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40話 不思議な店

「それで頼み事ってなんだ。厄介なことじゃないだろう」

「いやその、追われているんです。隠れる場所ありませんか」

「誰に?」

「えっと、ダンジョンで助けた女性」

「なんで?」

「わかりません。ただどこに行ってももその話がでてて困ってるんです。指名手配状態でダンジョンにもいけない。どこでも私を探してるって話が出回ってて」

「じゃぁお前からその女に会いに行けばいいじゃねぇか」

 メッサーの至極当たり前な返答。

「助けて頂きありがとうございました。ってだけだろ。いやいやどうもお気になさらずに、って返して終わりじゃねぇか。相手が美人で口説きたいならくどきゃいい。付きまとわれるのが迷惑ってならギルドに相談しろ。ここは酒を飲んで騒ぐ場所で人をかくまう場所じゃねぇ。女をデートに誘いたい、人と会うから場所を貸してくれってなら相談にのってもいいがそんな話はしらんわ」

 至極当たり前な話である。むしろデートなら相談に乗ってやるというのはかなり譲歩している。

「そんなぁ、もうここしか頼るところがないんですよ」

「知らん知らん。教会にでもいけ」

「行きましたがそこまで手配が行ってました。家に行ったら大家も知ってた。昨日はピーターさん所の兄貴の病室で泊ったんですよ。ニコライファミリーはもう言わずもがなってことで」

 そんな話をしているとバーテンが酒を持ってきた。

「頼んでないぞ」

「僕がさっき頼みました」

 乾燥させた果物を使ったオリジナルなカクテルらしい。

 よくわからないが頼んでみたが

「妙なな味ですが意外といけますねこれ」

一口飲んでそう答える。ここの酒は高いがうまい。

「ありがとうございます」

 渡されたチップの額に眉で喜びを表しながらバーテンはそういって離れていく。

 Nが彼の足元から変な音がするとカウンターの向こうを覗いてみたら、というか足元はタコだ。タコの足をしている。


「ここは変わったお店ですね」

 頼んでも無理だろう、と悟って雑談を切り出す。

「人間の従業員の方がすくないんじゃないんですか」

「気になるか」

 メッサーの端的な質問。

 Nはその答えを探すために店を見回す。

 歌手は変わっていつものアップテンポな曲になっていた。

 老人や初心者たちは退場、上級者とそれにつれられた無謀な人間の登場だ。

 

 その間を歩き酒を運んだり注文を取ったり、いざこざがないか見張る人間ではない者たち。

 客によっては顔なじみなのか店員と雑談したりしている。例えばあそこでは犬の耳を持つウェイターの女を口説いている。

 いや、酔っ払いが絡んでるだけだなあれ

「大丈夫ですかあの人」

「あぁ」

 そういってる間にオークと、あれはドワーフか、の二人組が現れて客を摘まみだす。

 周りの客は冷やかす言葉をかけるが、それもすぐに終わり。音楽に飲まれてもとに戻る。


「気にはなりますが、不思議ですね。ここだとそんな常識を気にするほうがおかしく思える。だからいいんでしょうか。不思議ですね」

「それでいい。ここはそういう店だ」


 そして、まぁ何を話すわけでもないと二人は雑談していたが、ピーターが

「オナーさん。この人吐きそうだって。あ、ちょっとここではかんといてください。トイレどこ!」

と酔ったまま踊っていたショッキングピンクの女を連れて戻ってきたので打ち切られた。

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