37 包囲網
あ~生きたくない、違った、行きたくない。
いきなり婚約者になったなんて、学園でどんな目に合うかわからない・・。
「おはよう、セリーヌ」
ミーナリア様だ。
「あ、あぁ、その、お、おあひょうごじゃます」
動揺のあまり噛みまくっている。
「どうしたの?なんか顔色も悪いし、体調悪いの?」
体調よりも精神が悪い。
他の皆様も私に気が付いて次々と声をかけてくれた。
誰も婚約の話をしてこない、あれ?
まぁ、こちらから話すのもいやだからね、黙っておこう。
その後も誰からも婚約の話は出なかった。
うん、あれは悪夢だったんだな。
そう思いこんで、生徒会室へ向かった。
あれ?なんでかな?みんなの視線がこちらを向いている?
「セリ・・お前・・」
「見かけによらないとはこのことだな」
「そんな思いをしてたなんて・・」
何のこと?何を言ってんだ??
「あぁ、セリようやく皆に真実を話すことができたよ」
胡散臭い笑顔の悪魔が近寄ってきた、うげ、悪夢の続きか?
「何を言って「恥ずかしがらなくてもいいんだ、もうみんな納得してくれたから」」
「だから、なにを「私たちの婚約についてだよ」」
はいぃいいいい?
お、おま、何をぶっこんでくれんだ!
あまりの事に声も出ない私に皆が口々に声をかける。
「アレク殿下のために幼いころから頑張って教養やマナーをがんばるなんて」
「今後外交を主とするアレク殿下のために語学もしっかり学んでいたな」
「侍女として黙ってずっと側にいたんだな」
「殿下も身分差を考えて苦しんでおられたと・・」
「何も言わずにお互いに耐えていたんだな」
なんだ?そのどっかの恋愛小説みたいな陳腐な話は!
悪魔!お前、皆を巻き込んで何してくれとんっじゃ!
~アレクセイ視点~
「皆ちょっと聞いてほしい」
「「「何でしょうか?」」」
「ようやく私の婚約者が正式に決定した」
おぉ~と声が上がる。
「婚約者はセリだ」
「は?」「え?」「セリ??」「婚約者候補は??」「どういうことですか?」
混乱しているな、そりゃそうだろう。
婚約者候補達と違って、全くの圏外だったんだろうからな。
「なんでセリーヌなんですか?」
「そうですよ、確かに仕事は丁寧ですけど」
「男爵家ですよ?」
まあそうだろうな、婚約者候補だった令嬢達は高位貴族だからな、後ろ盾にはふさわしいだろう。
だが、それだけだ。
10歳のセリは俺を一目見て、おびえて、しかも逃げ出そうとした。
口外されないように手元に置いおくと、面白くなって、そのままでは周囲に認めてもらえないから、ちょっと手助けしてやったら、ものすごく伸びた。
その後も、生徒会に入っても側近たちとうまくやっている。
母上も、兄上も、王宮の使用人たちも気に入っている。
側近候補達の実家も気に入っているようで、養女の打診をしたら全員快諾したのは笑った。
婚約者にしようと思ったのは、ウェステリアの留学生の時だ。
ミーナリア嬢をどうするか、あんなの早いところ切り捨てて平民として捨てればよいのに、と思ったのだが、予想外に学園の令嬢たちをまとめ上げて教育を施していた。
セリじゃなかったら令嬢たちは協力しなかっただろう。
俺の予想を超えてくる。
ギルバートに怒鳴りつけた時は驚いた。
あのぼんくら側近共に節穴王子を怒鳴りつけ、挙句に 小さい男 だと。
本当に面白い。
母上に婚約者の打診をしたところ、王家の試練を受けるよう言われた。
それすらもあっさりと受け流した。
本人は婚約者にならないように逃げだす用意をしていたが、逃がすわけがない。
「何故もっと早く決めてやらなかったんですか?」
「婚約者候補達の事もある、セリに負担がかかっては、なぁ」
「なるほど」
「セリは受け入れてくれたんですか?」
「あぁ、ずっと身分差と婚約者候補の令嬢の事を気にしていたがな。
幼いころから頑張って教養やマナー、語学をがんばってくれてて、黙ってずっと側にいたんだ
(嘘は言ってないな)
私も身分差を考えてセリに負担をかけまいと・・・それでも私はそばにいてほしいのだ、セリに」
(あ、いかん、歯が浮きそうなセリフになってしまった、笑いをこらえなければ)
笑いそうになる口元をかみしめると、何を勘違いしたのか
「あの冷静な殿下がそんなに顔を青ざめさせて・・・」
「真剣なのだな」
そういうと、皆感動したように目をウルウルさせている。
ちょろい奴らだな、大丈夫か?
セリが生徒会室に来た時には、全員が俺の芝居に騙された後だ。
残念だったな、逃がしてはやらん。




