41話 朝ウォエ
「きもじわるい」
ショッキングピンクの女が起きた時の第一声はこれだ。
「うるせぇ」
隣の部屋にいたメッサーはそう怒鳴り返す。
「ちょっと、私の貞節」
「ゲーゲー吐いて起きねぇ女相手にやれるか糞が」
ここはメッサーの家、LAXEの二階のゲストルームだ。
Nが寝てた部屋である。
「お茶どうぞ」
怒鳴りあい聞いていても仕方ない、ということでNが入れたお茶を持ってきた。
「あ、ども」
ショッキングピンクな服はなんか真面目そうなパンツスーツになっていた。
「誰が」
「店の女共だよ」
「ちょ、そこまで私の事嫌い?あなたなら酔った女を云々くらいするでしょ」
「嫌い。大いに嫌い。その顔と趣味が気に入らん。そして店のトイレの床にげろ吐く女は碌な女じゃない」
店の女共が着替えをさせている間に人手が足らねぇとトイレ掃除をしたのはオーナーである。
それで好けというほうがおかしい。
「常連だからここまでしてやったが、一見だったら店の外に放り出すぞ。服は洗って返せ。お前の服はファミリーに送ってやる」
「いやだもー野蛮人」
「黙れ。お前そこらの男なら逆に襲うくらいだろうが」
「あの、とりあえず、朝ごはんたべませんか」
そういって二人を部屋の台所に連れてくN。
並んでいたのはトーストと卵焼きとベーコンという極めて普通な朝食だった。
「オーナーが作ったの?めずらしー」
「俺は寝た女にしか作らん」
「それ、人としてどうかって部類の発言よ。外じゃ言わない方がいいと思うわ」
「いきなりマジトーンになるなよ」
「まぁまぁ」
水場の隣に設置されているちょっとした石炭ストーブの火の中ににパン焼き用の器具を差し込みながらNは仲裁する。
上のフライパンには店の在庫の卵とベーコン。こういうことをすると店長は文句をいうが、店長は店長であまった果物をかっぱらって女への土産にしていることをメッサーは知ってる。
「少し焦げっちゃいました。ごめんさい」
火の調整をしながら焼け具合をみるというのは結構難しいが、Nは見事にこなした。
器具の角度の調整を間違え端っこが少し焦げてるがまぁご愛嬌の部類。
「すごーい。私より上手よ。あなた何やってるの」
「Nです。冒険者やってます」
「へぇぇ」
女はじろじろとNの顔を見る。
「なんですか」
「イケメンよね。こんど一緒に遊ばない」
「呆れた」
「どう考えても性格の不一致なのでお断りします」
さすがにNもここまで濃ゆい人と付き合う能力はない。
「オーナーさん。馬の調達してきました。表で待たせてあります」
食べ終わった頃にピーターが部屋に入ってきた。
結局彼もここに泊ってしまった。まぁ仲間には遊んでくるとは言ってあるから大丈夫だろう。泊りだったら夜遊びから大人の遊びをしてると思うだけだ。
「ご苦労さん。釣りは取っておけ」
「こんなにももらえませんよ」
「迷惑賃だよ」
実際昨晩はこの女を下からベットに運ばせたり朝には馬を調達させに行かせたりで、迷惑かけっぱなしである。
「食ったなら帰れよ。朝帰りなんざいつものことっていっても心配するひともいるだろう」
「連れない。でもありがと」
そういって女はメッサーのほっぺにキスを
「酒くせぇから顔を近づけるな」
しようとしたが拒否される。
「私も帰ります」
「俺も帰ります。さすがにファミリーに戻らねぇと叱られそうだ」
「そう?じゃぁ一緒に帰りましょ。馬車なんでしょ?私、ちょっとよりたいところがあるから、そこで下してくれたらあとは二人で乗って帰ればいいじゃない。どうせ私のお金じゃないし」
「お前なぁ」
図々しい物いいにもはやあきれてしまって怒ることもできないメッサー。
二人も強烈なキャラに呆れてしまったが、断る理由もないと相乗りで帰ることにした。
女が御者に行き先を指示をしたあと三人は馬車に乗り込む。
「ふぃぃ。気持ち悪い」
「大丈夫ですか」
「大丈夫大丈夫。いつものことよ」
そういってけらけら笑う。
「そっちの人は冒険者って聞いたけど、あなたも冒険者?」
「えぇ。アナシタシアファミリーに一応所属してるピーターです」
「ふーん」
女はピーターを軽く見分して。
「ふぃぃぃ」
また溜息。
「アナシタシアファミリーっていうと、ついこの間の、ほら、なんだっけ。ダンジョン探索。すごいのたいじするって」
「あぁ、ギルドの仕事ですか」
「あれにも参加したの?結構話題になってたわよ。イレギュラーな怪物退治大成功。これぞ戦鬼とアナシタシアファミリーのなんとやらって」
確かに瓦版みたいなものにのってた。
「えぇまぁ。下っ端の下っ端みたいなもんで威張れるもんじゃありませんが」
「ふぅぅん。あなたはどうなの?」
「まぁ僕も参加はさせてもらいました。同じく下っ端ですけどね」
「やっぱり」
やっぱり?
「かっこいい男は強いの。これは私の持論よ!だからあなたはすごく強い!そっちの人は微妙に強い!!だからさんかした!!どうかしら」
「どうかしらってねぇ」
「前はおちんちんの大きさだったけど男女両方から辞めろ下品だって言われたから変えたのよ」
「それはまぁそうでしょうね」
「女の子ならおっぱいの大きさで」
「それも辞めたほうが」
「小さくても強い子はつよいもんねぇ。やっぱ大きいほうが好き?私のはまぁまぁ大きいわよ」
「そうじゃなくて」
そんな愚にもつかない下ネタを延々と女は話続けるので、二人は適当な相槌を打ちながら横に流す羽目になった。




