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in & out

大分あいだが空いてしまって申し訳ないです!

今回ではじめの方は終了。

次回から本編のような感じです。


「な、なに・・・。コレ・・・。」

顔を引き攣らせたまま、実紅が呟く。

「わからない。わからないよぅ。」

情けない返事しか夏奈にはできなかった。

無理もないことである。

夏奈は恐る恐るノートに手を伸ばした。

「だ、大丈夫なの?」

実紅が小さく心配そうに訪ねた。

「ノート取るだけだから。」

そう応え、ノートまであと10cmくらいのところで

夏奈は手を止めた。

いや、止めさせられた。

声によって。


「そう怖がるな。今の其方達ならこの塀を通り抜けられるはずだ。」


声の元はあのブロック塀。

もちろん、知人の声では無い。

ありえない。

2人は思った。

視線がブロック塀に釘付けになる。

「いいから。入ってきなさい。」

また、ブロック塀から。

さらに混乱した。

なぜ塀から声がするのか。

なぜその塀は私たちを呼び寄せようとしているのか。

もし入れたとして塀の奥には何があるのか。

様々な疑問が頭の中を駆け巡った。

それと同時に、入ってみたいという好奇心も生まれた。

それは夏奈だけだったが。

「行ってみよう・・・。ヤバくなったらすぐ出ればいい。」

「は?何言ってんのよ?大体出れるかも分かんないし。」

確かにそんな得体の知れないところに入れたとして

出れるという確証は無かった。

「それでも。なんか・・・、この屏の奥懐かしい気がする。」

この道は通学路のため毎日通ってはいるが、

特になんの思い出もなく、懐かしいはずがない。

実紅はそう思い反論した。

「そんなわけないでしょ?」

「行く。」

こうなった夏奈はもう止まらない。

それは実紅が一番分かっていた。

なぜ夏奈がそこまで入りたがるのかが

実紅にとって疑問であった。

しかし、ああなってしまった夏奈の

行動に最後に歯止めをかけるのは自分しかいないと思った。

しょうがない。夏奈をほっとく訳のもいかない。

実紅は覚悟を決めたように夏奈の瞳を見つめ、

こう言い放った。

「ついてってあげるけどアタシが危ないと思ったら止めるからね!」

夏奈も実紅の目を見て一言。

「ありがと。行くよ。」

そう言い、夏奈はノートを拾うことを忘れ立ち上がった。

そして、ゆっくりと屏に手を伸ばした。

指先が20cm、10cmと屏に近付いてゆく。

そして屏に触れた。

正確には触れていない。

夏奈の指が少しだけ屏にめり込む。

「は、入れる。」

驚きの表情で実紅の方を振り返り言った。

実紅は頷き夏奈の隣に並んだ。

「一緒に入ろ。」

そう言って夏奈に倣い実紅も屏に指先だけを通す。

2人とも互いの心臓の鼓動が聞こえるほどに

胸の高鳴りを感じていた。


「せーのっ!」


2人の声が重なった。

そして2人は塀の中へ消えていった。

1冊のノートを残して。



中は思っていたよりもずっと暗く、

湿り気を多く感じた。

それが2人の不安感を余計に煽った。

辛うじて見える足元だけを見て進んでゆく。

「この先だよね・・・?さっきの声。」

実紅がいることを確かめる意味でも夏奈は訪ねた。

「う、うん。多分。」

「もう少し歩いてみよ。」

そう言って夏奈は実紅の手を握った。

無言で実紅も握り返す。

少しでもこの不安や恐怖を和らげたかった。

普段では絶対に恥ずかしくてできないことも

こんな状況では出来てしまう。

自分がいつもいかに素直に生きていないか

2人は痛感した。

無言で歩き続ける。

3分程歩くとはるか向こうに僅な光が見えた。

表情を明るくし、向き合った。

「どこかに出れるかも。」

「走ろっ!」

「うん!」

走った。

光が近付いてくる。

出れる!そう思い走り続けた。

光が目の前まで迫り、2人の全身を包んだ。


そこには一面に白銀の世界と針葉樹林が広がっていた。

その木々が生クリームを塗られたように

雪を被っていた。

しかし今は5月、雪など降るはずがない。

さらにその雪に触れてみると

少しも冷たくないのだ。

それに針葉樹林にしても色はあるが脆い石英のような素材でできており、

多少、力を加えるだけで細い部分は簡単に折れてしまった。

おかしい。なにもかも。

ここはどこなの?

そんな疑問が2人の脳裏に浮かんだ。

互いの思ったこと言おうとしたそのとき、

眩い閃光が2人を襲った。一瞬にして

視界が奪われ、反射的に目を閉じる。


数秒後、2人は瞼を上げる。

するとそこには全身に黒い衣を纏った男が2人立っていた。

手前の男は若い男で細身であった。

そして奥の1人は異様な格好をしていた。

こちらも細身、フードを目深に被り、大きな鎌を担いでいた。

そして手前の男が口を開く。

「其方達、宮原夏奈と神田実紅であろう?」

若いのに老人のような口調であった。

「そ、そうです・・・。」

実紅が小さく応える。

間髪いれずに夏奈が尋ねる。

「あ、あの、なんで私たちの名前知ってるんですか?」

「まあ、それは知る必要のないことだ。」

「気になります!」

「ならば・・・。」

そこで一度間を空け続ける。

「其方達と私達は孰れもう一度出逢う。そのときに話そう。」

夏奈は口にはしなかったが〝ケチ〟と思った。

だが、素直に引き下がった。

「わかりました。それで結構です。」

自分でも少し棘のある言い方だと分かった。

しかし男は何も言わず、話題を変えた。

「今から、其方達に私達の能力をそれぞれ授ける。」

そういうと若い男は夏奈の前に、

鎌をもった男は実紅の前に立った。

慌てるように実紅が若い男に向けて質問を浴びせた。

「ちょっと!意味分かんない!なんで私たちなの?

能力って何?ここは―。」

若い男が先程より少し大きめの声で実紅の質問を

抑制するように口を開く。

「それも、もう一度逢うときでよかろう。

今は知る必要のないこと。」

実紅もその声音に引き下がった。

が、一番聞きたいことだけ訪ねた。

「最後に。アタシたちに危険はないんですか?」

若い男は少し考え応えた。

「ふ~む・・・。一様にないとは言い切れんな。」

「どういうことですか?!」

急に知らないところに連れてこられて

これから危険が及ぶかも知れないと言われれば

はいそうですかとはいかない。

「これ以上の問答は無駄だ。」

「ちょ、待って!」

男は鎌をもった男に向かって一言。

「やれ。」

鎌を持った男は無言で頷き実紅の方を向いた。

同時に初動を開始し、

若い男は夏奈の顔の目の前に手を翳し、

鎌を持った男は鎌を差し出し〝受け取れ〟と一言。

夏奈は目を瞑り、実紅は咄嗟にそれを両手で受け取ってしまう。

若い男は一言。

「これから難儀するかも知れん。すま―。」

言葉は最初の眩い閃光によって遮られた。



「終わったな。」

若い男が鎌を渡した男に言った。

「ええ。これでやっと逝けます。」

少しずつ体が青白い光に包まれてゆく。

「長い間、ご苦労だった。」

若い男は労わるように言う。

同時に鎌を持っていた男はフードをとり、天を仰ぐ。

「それでは。今度こそ恋人と暮らします。」

泣いていた。泣きながら天を仰いでいた。

「ああ、達者でな。」

「ありがとうございました。」

礼の言葉を述べ、姿を消した。

残った男はそれを見送るように

空を見つめ一言。

「安らかに。」



気付くとそこは夏奈が転んだあのブロック塀の前だった。

「はれ?も、戻ってきた?」

「そうみたいね。」

2人とも安心した表情で互いを確認した。

「あたしは男の人に何かされた。実紅は何かおっきい鎌渡されてたよね?」

記憶をたぐり寄せながら聞く。

ついさっきのことなのになぜか思い出すのに苦労した。

「う、うん。なんともない・・・よね?」

2人は互いの姿を見たが特に変わった様子は無かった。

かといって夢だった、と言えるような状況ではない。

その証拠に。

「はっ!ノートっ。」

夏奈はあのとき、ノートを置いたままだった。

めり込んだまま。

見るとノートはブロック塀に立て掛けるようにして

置いてあった。

そこに塀があるということだ。

夏奈はブロック塀に近付き、少し躊躇う。

そしてノートより先に屏に触れようとした。

触れられる・・・。そこに塀は・・・ある。

夏奈の伸ばした指は間違いなくブロック塀によって止められた。

「あ、ある・・・。」

驚きで言葉が出てこなかった。

「入れないってこと?じゃあ、さっきまで私たちがいたところは?」

入れないところに入っていた。あの雪を被った針葉樹林はどこだったのか。

わからなかった。夏奈にも実紅にも。

「わ、わかんない。でも、なんともないみたいだし今日はもう遅いから

帰ろうよ。明日さ、学校でもう1回考えてみよう。」

「そうね・・・。夏奈にそんなこと言われるなんて何か変な感じ。」

「なんでよ?」

「夏奈さ、前より前向きになったていうか・・・、強くなったっていうか。」

以前からも前向きではあったが、〝強くなった〟という表現が適当だった。

「え?そうかな?自覚ないけど。」

「まぁいいけど。ほらっ、ノート拾いな。帰ろっ。」

「うんっ!」

日もかなり落ち辺りが闇を帯びていた。

2人の明るさはそんな闇を切り裂くようであった。


自分なりにはちょっと読み辛いと感じたところに

修正を入れたつもりなんですが、それでも読み辛かったら

すいません。

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