26日目①地図
軍人ゾンビの対処法について、博は明確な答えを出せないままだった。思考は行き詰まり、ただ時間だけが過ぎていく。このまま拠点に籠っていても、事態は好転しない。
「サラ、少し町を調べてくる」博はサラに無線機を渡すと、バールを手に家を出た。「郊外を重点的に見て回る。奴らがいないか、他に生存者の痕跡がないか」
「気をつけて」サラの声を背に、博は再びアーカムの静かな通りへと足を踏み入れた。
彼は町の中心部を避け、死者の姿がまばらな郊外の住宅地を、慎重に探索していった。ほとんどの家には、あの赤いバツ印が描かれている。印のない家にもいくつか侵入してみたが、食料や物資はほとんど手つかずのまま残されているだけだった。
ある二階建ての家の屋上に登ることができた。そこからはアーカムの町並みが、昨日までよりもさらに広く見渡せた。彼は双眼鏡を取り出し、ミスカトニック大学の方角にレンズを向けた。
大学の敷地は高い煉瓦の塀で囲まれており、その上部には鉄条網まで張られている。中の様子をうかがい知ることは、ほとんど不可能だった。門は固く閉ざされたままで、人の気配も、死者の気配も感じられない。
博はため息をついた。大学は、依然として厚い謎のベールに包まれたままだった。
彼は双眼鏡を町の通りへと戻した。そして、ただ漠然と眺めるのではなく、ある目的を持って、その光景を観察し始めた。
「サラ、地図のコピーはあるか」
『うん。どうしたの?』
「僕が言う場所を、地図に書き込んでくれ。まず、メインストリートの、教会前の交差点。そこに、横転したトラックが一台」
『わかった』
博は町を俯瞰しながら、乗り捨てられた車、倒れた街灯、瓦礫の山といった、道路上の障害物の位置を、一つ一つサラに伝えていった。それは、この町を移動する際の、安全なルートと危険な場所を把握するための、地道で、しかし不可欠な作業だった。
数時間後、彼は拠点に戻った。サラが書き込んだ地図には障害物が、びっしりと記されていた。
「これを見れば、どこが通りやすくて、どこが袋小路になっているか、一目でわかる」
軍人ゾンビへの直接的な対処法は見つからない。だが、この地図は、彼らから逃げ、彼らを避けるための、強力な武器になるはずだった。博は複雑な迷路と化したアーカムの地図を、静かに見つめていた。




