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特別編 「たまには“奥さん”お休みします ― 女3人、熱海温泉旅情」


――恋も仕事も家のことも、いったん置いて。

今日は、女同士の“秘密の休日”を。



春の終わり。

結城ほのかのスマホに届いた、あるグループLINEの通知。


【From 美琴】

「今度の週末、リフレッシュしない? 温泉、予約しといた♪」


【詩織】

「“女子だけ”って条件付きだけど、どうする? 奥さん?」


【From ほのか】

「……行きます。荷造り、始めます。笑」


こうして――

女3人の“極秘温泉旅行 in 熱海”が、静かに始まった。



■Scene:熱海駅前


「さすが温泉街、駅前からもう硫黄の香りがする……!」


「ていうか、観光客多い! 変装してきてよかったね」


ほのかはシンプルなロングコートに、キャップとサングラス。

普段よりも地味めな格好にしていたが、それでも雰囲気は隠しきれない。


「芸能人オーラ消せてないからね、ほのかちゃん」


「いいの、今日は私“人妻モードオフ”だから」


3人は笑いながら、事前に予約していた旅館へ向かう。



■Scene:旅館・客室にて


案内されたのは、オーシャンビューの和モダン客室。

目の前に広がるのは、熱海の青い海と、遠くに浮かぶ初島の影。


「うわぁ……最高……」


「ねえ、布団飛ばして寝転がっていい? 童心に帰りたい」


「えっ、やろうやろう」


ごろごろ、バサバサ――

大人女子たちのはしゃぎっぷりに、仲居さんも笑っていた。



■Scene:露天風呂にて


夜。


薄く湯気が立つ露天風呂に、3人のシルエットが浮かぶ。


「はぁぁ……これ、全身の疲れ吹っ飛ぶやつだ……」


「わかる。肩から首から……溶けそう」


「でも仕事で張りつめてる時のほのかちゃんも、けっこうカッコいいよ?」


「えっ、見てたの?」


「うん。舞台挨拶のときとかね。私たち、観客席で“うちの妹よ”って顔してたもん」


「……嬉しい。でも、ちょっと照れる」


湯船の縁にあごを乗せて、3人はしばらく、無言のまま夜空を仰いだ。


「……ねえ、今日だけは“妻”とか“姉”とか忘れてさ。

 ただの“女の子3人”としていられるの、めっちゃ尊くない?」


「尊い」


「尊いねぇ。もう1泊したくなる」



■Scene:夜のお部屋で女子会


浴衣に着替えた3人は、地元の海鮮やフルーツで晩酌。


「そういえば、悠人は?」


「ちゃんとお留守番してるよ。

 “姉ちゃんたちに任せます”ってLINE来た。おとなしく仕事してるって」


「ふふっ、なんか可愛いじゃん」


「でしょ?……って、褒めてほしいの悠人じゃなくて、私だけどね?」


「はいはい、“かわいい奥さん”だよ」


「ありがと」


3人は笑って、またひと口ずつお酒を飲んだ。


「……本音言うとね、私、“姉”ってポジションでずっと強くいなきゃって思ってたの」


「私も、“奥さん”って役割を意識しすぎて、たまに息詰まりそうになるよ」


「じゃあ今日は、肩書き全部外して、

 “結城ほのか・神谷美琴・神谷詩織”として語り合おうか」


「いいね、それ」


「……改めて、出会ってくれてありがとう。妹になってくれて、ありがとう」


「こちらこそ。お姉さんになってくれて、ありがとう」



その夜――

ほのかは旅館のベッドの中で、スマホを手にした。


【From ほのか】


「今日は3人で熱海です。温泉入って、いっぱい笑いました。

でも、やっぱり帰ったらあなたの隣がいいな。

おやすみなさい、悠人さん。」


画面越しの“既読”がすぐについたあと、

短く返ってきた一行。


【From 悠人】

「おかえりを言える日が、楽しみです」


ほのかは、枕をぎゅっと抱きしめて、目を閉じた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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