弘子の積み立てて来たもの
署 内。
刑事課で、憲司が書類を荷造りしている。
ドアーのノック音。
「コンコン」
「はい!」
弘子がドアーをそっと開け、部屋に入って来る。
「失礼します」
「な~んだ。ヒロちゃんか」
弘子は驚いた表情で、
「黒沢さん! 移動ですって」
「そうなんだ。ここも長いしね」
「でも栄転じゃないですか。それに昇進まで。おめでとう御座います」
弘子は制服のポケットから『厚めの封筒』を取り出し憲司の傍に来る。
憲司は驚いて、
「ええ! ヒロちゃん。ヒロちゃんから餞別は貰えないよ」
「そうじゃないの。これはマコトちゃんの進学祝い」
弘子は憲司の机の上に封筒を置く。
「いらないよ。アンタからこれは貰えない!」
憲司は封筒を突き返す。
「いいえ。これは収めて下さい。私、あの時からマコトの為にと思って少しづつ貯金して来たの。少ないけど入学金の足しにして下さい」
憲司は封筒を見詰める。
弘子は淋しそうに、
「・・・もう誰にもマコトの事、聞けなくなっちゃうわね」
憲司は俯いて溜息を吐く。
「ミッちゃんの云う事はちゃんと聞いてますか? 学校で『いじめられてた』なんて事はないですよね」
「ソレは無い。心配しなくて良い。あ、道子が月に一度病院に通ってるんだ。その時に署に寄らせる。マコトの事をいろいろ聞いてみな」
「え! ミッちゃん、どうかしたんですか?」
「ああ。・・・アイツには持病が有ってね」
「ジビョウ?」
「子供の頃から『腎臓が悪い』んだ。だから医者は子供を産む事をあまり勧めなかった」
弘子は驚く。
「え! ・・・」
「でも、今はマコトが心の支えだ」
弘子は涙ぐみ、
「有難う御座います。そこまで可愛がって頂いて」
続く




