76話 慰労会
奥のVIPルームにいたのは
・アナスタシアファミリーの無精ひげのボスニコライとピーター。
「話しましたか?」
「私は話してません。でもヴァンペルトさんがこの店知ってるのはNさんも知ってるでしょ。自分のせいですよ」
・ペドロファミリーの女ボスブレンダとアニー、ヴァンペルト、そして狼人間
「自己紹介が遅れたな。キンブルだ」
「あ、どうも。Nです」
・西の組織の幹部とキャッスル
「今日は助かったよ。貸した銃はいつ返してもらえる」
「いろいろあって紛失しました。今回の報酬で穴埋めしといてください」
・東の幹部、そしてギルドの若手幹部
「君がNさんですか。活躍は聞いていますよ」
「やめてください。目立ちたくないんです」
といったなかなかの顔ぶれ。
オークとドワーフは関わりたくないと部屋の中にNを放り込み「注文はウェイトレスが取りに来ますので」と一応の挨拶をしたうえで部屋から出ていった。
「それではまぁ皆さん、とりあえず本日はご苦労様でした」
それぞれに飲み物がいきわたったところで幹部がそんな挨拶をし乾杯。
今日の監査の慰労会といった具合の挨拶だが
「だったらこんなところでやりませんよね」
「なぜですか?」
Nのボヤキを聞いたアニーがそんな言葉をかける。
彼女は紅茶を貰い、酒のつまみとして出されている軽食を端から順に食べている。今は一口大のサンドイッチを一つパクリ
「そりゃぁ踊って騒ぐにはいい店でしょうが、ギルドと幹部の人たちが顔をそろえて慰労会やるほど上品な店ではないでしょう」
「アニーちゃん、口にソースついてるわよ。ほら、飲まないの?」
一人だけ水を飲んでいるNに対して、ヴァンペルトは酒を勧める。
「結構です、それになぁ」
酒を断りながら面々を見ると一つだけ思いつく関係性がある。
「考えすぎかなぁ」
「そりゃたぶんあってるぜ」
「そうだろうな」
「そうですよ。僕らから話は振れませんけど、頑張ってください。できる限りの応援はしますから」
ビールを飲みながらピーターとキャッスル、キンブルが言った。
今日の査察に協力した慰労会という事で上司に呼ばれたので参加はしているが、その上司の手前、泥酔というほどは飲めないのがこの下っ端の面々。
そもそもそれも建前ということは、すでに知っている。
知り合いであったり命の恩人という関係性である以上Nを助けたいのは山々だが、彼らは組織人。
Nはどこにも所属していない単騎勢。上司の思惑を聞かず助けるというわけにはいかにない。
「単騎も気楽じゃないですね。どうも」
上司は上司で、まぁ常識とか社会的地位とかそういうものがあるので、泥酔するほど酒は飲まない。
腹の探り合い、情報収集、世間話、業界のスキャンダル、そんな話をしてほどほどに酔いながら楽しむ。
「さてと、それじゃ、本題に入ろうか」




