自 宅
道子が心配そうに、
「どこに行っちゃたのかしら・・・」
「放とけ。その内に戻って来る」
「そんな事言っても、お金も持ってないし、自殺でも・・・捜索願い」
「バカ! そんなモノ出せるか」
夕方。
マコトは家の前の麦畑の中から自宅を覗いている。
チャーコ(猫)が屋根からマコトを見ている。
道子は庭の物干しに掛けた布団を叩いている。
「ガチャン」
自転車の倒れる音が。
道子は道路に出て来る。
倒れている自転車の傍に傘が。
道子は驚いて、
「マコト? マコトッ! 出てらっしゃい!」
マコトは麦畑の中から顔を出す。
道子はマコトを見て、
「どこに行ってたの! 心配したじゃない」
道子の目からは涙が。
マコトが畑から出て来る。
道子はマコトを痛いほど抱き締める。
「父ちゃんも心配してたんだよ。オマエの事、何とも思ってないから・・・」
その夜。
松葉杖を突いて職場から戻って来る憲司
居間で正座して、俯うつむいているマコト。
憲司がマコトの傍に来る。
突然、マコトの頬を思い切り平手で殴る。
道子は驚いて、
「父さんッ!」
マコトは目から涙が溢れ出す。
憲司はマコトを見つめ、
「・・・風呂に入れ」
マコトが頷く。
風呂上り、マコトは俯いてテーブルの前に座った。
憲司は椅子に座って新聞を見ている。
マコトは憲司に近づいて、
「父ちゃん・・・」
「うん?」
「足・・・だいじょうぶ?」
憲司は苦笑して、
「・・・痛てえ」
「ごめんなさい」
憲司は新聞を見ながら、
「マコト・・・」
「え?」
「もう包丁はよせ」
道子が台所で涙を拭いている。
続く




