第6回 なぜ日本はアメリカと戦争したのか
第6回 なぜ日本はアメリカと戦争したのか
戦後の歴史を見ていると、
私は時々、
本当に不思議な感覚になる。
なぜ日本は、
アメリカと戦争することになったのだろうか。
もちろん、
表面的な理由はいくらでもある。
中国問題。
経済制裁。
石油禁輸。
資源問題。
軍事的緊張。
歴史を勉強すれば、
原因は出てくる。
だが、
感覚としては、
やはりどこか不思議なのだ。
なぜなら、
戦前の日本にとって、
アメリカは完全な敵国ではなかったからである。
むしろ、
近代化以降の日本は、
アメリカから多くを学んできた。
産業。
教育。
技術。
文化。
映画や音楽などの大衆文化にも、
アメリカの影響は大きかった。
日本人にとってアメリカは、
遠い異文明というより、
近代国家として成功した巨大な先進国だった。
実際、
日露戦争後の講和でも、
アメリカは仲介役を果たしている。
だから、
戦前の日本人が、
最初から強烈な反米感情を持っていた、
というわけではない。
それでも、
少しずつ関係は悪化していく。
その大きな理由の一つが、
中国戦線だった。
日本は中国大陸へ深く入り込み、
長期戦になっていった。
するとアメリカ側は、
日本の拡張を危険視し始める。
さらに、
日本は資源に乏しかった。
石油。
鉄。
ゴム。
工業国家でありながら、
重要資源を海外へ依存していた。
そこへ経済制裁が入る。
特に石油禁輸は、
日本にとって非常に大きかった。
当時の日本は、
石油なしでは軍も産業も維持できない。
つまり、
国家そのものが止まりかねない状況だった。
もちろん、
だから戦争していい、
という話ではない。
だが、
当時の日本側が、
強い危機感を持ったのは理解できる。
一方アメリカ側から見れば、
日本の軍事行動を止めたい。
すると制裁は強くなる。
そして日本側は、
さらに追い込まれた感覚を持つ。
こうして、
双方が少しずつ引けなくなっていく。
私は、
太平洋戦争を見ていると、
どちらか一方だけが狂っていた、
というより、
巨大国家同士が、
徐々に出口を失っていったように見える。
もちろん、
そこには日本側の判断ミスもあった。
特に問題だったのは、
国力差への感覚だろう。
当時のアメリカは、
人口、
工業力、
資源、
生産能力、
どれを取っても巨大だった。
実際、
日本側にも、
長期戦になれば勝てない、
と理解していた人はいた。
それでも、
国家として引き返せなくなっていく。
ここには、
当時の日本が、
すでに「大国」であったことも関係しているように思う。
戦前の日本は、
今の地図感覚とはかなり違う。
朝鮮。
台湾。
南樺太。
関東州。
満州権益。
南洋諸島。
すでに大きな帝国だった。
しかも、
日清戦争、
日露戦争で成功体験がある。
「日本は列強である」
という意識が、
かなり強くなっていた。
だから、
ここで引けば、
大国としての立場を失う。
そう考えた人も多かったのだろう。
だが、
その一方で、
実際の国力差は非常に大きかった。
ここに、
大日本帝国の危うさがあったように思う。
私は時々、
当時の日本人も、
「なんでこんなことになったんだ」
と思っていたのではないか、
と考える。
実際、
アメリカは、
もともと絶対的な宿敵ではなかった。
それなのに、
最後には、
都市を焼き合う戦争になってしまった。
そこには、
外交だけでは説明しきれない、
国家の空気のようなものを感じる。
面子。
焦り。
危機感。
成功体験。
そして、
引き返せなくなる集団心理。
太平洋戦争とは、
単純な善悪だけではなく、
巨大国家が少しずつ破局へ進んでいった歴史だったのかもしれない。




