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『翡翠の勾玉が繋ぐもう一つの歴史』 〜65歳考古学者おばちゃんの古代倭国セカンドライフ〜  作者: カジキカジキ


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680日目 〜繋がりを求めて〜

 村で1番大きな建物に集まった若者達は、それぞれが緊張した面持ちで私の言葉を聞いていた。

 

「オニシさん達、4人は吉備のクニへ行って貰います」


 村の代表のひとり、オニシさんと若者達の中から選ばれた3人がお互いの顔を見合わせて頷く。

 

 オババ様やオクトさん、隣村の長達とも話し。危険だと予想される相手との衝突を避ける為、大きなクニとの繋がりを求めて村から人を出す事になった。


 この時代の長距離の移動手段は徒歩か舟、飛行機や自動車は無いから当然よね。それどころか地図も無ければ道も整備されていない中を歩かなければならない。


 スマホの電池が残っていれば地図を見せてあげたり、紙があれば地図を描いて渡してあげられたけど……


 それよりも、この時代の人達に数百Kmも離れた場所なんて想像もつかないでしょうから。地図があっても何日歩けばそこに辿り着くとか見当もつかないでしょうからね。


 下手すると命に関わる旅になる、このまま帰って来れない可能性も低くない。


 それだけに、人員選びは慎重になるし、本当に送り出して良いものか毎晩悩み苦しんだ。


 それでも、オババ様やオクトさんが言ってくれたの。


「俺達の村を守るのに、神女にばかり頼っていられない。その役目は俺達がやるべきだ」


 そして、その難しい人選に選ばれたのが先の4人。

 

「持っていくのは、この種籾に器台と壺もね」


 相手に信用してもらう為に貢物、それらにはこちらの技術を少しだけ見せて価値を上げる目的もある。


「向こうは既に稲作が盛んだから、あなた達が見たらびっくりするでしょうけど、私たちの田んぼも負けていないわ。

 この種籾を見せれば、田んぼ作りをしている者にはわかる筈。その田んぼ作りのノウハウを共有するの」


「それと、吉備は先進的な祭祀文化を持っているから、この特殊器台と特殊壺には興味を持つはずよ」


 用意したのは、新しい窯で焼いた土器。


 ちょっとズルかも知れないけれど、おばちゃんの知っている知識で楯築遺跡たてつきいせきの出土品を参考に弧帯文で飾った特殊器台と特殊壺を作ってみたの。


 少し時代を先取りする事になるけれど、間違いなく吉備の首長達の関心を引くはずよ。


 そこから私たちに興味を持たせて、長との話し合いに持っていく。


 祭壇を作るからあなたのクニの神も一緒に祀りましょう「同じ空の下、吉備と纏向の神を祀りましょう」と。


 何度か通う必要があるかも知れないけれど、中河内のサクくんにも説得してもらって、中河内の長も一緒に行ってくれるようになってるから頑張って!


 ついでに操船の技術も盗んできちゃったら良いじゃないかしら。


 皆に持たせているこの干し肉や、新しい保存食も持っていけば喜んでくれるはずよ。


 それから……もっと難しいお願いをしなければならない5人。


「オクトさんとザオリさん、それからリク、サト、カイには出雲へ行って貰います」


 さっきの4人よりもさらに厳しい顔つき、けれど役目を与えられて逞しい男の顔になった若者達。


 出雲はかなり大きな力を持っているから、交渉も大変になるでしょう。本当は吉備との連携が成ってから向かいたいところだけど、時間がないので5人には負担かけるけどよろしくね。


「私もいくよ」


 オオミとミナちゃんを引きずって現れたのは、旅装束に身を包んだオババ様。


「オババ様はダメよ!」


 纒向から徒歩で山城・丹波(木津川・桂川経由)で若狭湾、そこから舟で日本海沿岸(丹後・但馬・因幡)を通って伯耆・出雲まで。


 とてもじゃないけどオババ様の体力で持つ距離じゃない。


 まだまだ元気じゃ! と言うけれど、先日も腰が痛いと叫んでいたでしょう。

 

 それに……途中は知らない土地ばかりで、襲われる可能性もあるというのに。


 オオミがオクトさんの顔を心配そうに見ている。

 

 本当はオオミが不安がるからオクトさんにも行って欲しくはないけれど、流石に出雲で交渉するのに半端な人選は出来ない。


 ザオリさんも、隣村のまとめ役の大人。


 こっちも交渉は苦労したけれど、狗奴国に対抗する為と言ったら折れてくれた。


 その代わり、製鉄を少し教える事になったけれど。


 この位なら大丈夫よね……。


 こちらにも、新しい焼き方の土器と種籾。


 それに、吉備や出雲までの旅費の代わりに新しく製鉄した塊を持たせている。


 あまり大きな物だと逆に不審がられるから、鏃サイズか小刀が作れるサイズまで。


 出来るだけ相手を刺激せず。こちらを信頼させて交渉に当たれるように。


 出発の日。


 吉備班の4人と出雲班の5人、吉備班は大和川を下って中河内へ。

 出雲班は木津川を伝って長岡、亀岡方向へと向かって歩いて行った。


 だんだんと小さくなってゆく背中を、いつまでも見送る家族や村人たち。

 それぞれが厳しい顔や、涙を浮かべている人達もいる。


 みんな分かっているのね。この旅が簡単ではないという事。もしかすると2度と会えない可能性も……。

 

 難しい仕事を押し付けてしまってごめんなさいね。


 でも、あなた達が持ち帰ってくれる結果は、このクニの将来にきっと繋がっていくから。


 皆の無事の帰りを毎日祈って待っています。



 この村の将来を決める大事な使命を負った9人が旅立ちました。


 次回は、6ヶ月後にみせる巫女の姿

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