24日目③東棟、3階、302号室
東棟の中は、西棟よりもさらに濃い、死の匂いに満ちていた。博は、階段を使い、一階、そして二階と慎重にフロアを確認していった。しかし、そこに生きている者の気配はなかった。
ただ頭部を撃ち抜かれた死者の骸が、廊下や病室のあちこちに、無造作に転がっているだけだった。謎の生存者が通り過ぎた後、この場所には完全な静寂だけが残されたようだった。
三階。サラの父親がいるはずのフロア。階段を上りきった瞬間、博は息を飲んだ。ここが、この病院における、最も激しい戦場だった。
廊下の壁は銃弾の跡で蜂の巣のようになっており、床は乾いて黒くなった血でまだら模様を描いている。ひしゃげたストレッチャーや、倒れた点滴台が、バリケードのように積み上げられていた。その間には、これまでで最も多い数の、白衣や患者衣を着た死者たちが折り重なるようにして倒れていた。
この惨状の中心で、一体何が起きたのか。博はその答えを探すように、廊下の奥へと足を進めた。「301」「303」。ついにそのプレートを見つけた。「302」
ドアは半開きになっていた。彼はバールを構え、ゆっくりと中へ滑り込む。
病室の中は、廊下の喧騒の跡が嘘のように、静まり返っていた。窓から差し込む夕暮れの最後の光が、部屋を斜めに横切り、ベッドの上を照らし出している。
そのベッドの上に、二つの人影があった。一人は、患者衣を着た中年男性。もう一人は、その男に寄り添うように寝かされている、同年代の女性。サラの両親、マイケルとアンナに違いなかった。
二人の遺体は腐敗し、乾いていたが、どこか静かに眠っているかのようだった。そのこめかみには、それぞれ、小さく、致命的な銃創が残されていた。誰かが、彼らをその手で介錯したのだ。そして、その誰かは、二人の手を、そっと胸の上で組ませていた。それは、この惨劇の中で見せた、唯一の人間的な慈悲の証だった。
博は言葉を失い、その光景の前に立ち尽くした。壁際のサイドテーブルの上に、一枚の写真立てが置かれているのが目に入った。屈託なく笑うマイケルとアンナ。そして、二人の間に挟まれて、少しはにかんだように笑う、幼いサラの姿がそこにはあった。
彼はその写真立てを、そっと手に取った。次にアンナが持っていたと思われる小さなハンドバッグの中から、運転免許証を見つけ、それが確かにサラの母親のものであることを確認した。
これ以上、ここに留まる理由はない。
博は二人の安らかな顔に、心の中で別れを告げた。それから写真立てと母親のハンドバッグを手に、静かに病室を後にした。廊下に満ちる死の匂いが、やけに生々しく感じられた。




