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レン  作者: 丸鶴
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夏至タコ

レン君は、おじいちゃんが買ってきたたこ焼きを見て顔をしかめました。

「ぼく、タコは食べないよ。西洋では悪魔の使いなんだって。」

おじいちゃんは笑いました。

「そうかい。でも今日は夏至だからなあ。」

「夏至だと何なの?」

「それは自分で聞いてごらん。」

おじいちゃんはそう言うと、庭へ出ていってしまいました。


その夜。


窓から月の光が差し込むと、机の上のたこ焼きがふわりと揺れました。

「やれやれ。」

小さな声がしました。

見ると、たこ焼きの中から親指ほどの赤いタコが顔を出しています。

「た、タコがしゃべった!」

「しゃべるとも。夏至の夜だからね。」

タコは八本の足を広げて得意そうに言いました。


「君はぼくたちが嫌いなんだって?」

「だって悪魔の使いなんでしょ。」

するとタコは、ぷっと墨の代わりに笑いを吹き出しました。

「そんな話もあるけれど、日本では昔から縁起物なんだよ。」

「縁起物?」

「そうさ。タコの足みたいに、苗や作物がしっかり地面に根を張りますようにって願いをこめて食べるんだ。」

タコは庭の畑を指しました。

月明かりの下で、野菜の葉っぱが風に揺れています。

「みんなが元気に育つように。たくさん実りますように。そんな願いを運ぶのが、ぼくたちの仕事なんだ。」

レン君は少し考えました。

悪魔の使いというより、畑の応援団みたいです。

「本当に?」

「本当さ。だから夏至にタコを食べる地方もあるんだよ。」

タコはにっこり笑いました。

「さあ、試してごらん。」


レン君は勇気を出して、たこ焼きをひと口かじりました。

外はこんがり、中はとろり。

だしの香りがふわっと広がります。

「わあ、おいしい!」

思わず声が出ました。

タコは満足そうにうなずきました。

「それじゃあ、畑のみんなにもよろしく。」

そう言うと、月の光の中でふっと消えてしまいました。


次の日、レン君はおじいちゃんに言いました。

「またたこ焼き食べたい!」

おじいちゃんは目を丸くして、それからにっこり笑いました。


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