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ミスカトニック大学留学記  作者: 里見さと子


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27日目②推測

 リビングは再び作戦司令室の静けさを取り戻した。膠着状態を打破するためには、新たな情報が必要だった。博は壁に貼られた地図の前に立ち、腕を組んでいた。



「明日からは、もう少し積極的に動こうと思う」



 彼の言葉に、床に座って本を読んでいたサラが顔を上げた。



「これまでの探索は、この南側エリアに集中していた」博は、地図の、彼らが拠点としている川の南側を指でなぞった。「だがここには、あの軍人ゾンビがいる。それに、生存者の痕跡は、あのバツ印以外、見つかっていない」



 彼の指は、地図の中央を流れるミスカトニック川を渡り、町の北側へと移動した。



「この川の向こう側を、調べてみたい」



 川には、数本の橋がかかっている。もし、その橋を渡ることができれば、まだ誰も足を踏み入れていない、未知のエリアを探索することができる。



「北側には、何があるの?」サラが尋ねた。



「古い住宅街といくつかの商店。そして、町の外れには墓地があるくらいだ」博は、地図の情報を読み上げた。「大学のように大きな施設はない。あの軍人ゾンビの巡回ルートからも外れているようだし、ゾンビはそう多くない可能性が高い」



 それは推測だった。軍の目的が、大学のような重要拠点の確保や封鎖だったとすれば、彼らが川を越えた先に軍人を配置した可能性は低い。



「橋は渡れるかな……」サラが不安そうに呟いた。



「それも明日確かめる」博は地図上の最も西にある、小さな橋を指差した。「まずはこの橋からだ。ここなら、町の中心部からも、大学からも一番離れている。もし橋が落ちていたり、ゾンビで塞がれていたりしたら、また別の方法を考える」



 計画は決まった。



 未知のエリアへの探索。それは大きなリスクを伴う。しかし、このまま南側で、見えない敵に怯えながら時間を浪費するよりは、遥かに建設的だった。



 博は窓の外の闇を見つめた。ミスカトニック川の向こう岸。その闇の中に、この状況を打開する鍵が眠っているかもしれない。



 あるいは新たな脅威が、息を潜めているのかもしれない。

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