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第4話「誰に紹介されたいですか?」



――声の人は、僕の妻です。秘密から始まった“結婚生活の真実”



雨の夜。

バラバラと窓を打つ雨音が、部屋の静けさを際立たせていた。


ふたりで同じ番組を観ながら、毛布を肩までかけて、

あたたかいココアを手に持ち、ひと息つく。


そのとき――

悠人がふと、テレビ画面から目を離して、口を開いた。


「ねぇ、ほのか」


「ん?」


「……俺の親に、会ってみたいって思ったことある?」


「……」


ほのかの指が、一瞬だけ止まった。

湯気がふわりと立ち昇るカップの向こうで、彼女の表情が少しだけ曇る。


「それって……“紹介したい”ってこと?」


「うん。

 ……もちろん、無理にとは言わないよ。

 俺だってまだ若いし、学生だし、言ったらきっと驚かれるし。

 でも、それでも――“妻を紹介したい”って思うのは、普通の感情だと思って」


ほのかは黙ってうなずいた。

それは拒否ではなく、“答えを探している沈黙”だった。



少し間をおいて、ほのかが静かに言った。


「……悠人のご両親って、どんな人?」


「んー、父さんは真面目で口数少なくて。

 母さんは明るくて、誰とでもすぐ仲良くなれるタイプ。

 でも……俺が“声優と交際0日婚しました”って言ったら、どっちもフリーズすると思う」


「……そりゃそうよ」


ふたりはくすっと笑った。


「でも……聞いて驚かれるくらい、“本気”だってことよね」


「うん。だからこそ、“本気”で会ってもらいたいって思ってる」



ほのかは、ソファの背にもたれたまま、目を閉じて言葉を吐き出した。


「……私、仕事で“紹介”って言葉がずっと怖かったの」


「……」


「声優は、ファンに“理想”を売る仕事。

 だから、恋人や夫の存在を“隠す”ことも、プロ意識とされる。

 でもそれって、“大切な人”を世界に見せないようにするってことなんだよね」


「うん」


「あなたと結婚したとき、それを“守るべき秘密”として抱え込むことで、

 私はどこかで安心してたの。

 でも、最近思うの――あなたは、守られるんじゃなくて、“紹介されるべき人”だって」


彼女の声が震えていた。


「本当は、もっと早く言わなきゃいけなかった。

 “あなたを家族に紹介したい”って、私のほうから」


悠人は、黙って彼女の手を取った。


「……ありがとう」


「ねぇ、悠人」


「うん?」


「もし、“紹介”してもらえるなら、私も……あなたの家族に、“妻”として認めてもらいたい」


「当然だよ。俺が連れてくのは――“僕の妻”なんだから」


そして、ふたりは手を重ねたまま、額をそっと寄せ合った。



翌朝。


朝焼けが差し込むキッチンで、目玉焼きを焼きながらほのかがぽつりとつぶやく。


「事務所の社長にも、そろそろ話す時期かもしれない」


「……え?」


「このまま隠し続けることが、“嘘”になる気がしてきたの。

 あなたのことを、ちゃんと“私の人生”の一部として、胸を張って話せるようになりたい」


悠人は驚きつつも、その決意に心を打たれた。


「じゃあ……次は、俺の番だ」


「……何を?」


「俺の両親に、“あなたが僕のすべてです”って言う覚悟を、ちゃんと見せる」



“紹介”――それは、ただの言葉じゃない。

それは、“この人を自分の人生に迎え入れる”という、明確な意思表示。


誰かに言うことで、ふたりの関係は“秘密”から“確かな事実”へと変わっていく。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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