特別編「声の舞台、想いの席に――君がいるという奇跡」
――結婚していることは、まだ秘密。けれど、心は誰よりも隣にいた。
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都内・某イベントホール。
結城ほのかがメインキャストを務める最新アニメの、先行上映&トークイベントが開催された。
大型スクリーンの上映後、登壇者として現れるキャスト陣。
その中に、主演声優・結城ほのかの姿もあった。
満席の会場。
その中――関係者席に並んで座っている4人の姿があった。
悠人、美琴、詩織――そしてほのかのマネージャー・古澤。
周囲には「声優さんの友人です」とだけ伝えていた。
結婚していることも、家族であることも、今はまだ**“極秘”**のまま。
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「わあ、本当に満員ね……」
「悠人、隣でバレないように顔作ってなさいよ」
「姉さんたちこそ、変装くらいしてよ……」
「こっちは“関係者の女友達”って体だから!」
ほのかの登壇直前、関係者席はややざわついていた。
だが登壇の瞬間、照明が当たり、ほのかが舞台に現れると――
その空気は、ぴたりと静まる。
「こんにちは。主演の、結城ほのかです」
凛とした声。
姿勢、所作、表情――すべてが“プロの顔”になっていた。
悠人はその姿を見ながら、思った。
(……やっぱり、この人は“憧れ”のまま、ずっと変わらない)
(それでも――今、俺の隣にいて、俺の名前を知ってくれてる)
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トークパートの途中、司会者から質問が飛ぶ。
「ほのかさん、今回の役は“夫婦愛”がテーマでしたが、
ご自身にとって“理想の夫婦像”とは?」
ほんの一瞬だけ――
舞台の上で、ほのかの瞳が関係者席のある一点を見た。
けれどそれは、一瞬。誰も気づかないほど自然に。
「……そうですね。
“声をかけなくても伝わる関係”が、理想かなって思います」
「すれ違っても、忙しくても、同じ空を見ていれば――
その人のことを、きっと信じられる。
そんな静かな絆が、私にとっての“夫婦”です」
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イベント終了後。
ロビーで待機していた悠人、美琴、詩織は、関係者専用の控室へ招かれた。
「おつかれさま、ほのかちゃん。あのコメント、めちゃくちゃ沁みたよ」
「ほんと。“声にしなくても伝わる関係”って……私たちも見ててグッときた」
ほのかは少し照れくさそうに笑いながら、悠人の横へそっと歩み寄った。
「……ありがとう、来てくれて」
「こっちこそ。“妻”が主演って、なんか……誇らしかったよ」
でもそれは、あくまで控室だけの言葉。
外ではまだ、夫婦であることを知られていない。
その距離を守るように、ほのかはそっと口元に手を添え――
手のひらでキスを隠すように、悠人の頬に触れた。
「じゃ、帰ったら……“ちゃんと”褒めてもらうから」
「……覚悟しとく」
ふたりの距離は、舞台の上と下でまるで別世界。
けれど心の中では、ずっとひとつだけの愛を重ねている。
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その帰り道。
美琴と詩織がぽつりと呟いた。
「なんかさぁ、ふたり見てると……結婚も、悪くないかもって思える」
「うん。いいなぁ、“秘密の夫婦”」
「バレたら会社で終わるけどな……」
「それでも、あんたたちならきっと乗り越えられるよ」
そう笑った姉たちの背中に――
ほのかは小さく、けれど確かな声で言った。
「……秘密だけど、私はいつだって、あなたたちの“妹”でいさせてください」
「へぇ、なら今度は“女3人だけの温泉旅行”とか?」
「……… 悠人抜きで?」
「うん、たまには“奥さん業”休んでもらって」
「……ふふ、それも悪くないかも」
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