38 チョロい人達
悪魔の胡散臭い芝居に、全員がどっぷり騙された。
なんてちょろい奴らなんだよ!
こんなのが側近になって大丈夫なのか?
いや、それよりも、この臭い芝居に巻き込まれて、外堀を埋められている気がする。
いかん、いかんぞ!
よし、逃げよう。
私はくるっと回れ右をして扉から逃走した。
どうしよう、このままあの悪魔の芝居に騙されて、本当に婚約者になっちまう~。
いやだ~、一生悪魔におびえて暮らすなんて・・・。
行く当てもなく校内をうろついていると、
「ちょっとよろしいかしら?」
そういって呼び止められた。
マリアベル様、イザベラ様、マーガレット様・・・婚約者候補の3人だ。
「お時間はある?」
「は、は、はい」
「よかったわ、ここでは何ですからちょっとついていらして」
3人の後ろをとぼとぼとついていく。
やだな~、婚約者にされたことしってて呼び出されてんだよなぁ。
連れてこられたのは校舎の裏。
人目に付きにくい場所だ。
「セリーヌ様、昨夜私たちそれぞれに王家から手紙が来たの」
「婚約者が内定したから私たちは候補を外れたって」
「どういうことなの?」
どうもこうも、全部悪魔のせいですよ。
「無害そうな顔をして、王家に取り入ってたの?」
めっそーもない。
「呑気な顔したあなたが、恋愛に悩んでいたとは・・・」
なやんでねぇよっ、って叫べたらいいのにな。
3人がこちらをウルウルした目で見つめてくる。
「マリアベル様は私たち3人の中でも筆頭候補だったの。
もちろんアレクセイ殿下をずっとお慕いしているのよ」
「できれば婚約者の座を降りてほしいの。
私やマーガレット様はいいの。初めから選ばれないと思っていたから」
え?そーなの?
「だって、アレクセイ殿下は私たちに全く興味を示してくだされなかったし」
「そうそう、私は【貴腐人会】ですから、アレクセイ殿下と、などと思ってもおりませんでしたわ」
へー、イザベラ様もあのメンバーだったんだ。
マリアベル様が私の手を握って見つめてきた。
「お願い、私、殿下の事が本当に好きなの。わたくしに婚約者の座を譲ってもらえない?」
へー、あんな腹黒悪魔が好きだなんて、物好きだね。
ま、いっかあ、婚約者の座なんて欲しくもないし、ほしい人に譲ってやるのが一番だもんね。
やる気もあるし、いいでしょう、欲しいというなら喜んでっ!!
「はい、マリアベル様、私、喜んで「だめだぁああああああ」」
誰だよ、でかい声でって、ゴウゼル様・・・。
「セリ、我慢しなくてもいい、身分差に苦しまなくていいんだ。もう俺たちはお前を認めているんだから。
殿下を信じるんだ」
泣きながら私の肩を掴んでガクガクゆする。
気持ち悪くなってきたよ。
「マリアベル嬢、イザベラ嬢、マーガレット嬢」
悪魔登場。
「すまない、私がいたらなかったばかりに、貴女達の時間を奪ってしまった。だが、私とセリは・・・」
悪魔はそう言って口元を手で押さえる。
肩が揺れている。
お前・・・笑ってんだろーが!
「「「殿下・・・」」」
3人は何故かもらい泣きしてますぅ?
なんでだよー。
「気持ちを殺して、笑顔で頑張るセリを、私は」
ゴウゼル様?なんでアンタも更に泣くのさ。
「純愛、ですのね」
いや、違うし。
「わかってくれるのか?」
いや、全然わからんし。
「私、応援しますわ」
は?イザベラ様?
「私もそんな真剣に震えるほど愛があるなんて、良いものを見せていただきましたわ」
え?マーガレット様?アンタもか?
「私、私は、殿下をお慕いしておりましたわ。
でも、セリーヌ様が呑気そうな雰囲気で、誰にもお二人の事悟らせなかったなんて、そんな秘めた愛があったのですね」
ん?マリアベル様??
アンタの頭の中は花が咲いてしまったのか?
この一瞬でまたしても悪魔のペースで、クサイ芝居に騙される3名。
皆様、ちょろすぎじゃーーーー!!




