアがそっと教えてくれる。

 私をこの世界に連れてきたのもその女神様なのだろうか。なんのために……?まさか、勇者として戦えとか、そんなのじゃないだろうな……

 

「アステリア様はクゼ・クゼ・トツォ・ザトラに住んでいらっしゃる」

「え?何って?」


 アンが言うけど私もよく聞き取れなかった。


「高い塔の上に住まわれていると聞いたことがあります。誰も行ったことがないとか」マリアが答える。

「ワシはあまりお目にかかったことがないがな、そこまで行けば必ずわかるじゃろう」

「それはどこに……」

「知らん」


 知らん、ってそんな……

 神様の返答を聞いたアンがずっこけた。

「えぇ……」

 まずは塔を探すのか……先はとても長そうだ。



「そこの箱からもアステリア様の気配がするな」

 車を指し、神様が言う。

「お主の魂と紐づけられてるようじゃぞ」

「魂と……」


 だから一種に異世界へ来たのか。

 姉の車だけど今は大事な相棒。今まで以上に大事にしないと。



 「神様、貴重な助言をありがとうございます。こちらはお礼とお供えですが……」


と言って、高級カップアイスとちょっと高い焼き菓子を持ってきた。何もないのは寂しいし。


「冷たい!これは菓子か!うまそうだ!」


 神様はものすごく喜んでいる。良かった。でもすでにパクパク食べ始めている。お供えが……


「あっいいな〜」アンがものすごく羨ましそうな顔をしてるので、

「夜にあげるよ」と約束しておいた。



「よし!色々食べ物ももらったし、一肌脱ぐとするか!」



 神様が立ち上がり、車の前まで移動する。 

 手をかざすとドアが開き、スマホを手に取った。


「これをこうして……」

 何やら作業している。しばらく後、


「できたぞ!場所は知らんが、これくらいなら出来る」



 スマホを見てみると充電のところが無限大の∞のマークが出た上に、WiFiのマークがピコピコとまるで神紋のような形に変化している。この世界の魔力網に繋がったようだ。



「充電がいっぱい……それにWiFiも……!」



 海底神殿

 魔法少女学院

 人狼の里

 妖の森……どんどん情報が入ってくる。情報が一気に流れ込んで一瞬目が回った。

 見たこともない三次元世界が展開していく。

 流石は神様パワーだ!

 最初に使えた地図とは、何かが違う……“繋がっている”感じがする。



 ピコン。ピコン。


 二回通知音がした。画面の端に文字が浮かぶ。

「……カ……」

「お……ししょ……う……さ……」


 文字はノイズっぽく揺れ、瞬きをすると、もう消えていた。

 ……なんだったんだろう?


 心臓がドクンと跳ねた。普段の通知音とは違う。

 でも懐かしい気がして、胸の奥がざわついた。

 理由は分からない。



 それにしてもすごい。

 これで目標が近くなった。目指すは女神様の塔!



 もう一つ、機械の魔物について聞いてみた。


「見たこともない魔物と戦っておったな。あれはワシもよくわからん。アステリア様なら何かご存知だろうが……」


 やっぱり女神様にお目にかかるのが一番だな。



「世話になったな。また遊びに来い。うまいものを待っておるからな」

「神様、本当にありがとうございました」

「ワシの名はコヨリじゃ。そう呼ぶとよい」


 衣装によく似合っているお名前だ。


 ニコニコしながらコヨリ様が見送って下さる。


「こちらこそ、本当にありがとうございました!是非、また寄らせていただきますね」

「アステリア様は退屈していらっしゃる。おぬしがその板で何が出来るか、楽しみにしておるぞ」


 コヨリ様が手を振るのを見ながら、その場を後にした。

読んで下さり、ありがとうございます。


焼きそばの匂いに釣られて、モフモフの神様・コヨリ様が登場しました。

スマホが∞充電&魔力Wi-Fi仕様に改造され、美優の異世界生活もいよいよ本番です。


謎の通知……一体誰からのメッセージなのか。

そして「クゼ・クゼ・トツォ・ザトラ」とは一体……?(名前が長くて美優も苦労しそうです笑)


次回からは新天地への移動編が始まります。

第16話も同時に更新しています。


ぜひ、続けてお楽しみいただければ嬉しいです。

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