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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
成熟期

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街道警備隊の男たち

 翌日、朝早くから出発し、日が暮れる頃に目的地にほど近い、フォルネという街に着いた。フォルネには街道警備隊の駐屯地があって、ここなら安心して翼鬣犬を預けられるらしい。

 で、明日はここから馬を借りて目的地のティーフェへ行く。馬なら、半日足らずで着く距離なんだそうだ。

「……なかなか遠かったですね。オーディスさま、私なら間に合うなんてよく言ったな」

「オーディスさまというのは……もしかして、ゼックスバッハ家の坊っちゃんのこと?あー、たぶん……ゼックスバッハ家は翼鬣犬を持ってるから、アインベルガー家も持ってるって思ったんじゃないかなぁ」

 ユーベルが苦笑しながら言う。

「アインベルガー領は、帝都からそんなに遠くないのにね。それと、翼鬣犬って安易に普通の宿には預けられないんだけどなー。あ、そうか。それか、君の魔獣ならひとっ飛びだと思っていたのかも!」

 さもありなん。

 だが。

「無理ですね、鳥の魔獣は長距離飛行は得意じゃないし、狼の魔獣は体力はあるけど、スピードが翼鬣犬ほど速くない」

「だろうね~。でもそういうこと、普通はみんな、知らないものだから。そもそも翼鬣犬も、訓練した一部の騎士じゃなきゃ、とても乗れない。ゼックスバッハ家の坊っちゃんなんて、実際に乗ったことないと思うなー。すぐに高度を上げれた君は、かなり特殊だよぉ」

 そうだろうか。身体強化の出来る人間なら、大丈夫なんじゃないかという気もするが。

 いやしかし、丸一日の飛行旅は長かった……。

 前世の旅客機は、本当に便利だったんだなぁとしみじみ思う。座って本を読んだり映画を観たり、食事をしたり。トイレだって付いている。

 しかし翼鬣犬の方は、うたた寝も出来やしない。

 身体をきちんと固定していれば大丈夫な気もするが、ユーベルいわく、乗っている人間が寝ると、勝手にまったく違う方向へ飛んでいくそうである。

 まあ、今回のように3頭一緒に飛ぶ場合は、先頭の人間の指示通りに飛ぶので、後続に乗ってるなら軽く寝るのはOKらしいが。

 しかし長い時間爆睡すると、振り落とそうとしてくるらしい。翼鬣犬も、頑張って飛んでいるのに上で寝られると腹が立つのだろう。

 そういえば前世で、車の助手席に座っている人間が寝ると、運転手は不満に感じるという話を聞いた覚えがある。それと同じかも知れない。

 もっとも、私は運転免許は持ってなかったので、その話が本当かどうかはよく分からない。どちらかといえば、横でベラベラとどうでもいい話をしている方が、イライラしそうなんだけどなぁ。

 ちなみに私は車での移動時、常に仕事をしていた。

 専属の運転手は、私の仕事の邪魔をしてはいけないとよく理解していたらしく、話かけられた記憶はない。彼なら……たぶん、助手席の人間が寝ていても気にしないことだろう。

 まあ、それはともかく。

 運転をするでもなく、ただ空を飛んでいると、やはり自然と眠気は襲ってくる。

 それなのに寝ずに済んだのは、ユーベルとエクバルトのおかげだった。2人が騎士団あるあるや、魔獣の生態の不思議など、いろいろと面白い話をしてくれたおかげで、乗り切れたのだ。

 これがもし一人だったら……どう耐えるんだろう……?


 この付近は、延々と山が続いている。

 なので、主に林業を生業としているらしい。鉱物見本市が行われるティーフェの方は、少し珍しい石が取れるため、主産業は鉱物採掘だそうだ。

 どちらにせよ、あまり広く拓けた場所がないことから野菜や穀物などは育てられず、他の地域から運ばれてくる。

 ゆえに塩漬けや酢漬けの食品が多い。

 ということで食事は、帝都に比べると格段に落ちた。パンなんか、カチカチだ。これも保存が効くからだろう。

 スイーツも、単に果物を蜂蜜漬けしたものくらいのようだ。

 うーん、これはアスラが付いてきていたら、怒ったに違いない。

 リーゼッテが先に助言してくれて助かった。

 かくいう私も、しょっぱい料理ばかりなので、途中からあまり食が進まなくなった。

 今は―――今夜泊めてもらう街道警備隊の広間で、大宴会中なのだ。帝都から来た第2騎士団の副団長をもてなそうと、警備隊の連中は張り切り。たくさんのご馳走を用意してくれたのである。

 しかし……この地域の人はこれが常食なのか?塩分の摂り過ぎは良くないぞ……?

 しょっぱくて硬い肉を頬張りながら、小さく溜め息をついてしまった。

 一方、警備隊のガタイのいい男たちは「酒が進む味でしょう!」と上機嫌だ。エクバルトにがんがん酒を勧めている。

 エクバルトも酒は強いらしく、勧められるがままに飲んでいた。ユーベルの方は強くないのか、舐めるようにチビチビと飲んでいる。

「じゅーたい長も~、飲んだらどうだぁ?」

 すでに出来上がっている男が、私の前にもドン!と酒の入ったカップを置いてきた。

 帝都で飲まれているのは主にワインだが、この辺りはエールのようである。

 ちなみに、帝国では14歳から飲酒が認められている。つまり、私も飲めるお年頃だ。もっとも地方では、子供の頃から普通に酒を飲んでいるらしい。

「いえ。酒は20歳を過ぎてから飲むと決めていますので」

「えぇ?なんで20歳??」

「酒は、成長に良くない影響を及ぼす恐れがある」

「はぁ……?成長……ああ、なるほど。そりゃあ、納得ぅ!」

 がはは!と男は笑って私の胸を掴んだ。

 ……この、酔っぱらいめ!

 私は問答無用で男の腹に一撃を入れた。こういう輩に遠慮する必要はない。

「あがっ!」

「たとえ酔っていても、やっていいことと悪いことがあるぞ!」

 どっと周囲が沸いた。

「ハイン!そりゃー、お前が悪い!」

「そーだ、そーだ!おめぇんとこの母ちゃんよりも、じゅー隊長の方がカワイイからって、お触りは無しだぁ!」

「じゅー隊長、俺も殴って~!」

 ……うーん、参った。

 ここのノリはどうも……付いていけない。

 前世でキャバ嬢は経験しているが、わりと高級店で働いていたので、あまり粗野な客は来なかったのだ。

 困惑していたら、エクバルトが間に入ってくれた。

「こらこら、まだ若い女の子に下品な絡み方をするな」

 言いながら、私の周りの男たちをポイポイと投げてゆく。エクバルトは貴族のはずだが、こういう雰囲気には慣れているらしい。

 なお、街道警備隊のほとんどが平民である。隊長に就いているのは貴民らしいが、雰囲気は平民の隊員とほとんど変わらない。

 そして警備隊のほとんどが、私が噂の"獣隊長"だと知ってかなり盛り上がっていた。

 隊長の一人が、知り合いの騎士から、第2騎士団には獣隊長と呼ばれる変わった少女がいると聞いていたそうだ。

「いやー、獣隊長というから、どんなゴッツいコだろうと思ったのによぉ」

「めんこいよなー、そんで細いよなー。でもやっぱ強いなー。ハインが一発でのされちまった」

 エクバルトに投げられながら、男たちはまだ楽しそうにガハガハと笑う。

 ダメだ。

 これは、さっさと食べて退散しよう。

ブクマ7000超え御礼SSを、活動報告に上げています。

特に本編とは絡みませんが、良かったらご一読ください。

……というか、今までのSSをどこかにまとめた方がいいのかなぁ。

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― 新着の感想 ―
まあこの手のは若いってだけでカワイイって言うからな。 ssまとめてくれるとアクセスしやすくていいかもね
SS、纏めるかは先生の手間がどれ程になるか分からないので、お好みで。 現代でも長距離移動は疲れますしね。それが騎乗となれば尚更。
いつも楽しく読んでます! ざ!酔っ払い! 楽しく酔えるのはよいけど、カラミ酒は駄目だろうし、泣き酒(愚痴)も大変だろうな〜 前世の高級店の話でふと、談合とか秘密な会話聞いたりしたのかなと?少し思っ…
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