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辺境警備隊のお医者さん(仮)  作者: リンダ 鈴
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十年前 9

2016.1.28 誤字修正

2016.4.18〈レッサーデーモン〉を〈グレーターデーモン〉に変更しました。

「クックック、あの数をあっという間ですか、ああ、本当に予想以上ですね」

オークを全滅させシダが俺の横に立った。

「雑魚は打ち止め?」

その口元に浮ぶ微笑みを見てゾクリとする。

「ふふ、雑魚は打ち止めですね」

「だったら終わりにしようよ」

半分閉じられた瞳は熱く潤み目の前の男を見つめる、紅く濡れた様に艶めく唇をピンク色の舌でペロリと舐めた。艶然とした笑みに金縛りにあった様に俺の思考が停止した。

「そうですね、これで最後です」


男は懐から黒い石の様なものを二つ地面に投げる。コロンと転がり止まったそこから黒い煙が吹き上がった。

しまった!

間に合わない、俺は剣を黒煙に投げつけシダに飛び掛る、シダを抱き込み身体を捻るが黒煙から伸びた刃を躱しきれなかった。シダを抱えたまま地面を転がる俺たちを見て殿下達が駆け寄ろうとするのが見えた。


「来るんじゃねえ!」

右頬に焼け付く様な痛みが走る。


何故気付かなかった、この不自然さに。

お互いの力を理解し言葉を交わさずとも抜群のチームワークを誇っていた。

ダリル王子が支援を待たず先陣をきる。リスト殿下が怯える仲間を放置し戦乱に飛び込んだ。

アウレリアやティレイトの怯え方も、グンターが判断に迷う事も

何より後方支援に徹する筈のシダが前に出て詠唱破棄で魔法を連発してきた。


おかしなことだらけじゃねえか!何故気付かなかった。




恐慌の魔法にかけられていたことに……


全員がまともに判断出来てなかった。



俺を含めて





黒煙が霧散したそこに


グレーターデーモンが黒刃の鎌(デスサイズ)を振り上げていた。



「ハアッ!」

「ッツァ!」

リスト殿下とデレル王子が振り下ろされた鎌の一撃をそれぞれの剣で受け止める。

互いの刃がチキチキと音を鳴らす。



オルガに抱えられたままシダはほんの少しの間意識を失っていた。

「シダ、おいシダ」

軽く頬を叩くと長い銀糸の睫毛が震えた。

「う、あ、あぁ、すまない」

数度瞬きを繰り返した後オルガの顔を見て大きく息を飲む。

「オ、オルガ、血が、今治療を」

「そんなの後でいい、今はグレーターデーモンをなんとかするのが先だ、あいつに物理攻撃は効かねえ。立てるか?」

「ああ」

少しフラついたが立ち上がったシダから手を離す。

「グンター、ティレイト!」

名を呼ばれハッとする2人は慌てて駆け寄ってきた。

「シダは支援魔法を、グンターは剣に雷の付与、ティレイトは二人に魔法防御を、できるか?」

「ああ」

「わかった」

「はい」

「シダ、詠唱破棄はなしだ」

それだけ指示すると俺は剣を拾いグレーターデーモンに向かう。

力負け寸前の二人の合間を縫って鎌を弾き上げる。

「一旦下がれ!」

3人とも後方に飛びすさりグレーターデーモンと距離をとる。

そこに順次詠唱の澄んだ魔法が俺たちを暖かく包む。


「剣士で奴の注意を惹き付ける、隙を見て魔法攻撃をしかけろ、行くぞ!」

魔力付与された剣なら多少攻撃は通る、しかし大ダメージを与えるには魔法攻撃しかない。

詠唱破棄を連発したシダは後どれ位使えるのか?魔術師団員レベルならとっくにぶっ倒れていそうだ。


俺が正面から鎌と打ち合う隙に、左右から殿下達の剣が隙をを狙うが防御膜の様なものに弾かれる。

「ライトニングジャベリン」

「アイビーウイップ」

蔦がグレーターデーモンの足に巻き付く。

頭上から雷の槍が5本降り注ぎその内2本がグレーターデーモンの羽に突き刺さり残りは囲い込む様に地面にささる。

「ダメだ、リア!」

リスト殿下は叫ぶと同時にグレーターデーモンの背後に回り込んでいたアウレリアの前に飛び出す。

グレーターデーモンの鎌がアウレリアを薙ぎ払う様に旋回した。

剣で受けようとしたリスト殿下ごと二人は吹っ飛ばされた。

「殿下!」

上段から鎌を叩きつけ地面に縫いとめる。返す刃を辛うじて防いだ。

「オルガ殿!王子!離れてぇっ」

グンターの声にとっさに飛び退る。


「ホォリィィバァアストオォォォ!!!」

シダの絶叫の如く呪文と共にグレーターデーモンが眩い光に包まれる。

直径3メートルの光の球は徐々に圧縮され小さくなってゆく。

「眼を…」

グンターが言切らぬ内に察した俺は光に背を向け眼を閉じる。リスト殿下はアウレリアに覆いかぶさり彼女の眼を塞いだ。


ズシュン!

音と衝撃が背後から襲った。恐る恐る眼を開けてみたがグレーターデーモンの姿どころか破片すら見当たらない。


ドサリ


「シダァ!」

デレル王子の声に振り向くとシダが意識を無くし倒れていた。

俺はシダに駆け寄り抱え起す、と、鼻と口から血が流れ出す。首に指をあて脈がある事を確認した。

魔力を使いすぎて意識を失っただけか?

リスト殿下はアウレリアを支えながらシダのそばに来た。


「なんなんだ、今の魔法」

俺は魔法に詳しくない、一撃をでグレーターデーモンを消滅させる魔法なんて聴いた事が無い。

「…神聖魔法です、神官が使う…」

リスト殿下がシダの血を拭きながら答えた。

「こいつ、そんなのまで使えるのか?」

「……つかえませんよ、普通…」

「はぁ?」

「神聖魔法は神官の技、普通の魔法じゃありません。魔術師の使う魔法とは系体も仕組みも何もかも異なります」

「じゃあどうやって」

「解りません、だけど喉にも魔力にも相当負担をかけて行ったに違いありません……命にもね」


グンターが立ち上がった。

「もうすぐ夜が明ける、このまま此処で愚図愚図してられない、シダを竜車に運んで出発しよう」

皆頷いた。俺はシダを抱き上げる。

「オルガ殿」

リスト殿下に名を呼ばれ立ち止まる。

「この事は内密にしていただけますか」

殺気を孕んだ眼で俺を睨め付ける。俺は何も言わず、ただ頷いた。


詠唱破棄は通常の1.5〜2倍位の魔力を消費すると思ってください。


やっと戦闘シーン終わった(T ^ T)


デーモン種変更について

レッサー如きに全員でと言うのもどうかと思いまして変えました。

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