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38話 ×野生のモンスター〇野良モンスター

 ピーター的には非常にまずい。ボスに嘘つこうって算段してたのだ。

 キャッスル的にも微妙にまずい。ボスじゃないとはいえ相手は大物。

「ここはお前が切り抜けろよ」

 なので丸投げ、だが考えてみるとNが当事者だ。

 それが当然である。


「事情か方法を聞かせてもらおう」

「どっちもお答えしかねます」

「それが通ると思うか」

「思いませんね」

 新興とはいえこういった場面で先人切るくらいには業界の大物。

 それに生意気な口を聞く新人。

 はたから見ると非常に分が悪いというか、ピーターが同じことやったら叩き切られている。

「でも通るでしょう。私はファミリーにも東西にも属さない冒険者業界の下のほうにこびり付くウジ虫のようなもんだ。あなたの命令を聞く筋合いはない。ギルドからの指示ならいやいや聞きますが、ギルドはダンジョン内出来事を証明する方法なんか持ってない。信じないでしょう。だから私は独り身だ」

 しかしここは独り身の良さ。上司というものがないから命令が飛ぶことはない。

「生意気な口を聞く」

 ニコライとしても次の一手を打ち出したい。

 この実力。仲間に居れればファミリーは躍進するだろう。

 逆にどこかのファミリーに入れば力関係は崩れる。

 共闘関係でありライバルなのがファミリー同士の関係だ。それはできれば避けたい。

「ただ、なるべく多くの人と友好的に居たいとは思ってます。そこで、一つ、面白い報告をさせてください。内容が面白ければ、納得していただくということでどうですか」


「ボス、そちらの方は」

「聞くな。まだな」

 建物から出てきた4人を見つけた副官が聞く。

「それで」

「腕、残ってますか」

「あるか?」

「はぁ、持ってこい」

 副官はファミリーに命令。

 ギルドに提出するために袋詰めされた腕を持ってこさせる。

「こちらです」

 それを受け取ったNは袋を破り(あ、ちょっと)腕を地面に転がす。

「剣を貸してください」

「あ、はい」

 よくわからないがピーターは腰の剣を抜いて渡す。

 切れ味はまぁまぁだと個人的に思っている一品。

 その剣をふるって、怪物の指を切り落とす。

 

「ちょっと何やってるんですか」

 副官は止めにはいる。討伐の証拠としてギルドに提出するのだ。

 ニコライは副官を止める。明確に目的がある一撃。

 実際そうだ。Nは切り落とした指を取り上げる。

 そして切り落とした指の骨を見る。

「やっぱりだ。見てください」

 そういってニコライ達に指の断面を見せた。

「血が出ない。死体でも垂れるくらいはするだろう」

 そういってみんなで指の断面を見る。

 骨らしきものは通っているが

「これ、鉄じゃありませんか。骨じゃない」

 ピーターが真っ先に気づいた。

「鉄の骨を持つ怪物とかおっかねぇな」

「そんなこと、あるんでしょうか」

 キャッスルとほかの隊員はそんなコメント。

「そんなのあるわけねぇだろバカ」

 ニコライは突っ込むが、じゃぁなんだと言われるとこまる。

「ボルトの細工がしてあるでしょう。マジックアイテムで作る代用指ですよ。あの剣士さんの一撃をこれで受け止めていた」


 Nがいう代用指というのは、義指の強化版だ。

 指を粉砕骨折し再建ができない場合、指を切り落としてしまった場合などに指につなげる。

 マジックアイテムで神経とつなげることで、実際の指とほぼ変わらない動きをする一品。ただしかなり高い。庶民どころか金持ちだって躊躇する値段。


「確かにそう見えます」

 ここにいる中でも医療技術に詳しい魔法使いの女がそういった。


 しかしこの指、冒険者は意外と、多くはないがまぁまぁみる程度には、ユーザーが多い。商売柄指はよく飛ぶし、鉄製の強い指があれば命が助かることもある。

 このモンスターだってそうだった。剣士の一撃を止める防具の役割を果たした。

 それにダンジョンに潜れば金は稼げる。


「でもおかしい。おかしいです。誰がダンジョンのモンスターなんかに施術するんですか。誰かのペットだとでもいうのですか。それにやるとしてもダンジョンの中じゃそんな施術はできませんよ。街でも道具が整ってる場所じゃなきゃ無理です」

「それは断言できませんが、そういうことなんじゃないんですか」

 Nはその疑問に答えながら、副官から袋を受け取りその中に指をいれた。

「裏山に犬を捨てるならわかるが、ダンジョンにモンスターをすてるとは」

 キャッスルはNが言いたいことに気づく。

 それならイレギュラーな事態の説明もつく。この階にいるはずがない怪物がどこにいるか。それはよそから人為的に持ち込まれたのだ。

「厄介なことになった」

 しかしここは裏山とは訳が違う。ニコライはその点にいち早く気づく。

 ここは冒険者しか入れないダンジョン。しかもこんな大物を持ち込むなら、一人や二人じゃない。複数のパーティーがあつまるファミリー規模。

 そしてどこから持ち込んだ。下か?いや違う。ダンジョン内で施術はできない。

 そうなると考えられるのはヘルファイヤー。地獄の炎と呼ばれるわれらの街。

「このことは一切外に漏らすな会話もするな。この一件について俺の一存で箝口令を敷かせてもらう。命令に従わなければ連帯責任で全員叩ききる。いいな」

「了解」

 どこかのファミリーがモンスターを飼育している、ということに気づいた者も気づかなかった者もボスの剣幕に承知した。

「ご満足していただけたようでよかった」

 Nはそういって袋にサイン。

本日はここまでで

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