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ミスカトニック大学留学記  作者: 里見さと子


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31日目①狙撃

 博はまずダンカンに無線で連絡を取った。「教授たちは生きていた。図書館にいる」



『おお! そうか!』スピーカーから、ダンカンの心からの喜びの声が響いた。『で、どうする?』



「今から外の軍人ゾンビを片付ける。少し大きな音が出るかもしれない」



『はっ、派手にやれ! どうせ、 わしには聞こえんがな!』



 ダンカンからの力強い激励を受け、博はサラと共に、作戦の最終準備に取り掛かった。計画は、シンプルかつ原始的だ。軍人ゾンビの巡回ルート沿いにある、三階建ての建物の屋上から、重量物を落下させ、直撃させる。



 近隣の建物の瓦礫の中から、できるだけ大きく重いコンクリートブロックやレンガを、数時間かけて屋上まで運び上げた。それは、全身の筋肉が悲鳴をあげるほどの重労働だった。



 昼近く、準備は整った。サラは少し離れた建物の窓から、双眼鏡でターゲットの動きを監視する。博は屋上の縁に身を潜め、眼下の通りを見下ろしていた。



『……来たよ。一体目、角を曲がった』



 サラの冷静な声が、イヤホンから響く。博の額に、汗が滲む。一体目の軍人ゾンビが、ゆっくりと射程に入ってきた。心臓が、大きく脈打つ。



 あと五メートル、三メートル…。



「今だ」



 博は渾身の力を込めて、巨大なコンクリートブロックを屋上の縁から突き落とした。ヒュンという風切り音と共に、ブロックは落下していく。



しかし。



 ブロックは、ターゲットの一メートルほど手前のアスファルトに激突し、けたたましい音と共に砕け散った。軍人ゾンビは、すぐそばで起きた衝撃にも、何一つ反応を示さず、同じペースで歩き続けている。



「くそっ、外した……」



『大丈夫! 次が来る!』サラの声が、彼を励ます。



 数分後、二体目のターゲットが、同じルートをたどって現れた。博は一度、深く息を吸った。今度はタイミングを、わずかに早くする。



 彼はブロックを突き落とした。落下する塊から、彼は一瞬たりとも目を離さない。



 そして。



 今度は鈍く、湿った、骨と肉が砕ける音が響き渡った。ブロックは、軍人ゾンビのヘルメットと肩を直撃し、その巨体は、崩れ落ちるようにアスファルトに沈んだ。



「やった……」



 その一撃を皮切りに、博の攻撃の精度は驚くほど高くなった。一体、また一体と巡回してくる軍人ゾンビを、屋上からの死の鉄槌で確実に仕留めていく。最後の個体を片付けた時、太陽はほぼ真上にあった。



『……すごい、ヒロシ! 全部、やったよ!』



 サラの興奮した声を聞きながら、博はしばらくの間、周囲の安全を確認した。落下音に引き寄せられてくる、他の死者はいないか。だが、アーカムの南側は、不気味なほど静まり返っていた。



 安全を確信し、博は屋上から降りた。それからアーミテイジ教授と本格的な接触を果たすために、大学の東側の塀へと、まっすぐに堂々と歩き始めた。



 障害はもう何もない。

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