4日目①試し、相談する
車の警報音は、夜明け前の最も深い闇の中で、力尽きる生き物の最後の喘ぎのように途切れ途切れになり、やがて完全に沈黙した。しかし、その音が残した呪いは、ギフトショップの周囲に濃密な澱となって留まっていた。
博は割れた窓から身を隠しながら、外の光景に目を凝らした。息を飲む。店の周囲は、おびただしい数の「何か」で埋め尽くされていた。昨日までモーテルの周りを徘徊していた比ではない。町のどこにこれほどの人間が残っていたのか。彼らは目的もなく、ただゆっくりと体を揺らし、あるいは意味もなく地面を引っ掻いている。その一体一体が、この建物を中心とした、巨大な檻の格子となっていた。
脱出は、不可能。
思考を拒絶するように、彼は階段を下りて一階の食料品棚へ向かった。プラスチックの容器に入れられた、日持ちのしないサンドイッチが目に入る。彼はそれを手に取り、包装を破って、乾いたパンと萎びたレタスを機械的に口へ運んだ。うまくはない。食べ物というよりは、燃料だ。ただ、生きるための義務として、エネルギーを体に送り込むだけだった。
食べながら、彼は考える。どうすれば、この檻から抜け出せるのか。地図を広げても、そこに描かれている道は、今はすべて死への通路と化している。別の音で彼らをどこかへ誘導する? だが、どうやって。この店に、あの車の警報音を超えるような大音量を出す装置などありはしない。思考は、出口のない迷路を彷徨うばかりだった。
その時、彼は一つの可能性に思い至った。これまで三度、彼を救ってくれたあの方法だ。万に一つの望みをかけて、彼は二階の事務所にある固定電話の受話器を取った。指先が、わずかに震える。保安官事務所の番号を押す。コールが始まった。彼は受話器を耳に当てたまま、割れた窓へと近づき、下の様子をうかがった。
しかし、何も変わらなかった。電話の呼び出し音は、この町のどこかで虚しく鳴り響いているはずだ。だが、店の周りを囲む死者たちは、誰一人としてそれに反応を示さない。彼らの鈍い知覚は、昨夜のけたたましい警報音によって、完全にこの場所へと釘付けにされてしまったようだった。これまで唯一有効だった生存戦略が、目の前で音を立てて崩れ去った。博は受話器を静かに置いた。じわりと、絶望が背筋を這い上がってくるのを感じた。
最後の希望は、もはや物理的な世界には残されていない。彼はノートパソコンを開き、モバイルルーターを使って、か細いインターネット回線に接続した。SNSのタイムラインは、昨日よりもさらに静かだった。生存者の数は、砂時計の砂が落ちるように、確実に減り続けている。それでも、まだゼロではなかった。
彼はキーボードに指を置いた。「ギフトショップにいる。多数に包囲されている。音による陽動は効果がない」簡潔な事実だけを打ち込み、投稿する。
数分後、短い応答があった。知らないアカウントからだった。『こちらも同じ状況だ。奴らは最後に聞こえた大きな音の場所に固執する傾向があるらしい』また別のアカウントから、『音には、もっと大きな音を。あるいは、別の刺激か』という、呟きともつかない投稿が流れてきた。
それは具体的な解決策ではなかった。だが、その短い文字列は、まだ世界のどこかで自分と同じように思考し、生きようとしている人間がいるという、紛れもない証拠だった。
一人ではない。その事実だけが、静かに広がっていく絶望の中で、彼が正気を保つための、唯一の錨となっていた。




