32日目②報
博とディーンは、数人の学生と共に、アーカム郊外の仮拠点へと向かった。残されていた食料や物資、そして旅の功労者である電気自動車を、大学の敷地内へと運び込んだ。ソーラーパネルを搭載したその静かな車は、大学の生存者たちの新しい電源となった。
夕方になり、図書館には再び生存者たちが集まっていた。そこに漂う空気は、昨日までとは全く違っていた。ダンカンとの通信が回復し、博とサラという新たな仲間が加わったことで、彼らの間に確かな希望と未来への展望が生まれていた。
アーミテイジ教授が、皆の前に立ち、大学の現状について語り始めた。
「我々は、ただ籠城していたわけではない。生き延びるための、基盤を築いてきた」
彼の話によると大学の運動場では土を耕し、残されていた種子から野菜の栽培が始められていた。図書館の知識を総動員し、保存食を作る試みも進められている。冬に備えて、周辺の枯れ木を集め、燃料とする準備も着々と進んでいた。彼らはこの大学を、長期的な生存が可能な、自給自足の要塞へと変えようとしていた。
「では、町の南側のあのバツ印は……」
「あのバツ印は我々がつけた。町の物資を効率的に回収するために」
しかし、問題は山積みだった。
「最大の懸案事項は、町の北側に密集した、ゾンビの群れだ」ディーンが厳しい表情で言った。「あれを放置しておけば、我々はこの大学から大きく外へ出ることはできない」
「そして我々の恩人、ダンカン氏。彼をあの地下シェルターから救出しなければならない」アーミテイジ教授がその言葉を引き継いだ。
どうやって、あの巨大な群れを排除、あるいは誘導するのか。群れの真っ只中にある、ダンカンのシェルターへ、どうやってたどり着くのか。
議論が白熱する中、見張りに立っていた学生の一人が、新たな、憂慮すべき情報を持ち込んできた。
「教授! ミスカトニック川が、かなり増水しています! 普段より明らかに水位が上がっています!」
川の増水。その一報は、彼らの計画に新たな、予測不能な変数をもたらした。
図書館の窓の外では、夕闇が急速に深まっていた。




