表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『翡翠の勾玉が繋ぐもう一つの歴史』 〜65歳考古学者おばちゃんの古代倭国セカンドライフ〜  作者: カジキカジキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/55

671日目 〜小さな村と大きなクニ〜

「神女……! 神女!」


 遠くから呼ぶ声に気が付いて目を開けると、不安そうに私の顔を覗いているミナちゃんと目が合った。


 横を見ると、オオミとオクトさんも側に座って私とミナちゃんの様子を見守っている。


「ここは」


 見回すと、いつも私が寝ている建物だった。聞くとオクトさんが抱えて運んでくれたんですって。


 ごめんなさい、重たかったでしょ?


 それにしたも、せっかくの宴の席だったのに驚かせてしまってごめんなさいね。


 私は、宴の途中で突然訳のわからない事を話したかと思うと、急に意識を失って倒れたらしい。


 その後は、呼びかけても返事もせず。


 もしかしたら――と脳裏に浮かんだとも話していた。


 心配かけちゃったわね。


 体を起こして二人に向き合う、ミナちゃんは私の手を握って離してくれない。


「ミナちゃん」


 私も、ミナちゃんの手をギュッと握って息を吐く。

 

 そして、昨日見た事を二人に話し始めた。


「オオミ、オクトさん……私は、未来を見ました」


 私は勾玉を胸に当て、現代の知識ではなく、ただ「心」で語った。

 

「この村の未来です。

 このままではこの村に争いが訪れます」


「でも、まだ間に合います。

 私たちは『戦うクニ』ではなく、『皆が笑顔で集うクニ』を作りましょう」


 二人が黙って頷く。


「まず、中河内なかがわうちの人たちと、もっと深く結びつきましょう。

 あの地の大和川の流れが、私たちと海をつないでくれます。

 交易の船を増やし、サクくんでつながった絆を家族のように広げていくのです」


 オクトさんが力強く頷いた。


「中河内のサクに使者を送ろう」


(サクくんは元気にしているかしら)


「次は、西の吉備きびのクニです。

 彼らは銅の鏡や立派な器台を持っています。

 私たちは祭りの場を提供し、彼らの神様も一緒に祀りましょう。

 『吉備の神も、纒向の神も、同じ空の下』いつも共にあるのです」


 オオミが目を伏せて頷いた。


「吉備は昔から『強いクニ』と聞いています。が、実は祭りを愛する者たちが集まっているとも聞きます。特別な器台を贈り、祭りに参加して頂きましょう」


 そして、最も力の強いと恐れられていた山陰の出雲いずものクニ。


「出雲の人たちは、朱塗りの美しさと、鉄の力を知っています。

 でも、彼らも『争い』より『豊かな実り』を求めているはず。

 稲作の知識を伝え、共同で大きな祭りを開きましょう。『出雲の神とヤマトの神が、手を繋ぐ』――それが、私たちの盾になります」


 ミナちゃんが小さな声で言った。


「でも……もし攻めてきたら?」


 私は優しく彼女の頭を撫でた。


「攻めてくる理由を作らないの。

 私たちは田畑をこれ以上広げない。鉄も――

 祭りの場を大きくし、皆が集まる『いち』を開く。交易で得た豊かさを、みんなで分ける。

 そして……結婚の絆を増やすの。

 オオミさんとオクトさんのように、クニとクニを家族にするのよ」


 私たちは皆で建物を出ると、オババ様の元を訪ねてさっきの話をして聞かせた。


 オババ様は「どうせなら近くの村々も一緒になって村を大きくしよう」と、吉備や出雲を相手にするのなら、こんな小さな村のままではあっという間に取り込まれてしまうじゃろう。


 そう言って近くの小さな村々を説得して回ってくれた。


 もちろん反発もあった。そんな村には田んぼと土器の改良の知識を与え、さらに中河内との交流が増える事を説明してメリットを話したの。


 小さな村々の心配事と言えば、毎日の糧。


 稲が沢山育てられれば飢える事が減り、土器が強くなれば保存が効いて野菜も長持ちする。


 また強いクニと交流があれば、他の強いクニから襲われる心配も減る。


 そうやって私たちは小さな村々を纏めていった。


 ただし、他の強いクニから目を付けられないように。私たちの目的は、あくまで田んぼの改良で飢えを凌げるようにする事。土器を強くして保存に向いた容器を作る事。力を付けるという事ではなく、協力できる関係作りをアピールした。


 そして、小さな村々が手を繋ぎ、その絆が繋がり始めた頃……。



 おばちゃんの見た景色を現実にしない為に、小さな村々は手を取り、大きなクニと繋がりを持つ。


 次回は、クニとの繋がりがもたらすものは。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ