雨の市街地
雨の夜。
マコトは傘も差さずに自転車で街中を彷徨よっている。
遠くでパトカーのサイレン音が聞こえる。
銭湯帰りの沢村弘子が、びしょ濡れのマコトとすれ違う。
弘子は驚いて、
「あら? マコトちゃん?」
マコトはその声に振り向く。
「あッ! やっぱり。どうしたのこんな遅く」
マコトは弘子を見つめる。
弘子が、
「覚えてる? 昔、警察署で会った・・・」
「あッ! あの時の」
「そう。思い出した? こんな遅く中学生がふらついてたらだめよ」
マコトは取り繕って、
「え? あッ、じゅ、塾の帰りです」
「ジュク? 」
弘子は疑いの眼でマコトを見詰める。
「そう。塾に行ってるの? ・・・随分背が伸びたわね。マコト君は来年は高校生でしょう。頑張ってよ」
弘子は母の様な口調で、
「あ〜あ、そんなに濡れて・・・。ほら、この傘。差して行きなさい」
マコトは弘子の開いた傘を受け取る。
弘子はタオルでマコトの濡れた肩を拭く。
「・・・すいません」
弘子はマコトの顔を覗き込み、
「マコトちゃん」
「え?」
「あんまりお母さんの事、虐めちゃだめよ」
マコトは『その言葉』を聞いて逃げるように自転車で走り去る。
「あ、マコトッ! 気を付けて帰るのよ・・・」
後ろ姿を見詰めている弘子。
弘子を軒下の仔犬が見ている。
続く




