道子の定期検診の結果
秋。
道子が定期検診から戻って来る。
玄関の上がり框に辛そうに座って居る道子。
マコトが学校から戻って来る。
玄関のドアを開ける。
「ただいま」
道子を見て、
「・・・母ちゃん、どうしたの?」
「うん?・・・疲れた」
マコトが机で勉強している。
道子は鏡台に座って髪を梳いでいる。
鏡に映るマリア像と鶴首の花挿し。
鶴首の花挿しには一輪の『白薔薇』が挿してある。
道子はマコトを見て、
「・・・母ちゃん少し肥ふとったでしょう」
マコトは鉛筆を止めて道子を見る。
「え?・・・そうだね」
「これは肥ったんじゃないの。浮腫んだの。この病気、浮腫んだら危ないんだって」
マコトは驚いて、
「危ないって?」
「・・・母ちゃん入院するかもしれないよ」
「入院? いつ」
「まだ分らないけど、年内に」
マコトは道子を見て、
「・・・入院すれば治るの?」
高校の図書室。
マコトは書棚から医学書を取り出し『腎臓病』の項目を開く。
食い入る様に見るマコト。
マコトと道子の兼用の部屋。
道子が寝ている。
マコトは学校から戻って来て、静かに障子を開ける。
「母ちゃん。ただいま」
道子はマコトを見て、
「お帰り・・・」
道子が起き上がろうとする。
「いいから寝てなよ」
「わるいねえ。冷蔵庫にプリンが入ってるよ」
「うん」
マコトが机でプリンを食べている。
道子はそっとマコトを見て、
「・・・もうすぐ修学旅行だね」
「うん」
「・・・母ちゃんマコトの卒業式まで生きられるかなあ。・・・マコトの結婚式・・・見たいなあ」
マコトは黙ってプリンを食べている。
スプーンの持つ手が震えている。
突然、マコトの眼から涙が溢れ出る。
マコトがそっと道子を覗く。
道子も泣いている。
マコトは壁に向かって怒鳴る。
「母ちゃんもういいッ!」
猫(チャー子)が道子の枕元で寝ている。
続く




