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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
成熟期

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154/166

魔獣とは……?

 空の上は、確かに寒い。

 だが、貸してもらったフード付ポンチョは優秀だった。寒さがほとんど気にならない。

 先頭を行くユーベルが、こちらを振り返る。

「寝ないようにねー?落っこちちゃうよー」

「はい」

「それと、気持ち悪くなったりしてない?あと、ときどき水を飲んでおくようにね。2時間ほど飛んだら、少し休憩するから」

 ユーベルはマメだな。あれこれ、細かい指示をしてくれる。

「ユーベルさまは、いつから魔獣研究を?」

「あ、様とか要らないよ。僕、これでも候爵家の出なんだけど、魔獣研究の道に進んだせいで、勘当されてるから。うちの家、わりと国教会寄りでさ」

 へえ……。

 とはいえ、呼び捨ては無理だろう。"さん"付けで呼べばいいか?

「でもさ、10年―――いや、もう12年前かな?魔物が大量発生して、騎士団の人もたくさん亡くなる事件があってね。そのときに、敵をちゃんと知ることから始めるべきじゃないか?って思ったんだー」

 軽い口調ではあったが、その言葉の中に強い信念が潜んでいる。エクバルトが補足した。

「ユーベルが魔獣研究所を立ち上げたんだよ。それまで魔獣を研究するなんて、もっての外という空気だった」

「そうだったんですか」

 ほほう、すごい人じゃないか、ユーベル。

 するとユーベルが苦笑した。

「月豹に乗るようになったのも、研究所が出来てからだよ。それまでは、騎士が乗るのは玉馬だけだったんだ。あれは、聖獣だから」

「聖獣……?」

 まあ、確かに……空を駆ける真っ白な馬は、魔獣っぽくはなかったな……。

 第1騎士団が乗っていた玉馬を脳裡に思い浮かべ、そんなことを思った。

 ユーベルは不満そうに鼻を鳴らす。

「でもさー、聖獣っていうけど。それは人間が勝手に言ってるだけだし。玉馬は草食だから人を食べたりはしないけど、気性は荒くて攻撃的だ。人にも全然、慣れない。魔道具でムリヤリ従わせている」

「……えーと、すみません、聖獣と魔獣の違いは?」

 あれ?人間が勝手に言っているだけ……?

 首を捻りながら質問を口にすると、ユーベルも首を捻るのが見えた。

「うーん……難しいよねー。人を襲うかどうかで、人間側が勝手に分類しているだけじゃない?でもまあ、凶暴で肉食なのは闇属性の獣が多いから、属性による分類ともいえる」

「ちなみに玉馬は」

「風属性。そうそう、前に君が退治を手伝ったんじゃなかったかな?でっかい蚯蚓!あれなんかは、土属性なんだよ。でも、魔獣という風にみんな分類しているね」

 なるほど。

 前世でも、害獣だの害虫だの、人間が勝手に名付けていたのと同じようなものか。

「光属性の獣なら、間違いなく聖獣と言えそうなんだけど。……でもさ、文献で知ったんだけど。昔、南の方の国で、煌華鳥という獣が出現してね。辺り一面、雷撃のような光で薙ぎ払って焦土にしちゃったらしいよ。その煌華鳥、光属性なんだってさー」

 へーえ。まさに、"魔獣とはなんぞや?"と思う事件だなぁ。

 ということは。

 やはり人間も、闇属性だから悪、光属性だから善という分類もおかしいってことだよな、うん。

「ついでにもう一つ聞きたいんですが。普通の獣と、魔獣の違いは?普通の獣でも、人を襲うものがありますよね?」

「ん~、そうだね……魔力を持っている獣が魔獣かなぁ?それと魔獣は、濃い魔気の中ほど活発になるね。普通の獣は、濃い魔気だと弱ってしまう」

「魔気ですか……」

「うん。世界には魔気というものが満ちている。魔力と似ていて、計測も出来るんだけどー……魔獣が出現するのはほとんど、魔気の濃いところなんだよね。たとえばシュティル湖とか」

 なるほど。

「魔気のないところでは、もしかすると魔獣は生きていけないのかも知れない。でも、魔気をなくす方法が分からないから、この仮説は確かめられないんだー」

 ふうん……。もし、魔気が無くなると魔獣が死ぬとしたら……そして、魔気をゼロにする方法が発見されたら……大型の魔獣が出たとき、退治が簡単かも知れないなぁ。

 でも、私のような魔力のない平民はいいが、魔力の高い帝国貴族たちも影響を受ける可能性がある。

 魔気に魔力。謎だ。


 半日ほど飛行し、夕暮れどきに小さな街の郊外に降りた。

 ユーベルはここで野営するという。

 翼鬣犬は騎獣としてあまり知られていない魔獣なので、街へ行くと混乱を招く可能性が高いらしい。

「それに、預けられるところもないし」

 ということで私も野営で構わないと言ったら、エクバルトが首を振った。

「まだ若い女の子を野宿させる訳にはいかないよ」

 …………若い女の子。

 どこに?と思わず聞き返しそうになって我に返る。

 そうか。私はまだ10代……。

「それと一応、街で情報収集もしておきたい」

「魔獣ですか?」

「うん。この辺りでは魔獣が出たという報告はないから、大丈夫だとは思うけれど。念のためにね」

「わかりました」

 ま、ベッドで寝る方がいいに決まっている。ここは有り難くエクバルトに従おう。

 ―――街はさほど大きくないが、それなりに賑わっていた。

 往来に人が多い。宿の数もこの街の規模では、多い方ではないかと思う。

 それもそのはず、エクバルトによると、この街は帝都とゼックスバッハ領を繫ぐ街道の要所に当たるらしい。

 だからだろう、馬や旅装姿の人間ともよくすれ違った。

 さて、エクバルトが選んだのはスタンダードな雰囲気の宿屋だ。

 中に入り、空き室を尋ねる。宿屋の親父はにこにこと答えた。

「あ、ちょうど一室、空いてますよ」

「一室……」

 エクバルトが低く唸る。私はエクバルトを見た。

「何か問題が?」

「……いや」

 彼は溜め息をついて手続きをし―――部屋に入って荷物を置くと、私と向き合った。

「……よくよく考えれば、子供の君が一人で部屋を取ると、金を持ってると思って襲ってくる輩もいるかも知れない。という訳で同室にしたけれど。誓って、君に手を出したりしないから」

「真面目か!」

 あ、いかん。思わず突っ込んでしまった。

 エクバルトが目を丸くする。

「いえ、失礼しました。……わざわざ宣言していただかずとも、そんな心配は全くしていませんが」

「……うん。野営でもいいと言ったときから、分かっている。でも!」

 エクバルトの眉間に皺が寄った。

「君はまだ若い女の子なのだと、もう少し自覚を持ちなさい。あまりに無頓着で、心配になるよ」

「……はい」

 エクバルトくらいなんだけどな、私を若い女子扱いするのは。

 大体、宿屋の主人も私を男と思っていたと思う。今日の私は、動きやすいシンプルな格好をしていて、女っぽさが無いからだ。

 エクバルトは苦笑した。

「リンは別に男に生まれたかった訳でもないんだろう?リーゼッテお嬢さまと化粧品を作った話をするときは楽しそうだし、アスワドや月豹と接しているときも、女の子らしい顔になっている」

「えっ……」

 ど、どんな顔だ。この顔で、女の子らしい顔……?!

 なんだか恥ずかしいぞ。

「そんなに驚くことじゃないだろう」

 私の顔を見て、エクバルトは吹き出した。

「とにかく、年頃の女の子なんだから。あまり男っぽく振る舞うんじゃなく、女の子らしくしなさい」

「はあ。でも、別に男っぽく振る舞っているつもりはなく……ただ、女らしくしても違和感があるかな、と」

「そうかなぁ?やってみないと分からないだろう?」

「そうですね。まあ、やりたくなったら、徹底的に女らしくなります。まだ、その時期ではないので」

「あはは!」

 明るく笑い、エクバルトはベッドに腰掛けた。

「そうか。徹底的に女らしくなるか。楽しみだな!……うちは、娘が2人いるんだけどね。3歳と5歳。最近、お父さんみたいな騎士になると言って剣を振り回すんだ。将来、リンみたくなるんじゃないかと心配でさー」

 ん?だから、私に女らしくしろと?

 関係ないじゃないか。

 だが、娘の話になった途端、エクバルトは娘に甘い父親の顔になった。こんな幸せそうな顔をされては、文句も言えない。

 私は肩をすくめた。

「若い女性と2人っきりで宿に泊まったことを、その可愛い娘さんたちに知られないようにした方がいいですよ。憧れのお父さん像が崩れかねない」

「うわー、ホントだ!……いや、娘よりも、優しくて気立てのいい奥さんに知られる方が怖いな……これは、ユーベルに口止めしておかないと」

 へえ。

 エクバルトはなかなか良い家庭を築いているらしい。同じ貴族でも、アインベルガー家とは大違いだ。

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― 新着の感想 ―
聖獣と魔獣の区別、全然出来てないじゃんか〜www
いつも楽しく読んでます! ま、悪と正義は人それぞれ、決めるのが一方的だといろいろ思う所は出てくるよね! 聖獣指定の魔獣も、もし会話できたら、 『自分が聖獣?笑える』とか言って笑いながら襲ってきたり…
更新お疲れ様です。 >同じ貴族でも大違い まぁ『良い心根で在るか、良い親で在るか』は貴族平民関係なく、その人が産まれた時点で周りによって形成されるものですからなぁ…。エクバルトさんはその点、周りにま…
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