33話 テンペランス
「戦鬼の所か。まじかよ。むちゃしてんじゃねぇぞ」
キャッスルは戦闘を遠目で見ながらそう嘆いた。
「あいつらでもかてねぇのか。どうしろってんだ糞が」
建物の影にいるおかげで気づかれないが、かといって奇襲でどうにかなる相手ではない。
「どうしましょう」
「見捨てて逃げるわけにも行かねぇ。糞。どうする」
嘆いている間にも戦っている。
ドワーフが吹き飛ばされた。
「奇襲を仕掛けます」
「どうやってだ。あいつの骨にこんなライフルの銃弾なんか通じねぇぞ」
「私も無理です」
二人は無能ではないが、それにしてもすごい、といえるわけではないのだ。
普通。大規模パーティーの一員として討伐に参加するなら勝てるかもしれない。しかしこの3人じゃむりだ。
しかしこの男、この男は違う。
「次、相手の動きが止まったら眼を狙ってください」
「眼か。動きが止まればいけるかもレベルだぞ」
眼に骨はない。当たれば確実に効く。
「いいんです。顔に叩きつければ気にして止めるでしょう。動きが止まったら4人を連れて引いてください。私が足止めします」
「Nさん、どうにかできるんですか」
「できるからいってるんです。あとあそこの弓使いはもう死んでる。捨てて行ってください」
もうこうなってはこの男にかけるしかない。
「次相手の動きが止まり次第どんな状態でもぶち込む。いいな。動き回ってちゃあたらん。ぶち込んだらおれは逃げる」
「あぁもう、了解」
そして3人は配置につく。
そして破裂音。
モンスターの悲鳴。
キャッスルはうまい物で一発で眼に鉛の玉を叩き込んだようだ。
「いまです。逃げますよ」
「誰」
「いいから」
そういって狼人間とドワーフを引きずる。
「まって」
「あぁもう。急いで。そっちはたのみましたよ!!」
魔法使いの女と怪我を負った狼男の動きが遅いと見ると、コーヒーの袋でも担ぐかのように腰から抱え上げて一目散に逃げ出した。
この男、死にかけの兄弟を二人担いでダンジョンを駆け抜けたのである。見た目によらず怪力だ。
「何」
誰かの支援。
形勢は逆転したのか。仲間は。遠ざかる足音。
そして八つ当たりのように拳を振り下す怪物。
剣で受けきれるか。
無理だ。きれいに折れている。こんなことに気づかないとは情けない。
肩に一撃。激痛。地面に叩き込まれる。
そして振り上げられた拳。
「次は私の番ね」
拳の次がどうなるかなどわかっている。でも夢をみたい。
しかしこれでいいのだ。夢は寝てから見ればいい。
「テンペランス」
夢から目覚めさせる爆発音。




