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ミスカトニック大学留学記  作者: 里見さと子


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30日目①アーカムの町で何があったのか?

 朝は張り詰めた期待感と共に訪れた。大学からの応答は、まだない。博は焦る気持ちを抑え、ダンカンとの定時連絡を行った。



『昨夜、大学の四方から手紙を投げ入れた。まだ、何の反応もない』



 博の報告に、ダンカンは、ふむ、と唸った。『まあ、そう焦るな。彼らがすぐに手紙を見つけられるとは限らん。それに、外に出ること自体が、危険な状況にあるのかもしれん』



 その言葉は、博を落ち着かせるための気遣いのように聞こえた。ダンカンは、ぶっきらぼうな口調の中に、不器用な優しさを隠しているようだった。



 会話の流れで、博はずっと気になっていたことを尋ねてみた。「ダンカンさん。セント・メアリー病院のことなんだが。あそこには、誰かがいた痕跡があった。頭を撃ち抜かれた死体とたくさんの薬莢が……あれも、あなたの仕業なのか?」



 無線の向こうで、ダンカンが、少し驚いたように息を飲むのが分かった。



『……病院か。いや、それは、わしじゃない。アーミテイジ教授たちだ』



 その答えは予想外のものだった。



『パンデミックが起きて、一週間ほど経った頃だったか』ダンカンは、過去の出来事を思い出すように、ゆっくりと語り始めた。『アーミテイジ教授から、連絡があった。病院に生存者のグループがいるのを発見した、と。医者や、看護師、それに患者たちだ。彼らを大学へ保護したいが、道中のゾンビが多すぎて、動けないでいる、と』



 その話は、博が病院で見た光景と完全に一致していた。



「それで、教授たちは、病院へ向かったのか」



『そうだ。教授のグループには、元軍人の腕の立つ男がいてな。彼が中心となって、病院へ突入し、中のゾンビを掃討した。お前さんが見たのは、その時の跡だろう』



 そして、ダンカンは自身の最大の見せ場について語った。



『教授たちが、病院の生存者を連れて、大学へ戻る。その移動を、安全に行うために、わしが、町のゾンビの注意を引いたのだ。このシェルターから、軍用の大音量スピーカーで、数時間にわたって音楽を流し続けた。町のほとんどの連中が、音に釣られて、北側へ、このわしの家の方へとやってきたというわけさ』



 すべてのピースが繋がった。病院の掃討作戦。北側へのゾンビ誘導。それらはすべて、生存者を救出するという、一つの大きな目的のために、連携して行われた作戦だったのだ。アーミテイジ教授のグループとダンカン。彼らはこの死の世界で、確かに英雄的な行為を成し遂げていた。



 しかし、彼らは今、沈黙している。博は無線を切り、再び大学の方角を、険しい表情で見つめた。



 彼らに一体何が起きたのか。謎は深まるばかりだった。

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