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71話 ゴブリン

「お疲れ」


 今回の調査に協力した自治会の面々は突入の前に現場から離れている。

 非武装民が査察の現場にいてもらっては困る。

 なので避難が必要な周辺住人と同じように町の一角の広場に避難し、安全が確認され次第解散という計画。


「あ、オーナー。店のほうは大丈夫ですか」

「大体用意は済んだ。俺の店だぞ。一人でも用意くらいできる」

 自治会の応援という事で本来は寝ている昼間から駆り出された吸血鬼は、自分の店のオーナーであるメッサ―がそこにふらりと現れたのを確認する。

 彼には店の開店準備を頼んだはずだ。


「まぁあそこのパン屋が毎週のごとく遅れるんで店のほうに苦情をつけようとおもってな。近いんで寄ったんだ」

 店の手配や管理は自分が主にやっているが、そういった外周りやトラブル担当はオーナーのほうが得意。

 不思議な魅力があるし、妙なコネがある。

「あら、あなたは」

「どうも、ジェシカさん」

 吸血鬼と立ち話をしていたブレンダンの酒場の店主であるジェシカはメッサ―に簡単な挨拶をする。

 彼女の店も夜が中心。自治会のイベントで呼び出しをされると断りにくい。

「なんだお前。何しに来たんだ」

「ひどいな。まぁ自治会の仕事なんかしたことないが」

 よく迷子になるひげ面のドワーフ店主も一緒だ。

 協力をするべきといった手前、来ないわけにはいかない。しかし道に迷うと困るので見知った吸血鬼の後ろをついて回っている。


「たしかにあそこのパン屋、最近納品が遅れ気味ですけど解決しそうですか」

「どうだろうなぁ。手伝ってた息子夫婦がなんとかという病気で倒れて人手が足らないらしい。人を探しているがいい人がいない、うちはよくしてくれるお得意様だから契約終了日までどうにか配達してるのが実情でほかの所は断ってるところもある、こんな状況だから不満なら契約を解約してもらうしかないといわれたよ。そう言われちゃこっちも文句はつけにくいさ」

「それは大変ね」

 ジェシカ氏も飲食店オーナーという立場。人手不足もわかるし毎日の配達が遅れるのが困るのもわかる。

「なら当分は他から仕入れたらどうだ。そこの店の負担も減るしいいだろう」

「パン屋の多くは朝方から昼間に焼いて売るだろ。うちみたいな夜が本番の店に合わせて焼きたてのパンを焼いてくれる店ってのがなかなかないんだよ」

「ナイトクラブなのにそこまでこだわるの」

 ドワーフの言葉に事情を話すメッサ―と、その言葉に驚くジェシカ。

 彼女の店も夜がメインではあるが、そこまでこだわってはいない。採算が合わないので。

「うちはこう見えても高級志向なんですよ」

「確かにお前のところは酒一杯でも結構高いからな」

「そこまで高くはないと思うんだが」


 一杯頼めば店で椅子を占領して何時間カードやってても文句言われない。

 出す飯も確かに高いが基本踊りの間に軽く食べられる軽食が中心だから金額自体はそこまで高くない。

 それにうまいのだ。少なくとも買った客から割高と文句を言われたことはない。

 遊びや出会い、そして遊興を求めてくる客にとっては安上がりな店だと思っている。


「どっかにいい人がいれば紹介してやるんだが、まぁいい。それについては店に帰ってから相談しよう。でこれは差し入れだ。まぁみんなで食べてください」

 メッサ―は話を切り上げてバスケットに入ったパンの詰め合わせを吸血鬼に渡す。

 ついでにと買ってきた。

「わかりました。ありがとうございます」

「あら、ありがとう」

「すまんね」

 さっきまでの態度が随分と柔らかくなった三人。

 商売人だ。現金な生き物。



「メッサ―さんって誰ですかね」

 その広場にふらりと現れたもう一人の客。

 みど色の肌、とんがった耳、ゴブリンと呼ばれる種族。

 広場に避難していた昼間の人間たちはあまりかかわりたくないという顔。

 ゴブリンもかかわりたくなさそうにその光景をみて、大声でもう一回呼びかけた。

「俺だ」

「あぁ、あんたですか、※※※※って知ってますか。LAXEとかいうナイトクラブで働いてるとか」

 聞き取れない言葉発するゴブリンにドワーフとジェシカは顔を合わせる。

 知らない?知らないなぁ?

「名前ですよ。ゴブリンの名前。ゴブリン以外は聞き取れないし発音もできない」

 その二人を見た吸血鬼はそう教える。

「うちの店で働いてるやつだろう。先に帰れといったはずだが。それで」

「はぁ、そいつからの言伝ですが、馬鹿でっかいモンスターがこっちに向かってるのをみたって話です。早く逃げてくださいってなことをたぶんここにいるあんたに伝えるようにっていわれましてね。街中でモンスターなんかいるなんて馬鹿な話ですけど、ほかの連中も似たようなこと話してるんっすよ。なんなんっすか?事情わかります?」

 嘘か冗談を人から伝えるように頼まれた人間のような口ぶりでゴブリンは言伝を話した。

 その一言で、あまりゴブリンとかかわりたくないという顔をしていた住民たちの顔色が変わった。


「ありがとう。チップってわけじゃないが手間賃ってことでこのパンをもらってくれ。それとこの界隈のゴブリンもさっさと逃げろって伝えた方がいい。そりゃたぶんほんとうのことだ」

「本当にモンスターがいるってことですか」

「そうさ。役人や自治会連中は君らに伝えてなかったようだな」

「聞いてませんよ。まったく。人間はいつもこれだ」

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