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ミスカトニック大学留学記  作者: 里見さと子


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17日目②迂回

 検問所を焼却炉と化した穴から立ち上る黒煙をバックミラーに映しながら、博は電気自動車を静かに発進させた。道は開かれた。だが、その勝利に高揚感はなかった。鼻腔の奥にこびりついた悪臭と、ハンドルを握る手に残るスコップの感触が、彼が踏み越えた一線を、絶えず意識させていた。



 車はアーカムへと続く最後の直線道路を滑るように進んでいった。夕暮れの最後の光が西の空を茜色に染め、やがて夜の深い藍色へと塗り替えられていく。ヘッドライトが、前方の闇を二筋の白い光で切り裂いた。その光がこの先のトンネルを示す標識を照らし出した。巨大な丘の側面をくり抜いたトンネル。それを抜ければ、アーカムはすぐそこだ。



 しかし、目的地を目前にして、彼らの車は再び行く手を阻まれた。



 トンネルの入り口は、おびただしい量の岩と土砂で、完全に塞がれていた。それは、長年の風雨による自然な崩落ではなかった。岩盤には、巨大な力が加わったことを示す、生々しい亀裂が走り、いくつかのコンクリートの破片は、内側からの爆発で吹き飛ばされたかのように、不自然な角度で散乱している。



「……嘘だろ」



 博の口から、かすれた声が漏れた。誰かが意図的にこのトンネルを破壊したのだ。アーカムへ入る者を拒むために。あるいは、アーカムから何かを外へ出さないために。どちらにせよ、この道は完全に絶たれた。



 彼はパワーボタンを押し込み、システムの電源を落とした。車内に重い沈黙が満ちた。ヘッドライトの光だけが、絶望的な光景を静かに照らし出している。博は地図を取り出し、小さなライトで照らした。



「どうしよう、ヒロシ……」サラが、不安そうな声で尋ねた。



「迂回するしかない」博は、地図の上を指でなぞった。「このトンネルを避けて、丘の向こう側へ抜ける道がある。だが、かなり細い山道だ」



 その道は地図上では一本の細い線として、鬱蒼とした森の中を蛇行していた。そして、その道の途中には、小さな集落を示す印があった。



「ダンウィッチ……?」サラが、その古風な響きの地名を読み上げた。「聞いたことない村だね」



「僕もだ」博は頷いた。地図のその場所だけ、印刷が煤けたように不自然に歪んでいる気がした。「だが、他に道はない。この道を通って、丘を越え、アーカムの南側へ出るしかない」



 選択肢は、一つだけだった。危険な山道を進むか、あるいは、ここで引き返すか。引き返した先に、何もないことは分かりきっていた。



 博は再びパワーボタンを押し込み駆動系を始動させた。静かなモーター音が、決意の音のように響く。彼はハンドルを切り、トンネルに背を向けると、地図が示す、さらに暗く、深い森へと続く脇道へと車を進めた。ヘッドライトの光が、行く手の闇を心細げに照らし出す。その先にあるダンウィッチという未知の村が、彼らに何をもたらすのか、知る由もなかった。

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