道子の入院
弘子が果物と、道子の好きな『薔薇の花』を持って見舞いに来る。
そっと仕切りのカーテンを開ける弘子。
道子が寝ている。
弘子が声を掛ける。
「・・・ミッちゃん」
目を覚ます道子。
道子は驚いて、
「! ヒロちゃん。よくここが分ったわね」
「黒沢さんから電話が有ったの」
ベッドから起き上ろうとする道子。
「いいから、そのまま」
弱々しく横に成る道子。
「・・・ごめんなさい。こんな身体に成っちゃって」
「そんな事言わないの!」
弘子は道子の手を握る。
『白薔薇の花』を道子に見せる。
「はい、これ・・・」
道子は優しく笑って、
「薔薇・・・」
道子はテーブルの上の一輪挿しを見て、
「・・・枯れちゃったわね」
弘子はニッコリと笑い、
「換えましょう」
弘子は枯れた白薔薇の一輪挿しを持って病室を出て行く。
暫くして純白の薔薇に変わった一輪挿しを持って戻って来る。
道子はそれを見て、
「綺麗ねえ・・・。私・・・もうだめかも知れない」
「やめましょう、そんな話。あ、林檎を剥いてあげる。一緒に食べましょう」
弘子は林檎を剝きながら。
「・・・腎臓ですって?」
「そう。・・・浮腫んできちゃったの。私の病気、浮腫み始めたらダメなの」
「大丈夫よ。こんなに大きな病院に入院してるんだから」
弘子は剥いた林檎を道子の口元に。
「はい、あ~ん」
「・・・美味しい」
弘子は優しく笑って、
「そう、良かった」
「母さんみたい」
弘子の笑顔を見て弱々しく笑う道子。
「ヒロちゃん」
「え?」
「・・・私が死んだらマコトと黒沢の事をよろしくお願いします」
「そんな・・・」
道子は窓の外を見て、
「・・・変なめぐり合わせね」
弘子は涙を堪え唇を噛みしめる。
「弱気を起こしちゃだめ! 治る! ミッちゃんは治るんだから。マコトが大人に成るまで頑張るの!」
道子の眼から大粒の涙が頬をつたう。
続く




