天神祭
テレビでは、大きな船がゆっくりと川を進み、その上にたくさんの人が乗っていた。
夜空には花火が咲き、川には光がゆらゆら映っている。
「きれいだねえ」
レンはテレビを見ながら言った。
「でも……なんか、おとなしいね」
そこへ、ことはがふわりと現れた。
「レンは、毎年『亀岩まつり』を見てるもんね」
「あっ、ことは! うん。ぼくのところのお祭りは、もっと近くで花火が上がるし、音も『ドーン!』っておなかまで響くもん。」
「近くで見る花火は迫力があるからね。」
テレビでは、大きな船が何隻もゆっくり進んでいる。
「でも、このお祭りもすごいんだよ。」
「そうなの?」
「これは『天神祭』。船に神さまを乗せて川を渡る『船渡御』という神事があって、その最後を花火が彩るんだよ。」
レンは画面を見つめた。
「そういえば……船と花火のお祭りって、ほかにもあるの?」
「あるよ。」
ことはは指を折って数えた。
「たとえば、瀬戸内には瀬戸田の花火大会みたいに、海を舞台にしたお祭りや花火大会がたくさんあるし、岡山や広島にも、船や港が主役になるお祭りがいくつもあるんだ。」
「どうして似てるの?」
ことはは、にっこり笑った。
「瀬戸内海は、昔から日本でも大事な海の道だったから。」
「海の道?」
「うん。船に乗って、人も荷物も、神さまのお祭りも行ったり来たりしていたんだよ。『こんなお祭り、いいね。』『うちの町でもやってみよう。』そんなふうに、少しずつ広がっていったんだ。」
「だから似てるんだ!」
「そう。もちろん、それぞれの町には、それぞれの自慢があるけどね。」
レンはうなずいた。
「ぼくはやっぱり亀岩まつりが一番好き!」
「それでいいんだよ。」
ことはは窓の外を見た。
「でも、遠くの町のお祭りを見ると、『どこかでつながっているんだなあ』って思えるでしょう?」
レンはもう一度テレビを見た。
大阪の川にも、瀬戸内の海にも、同じ夏の花火が咲いていた。
「ほんとだ。」
少し離れた場所で咲く花火も、どこか懐かしく見えた。




