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35話 違う

「なぜこない」

 1チームを残して斥候が全員集まった。

 逆に言えば1チーム戻ってきていない。

 ペドロファミリー。冒険者業界きってのバトルジャンキーども。実力はあるが、そういった人間は往々にして痛い目にあう。

「ここの石は音を吸います。もしかしてここまで聞こえないだけで、手を出してるんじゃないでしょうか」


 先に「レンガらしきもの」といったのはレンガじゃないから。ここの石は特殊で音を吸収してしまう。

 だから最悪の場合壁の一つ向こう、普通でも3つも建物を挟めば戦って悲鳴を上げても聞こえない。なんてことがざらに起こる。

 だから慎重にならざる得ないというのもある。しかし斥候にでたのは単独で身を守れる精鋭達。5階層だって来たことある人間だけを選んだ。そのくらい知ってるはず。


「無茶はするなっていわなきゃわからん連中じゃないと思ったから斥候に選んだんだがな」

 ニコライの嘆き。西の幹部と東の幹部も同じ感想。

 どれだけ強くてもファミリーを一つつぶした怪物相手に数人で戦えるわけがない。


「うぉぉぉい。たすけて。はやく助けて。まだのこってるぅぅ」


 そこに飛び込んで来たピーターとキャッスル。


 全力で突っ走てきたピーターと、後ろに注意しながら走ってきたキャッスル。

 ドワーフは足が遅いからついてくのがやっと。ピーターの肩の上にいる二人は

「うぉぉぉろろろろ」

 過労に戦闘ダメージを受けた体を揺さぶられ続けた二人は仲良くげろげろげろ。


「どうしたんだ」

「助けてください。まだ人が残ってるんです」

「戦鬼がやりあってる。助けようがねぇからこいつらだけ連れてきた」

「おい、来い」

 ニコライの判断は早い。

 忠実に命令を聞き実力がわかるアナシタシアファミリー傘下の精鋭だけ連れて行く。数で勝負は無理だが、時間稼ぎくらいできるだろう。

 戦鬼が生きてればの話だが。

「その3人を上に」

「了解」

「数が少なくないか。西から出そう」

「いえ、担いで逃げるだけなら少ないほうがいい」

 勝てるわけないが死体担いで逃げるくらいはできるだろう。

「無理なら見捨てろ。馬鹿を助ける義理はねぇ」

「わかってます。行くぞ」

「あんないしやす。仲間が残ってるんで」

「俺もついてきます」



 こっちです。

 こっち。こりゃひでぇ。戦鬼がやったのか。

 知るかとりあえず本人を探せ。

「あ、いた!」

「え」

「戦鬼。名前いえるか。名前。自分の名前だ」

「アニー。ペドロファミリーのアニー」

「そんな名前だっけか?大丈夫っぽいです。おいこっちだって」

「はい。もう大丈夫ですよ」

「あれ」

「仲間は助かりましたよ。あなたのおかげです」


 違う。


 戦鬼と呼ばれる少女は否定したつもりだったが、しっかりと否定できていたか。

 記憶が定かではない。そのまま意識を失ったからだ

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