母(道子)、ICUへ
病院の九階。
エレベーターのドアーが開く。
マコトは廊下を走った。
九〇三号室(個室)。
静かにドアーをノックするマコト
ドアノブが回る・・・。
良子がハンカチで瞼を押さえながらドアーを開く。
「マコトちゃん、早く入りなさい」
マコトが静かに病室の中に入る。
ベッドに寝ている道子。
「今朝けさ早く血圧が下がっちゃってね。先生が家族を呼んでおいた方が良いって」
「今は?」
「輸血で血圧は少し上がって来たけれど、オシッコがほんの少ししか出ないの。体中、浮腫んじゃって」
マコトは道子の顔を覗く。
良子がマコトに寄り添う。
マコトは病室を飛び出した。
廊下に佇ずむマコト。
「あれは母ちゃんじゃない。母ちゃんはもう居ない」
病院の中庭を観ているマコト。
道子との思い出が走馬灯の様に頭の中を駆け巡る。
廊下の奥から憲司が肩を落として俯いて歩いて来る。
少し不自由な「左足」。
憲司はマコトに近づきそっと肩を抱く。
静子の居る病室から出て来る憲司。
淋しそうに「医師控え室」に向かう。
暫くして憲司が控え室から出て来る。
マコトは憲司に近寄り、
「・・・もうダメ?」
「・・・難しいらしい。この二、三日が山だそうだ」
マコトは怒る。
「ダメなら早く楽にしてやれば良いじゃないかッ!」
憲司は自分に言い聞かせる様に、
「・・・母ちゃんは治る。マコトを一人置いては逝かねえ」
マコトは溢れる涙の中で怒鳴る。
「帰るッ!」
続く




