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「孤島立国」異世界で自分達の国を作ろう   作者: 八神夕輝
第二章 システア共和国
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【四六】魔人族 その三

高大一貫教育の大学三年生になり、実習のために船で離れ小島へ向かっていた主人公は突然の嵐に遭遇してしまう。

 気が付くと大学生男子一名、女子七名と女教師二名だけが異世界の孤島に漂着していた。

 ここから孤島でのサバイバル生活が始まる。彼、彼女らは専門分野別に集められたエリート達だった。

 生活する上で不可欠な拠点造り、食料の調達から始めることになる。

 かつての世界の技術力を駆使した武器や輸送手段を筆頭に様々な開発も行うことになった。

 最大の問題は武器、輸送機に使用されていた原料がこの世界には存在し無いこと。

 新たなエネルギーを得るために悪戦苦闘するメンバー達。

 発見された常識を覆す新エネルギーは後の大発明へとつながって行くことになる。

 この世界を統治する王国や巨大生物、未知の病などと格闘する日々が続く。

 次々と降り掛かる問題を持ち前の技術力と結束力で乗り越えて行く。

 自分達の国を創り上げるため奔走する冒険と青春の物語である。


 相変わらずの陽鞠(ひまり)の元気印さに頬(ほほ)が引き攣(つる)る勇作(ゆうさく)だった。

 志摩(しま)にこれから陽鞠がカーチスで来ると説明すると、「全くあの子らしいな・・」と溜息を付かれてしまった。

 二時間程待っていると収束エンジン特有の噴射音が聞こえ、勇作達のいる集落横の草原にカーチスが垂直降下してきた。

 カーチスは空水両用の飛行艇であり、某アニメの○の豚に出てくるアメリカ野郎の愛機名を使っている。

 また、離発着の性能向上を狙って、かつての世界にあったオス○レイで採用しているエンジン推進機構の噴射方向を三百六十度変更出来るギミックを持たせてある。

 これによって垂直離発着が可能な空水両用機が出来上がった。

 平原に着陸したカーチスのコックピットが開くと陽鞠が勇作目掛けてダイブしてきた。

 「勇作ー!・・会いたかったよ-!」

 かなりの勢いでダイブしてきた陽鞠を勇作はよろめきながらも抱き留めた。

 「遠いところを悪かったな、陽鞠・・大分、飛ばして来たんじゃないか?」

 「うん、頑張った-!・・はい、これ頼まれてたやつだよ!」

 「ああ、ありがとう、助かったよ」

 勇作が陽鞠の頭を撫でると嬉しそうに頬を緩めた。

 「すぐに戻るのか?」「ううん、明日の朝まではこっちに居られるよ!」

 「そうか、出来れば意見を貰(もら)えると助かる」「OKだよ!」

 集落の魔人族達と予め呼び寄せておいた族長を一箇所に集めて説明を始めた。

 「まず、話をさせて貰いたいのは、作物を選べば痩(や)せた土地でも作物を栽培出来るということです・・我々の故郷では様々な土地で作物を育てて来たノウハウがあります・・それを今からお伝えします、良く聞いておいて下さい・・では、陽鞠頼む」

 「OK、任された-!・・じゃあ、説明始めるよー!」

 痩せた土地で作物を育てる上で最も大切な事は土壌改良だ。

 栄養や水が豊富にあってもそれだけで作物が育つ訳では無い。

 作物は土から栄養を補給するので、いかに作物にとって育ちやすい環境を作ってやれるかが鍵になる。

 作物を育てる上で必要となるものが三つある。

 一つは土壌の栄養分が少なくなり痩せて来ると酸性化し易いため、酸性土壌を弱アルカリ土壌に変えなければならない。

 石灰を土に混ぜて寝かせる方法が一般的だが、ここでは石灰が手に入らない。

 貝殻等を粉になるまで砕いて使用することも出来るが、この地は海や川から遠く離れていて必要な貝殻が手に入らない。

 そこで陽鞠が目を付けたのが大きなカタツムリだ。

 雨が長期間降らなくても生きていける大きな巻き貝のような殻(から)を持つ。

 陽鞠が調べたところ、特に毒性も無く普通に食べられるらしい。

 栄養価も高く食料不足の中、食べない理由は無いと言う。

 魔人族はこのカタツムリは気味が悪く食べてこなかったらしいが、陽鞠が作った料理に恐る恐る手を出した男達はその美味さに歓声を上げていた。

 「なんだこれ・・すごく美味いぞ!」

 「塩味が染み込んで何とも言えない美味さがある」

 陽鞠に聞くと水洗いしたカタツムリに塩を振り、蒸し上げただけだと言う。

 試食用に用意したカタツムリは、先端が尖った棒で器用に殻から取り出してあっという間に食べ尽くされていた。

 「これは俺達でも料理出来るのか?」

 族長の問いに陽鞠が元気良く答えた。

 「出来るよ-!・・蒸し器が必要だけどね、そんな料理器具は無いって?・・そうか、じゃあ、これあげるから同じ物を作って皆で出来るようにしたら良いよー!」

 「えっ?良いのか?」「うん!良いよー!」「忝(かたじけな)い・・」

 族長は集落の鍛冶屋を呼んですぐにも同じような器具を作るよう指示した。

 続いて、陽鞠は本来の目的である、食した後に残る貝殻を粉になるまで砕いて潰し、石灰モドキを作成した。

 これを作物を育てる畑の土に混ぜるように指示した。


 二つ目の重要なポイントとして陽鞠は堆肥(たいひ)を作るよう説明した。

 堆肥は有機肥料であり動物の糞等を発酵させて作る。

 人の排泄物を使うことも出来るのだが抵抗感が大きいだろうと考え、動物の排泄物を使用することにした。

 これを一定期間寝かせて堆肥にすることになるのだが、ちょうど動物たちの糞を一箇所に集めて捨てている場所があった。

 何と大部分は発酵が進んでいて、目指していた良い堆肥になりそうだ。

 

 三つ目の重要ポイントとして、微生物が分解した植物の肥料・・所謂(いわゆる)、腐葉土が必要だ。

 この地でも少ないながら林は存在する。

 林の中で針葉樹では無く広葉樹の林を見つけて、落ち葉等が堆積して発酵した腐葉土を手に入れた。

 

 堆肥は作物を植えた位置から少し離れたところに、複数箇所埋めることで栄養の補給が出来る。

 また、腐葉土は少量ずつ畑に満遍(まんべん)なく蒔(ま)いて耕すよう指示した。

 この状態で二週間程も寝かせれば土壌改良の石灰、既に発酵している堆肥からは栄養分、微生物達の力を借りて有機物の分解を促進させることが出来る。

 これらの相乗効果によって作物が育つ環境が整うのだ。

 一通りの説明を終えた陽鞠は出来上がった畑の畝(うね)にまず蕎麦(そば)の種を蒔いた。

 「本当は土を寝かせた方が良いんだけどねー!・・でも待てないよねー!」

 蕎麦の種を蒔き終わると、続いてジャガイモの種芋を用意した。

 本当はサツマイモの方が痩せた土地には強いのだが、継続的に苗が手に入らないので繰り返し種芋が手に入れられるジャガイモを育てることにしたのだ。

 「本当はサツマイモとかの方が良いんだけどね!・・ジャガイモだと少し収穫量が不安かな-!」

 種芋を半分にカットして切った面に枯れ葉等を焼いた灰を塗ってからカット面が下になるよう植えて行く。

 日が傾いて夕闇が迫り始める頃、植え付けが完了した。

 その日は集落近くの平原にトライクを停車させて三人で夕食を囲んだ。

 集落の男達からは夕食に誘われたのだが、それで無くとも食料不足なのだ。

 気持ちだけ貰って丁重に断った。

 夕食はやはり二人より三人の方が姦(かしま)しいものの、賑(にぎ)やかな食卓になった。

 その夜は当然のように志摩と陽鞠に寝込みを襲われた勇作だった。

 テントの外に声は漏れないものの、不自然に揺れる様はその激しさを物語っていた。

 翌朝、集落を訪れて調査を完了して拠点に戻ることを告げた。

 「勇作殿・・少しやつれたように見えるが大丈夫か?」

 「えっ・・はい、大丈夫・・ですよ?」

 陽鞠から族長や集落の男達にジャガイモと蕎麦の面倒の見方を伝えて貰った。

 近々、またこの地を訪問すると約束して拠点に向けて帰路に着いた。


 トライクは拠点に向かって順調に進んでいた。

 そのトライクの上空をカーチスが飛んでいる。

 拠点に戻るにはトライクだと飛ばしたとしても三日程掛かる。

 カーチスであれば三時間もあれば拠点に戻れる。

 なのに何故?言ってしまえば陽鞠がごねたのである。

 「えー!とにかく急いで来たのに用事が済んだら帰れなの?ひどいよー!」

 ・・とこんな感じでトライクと一緒に・・いや、勇作と一緒に帰りたいらしい。

 拠点から各方面にメンバーが散って一週間ちょっと。

 勇作を前にして寂しさを我慢していた陽鞠の感情が爆発したのだ。

 帰路に着いて一日目の夜、夕食後に就寝に着くとテント内の二人用ベッドに陽鞠が潜り込んできた。

 志摩の抗議にも耳を貸さず、勇作を抱き枕にして眠りに就いた。

 二日目の夜、志摩と陽鞠の勇作争奪戦が勃発した。

 「志摩はずっと勇作と旅して来たんだから私に譲(ゆず)れ-!」

 「何を言ってるんや・・お前みたいにしょっちゅう盛りが付いてる訳やないで!」

 「何よ-!寂しいの我慢して私は拠点で早苗とずっと頑張ってたんだよ?」

 「一週間くらい我慢できんのかいな」「出来ないよ-!」

 こんな有様で言い合いに発展する始末。

 見かねた勇作は二人を両腕に抱き締めて「頼むから言い争いはしないでくれ・・悲しくなる」と二人にキスをしてからテントの外に出た。

 いつもは元気印で深く悩むことの少なそうな陽鞠だが、そこはやはり年頃の女の子である。

 知らない世界に飛ばされて懸命に生き抜いている現状では、ちょっとした心のバランスが崩れただけで大きな傷を負ってしまうリスクと隣り合わせなのだ。

 仲間内でのいらない揉(も)め事は出来る限り避けたい。

 それに何より女子達のいがみ合い、言い争いが嫌いだ。

 生い立ちのせいなのか、いたたまれなくなるのだ。

 勇作の後ろから二人が近付いてくる気配がした。

 「勇作・・」陽鞠が申し訳なさそうに声を掛けて来た。

 「・・勇作、ごめんて」志摩もご機嫌を伺(うかが)うように声を掛けて来た。

 「ふうっ・・」と一つ溜息を付いてから「頼むから喧嘩(けんか)は止めてくれ・・」と溜息交じりに呟いた。

 「悪かったよ!ごめんね-!」「私もちょっとカッとなってしもうてごめん」

 「分かってくれたならもう良いよ・・」

 二人は椅子に腰掛ける勇作の両側から腕を取って身体を擦り寄せてきた。

 勇作は二人を抱き締め、愛しさを込めてキスをした。

 二人を促してテント内に入り、ベッドへ三人で倒れ込んだ。

 結果的には三人で朝まで愛し合うことになったが、いがみ合うこと無く寝不足にも関わらず晴れ晴れとした顔で朝を迎えられたことに感謝だ。


 三日目は二人で交代しながら拠点を目指していた。勇作と志摩の二人だ。

 陽鞠は今朝早くにカーチスで飛び立っていた。

 彼女曰(いわ)く「勇作が帰って来るって伝えてくるよ!・・皆、喜ぶよ-!」だそうだ。

 一週間程、拠点を離れメンバー達から離れていただけなのに郷愁が漂い、早く帰りたいと願うのは人の性なのだろうか。

 メンバー十人が集う、あの喧噪(けんそう)を妙に懐かしく感じていた。

 現在、走行させているトライクは心愛が「・・趣味で作った・・」という三輪オートバイだ。

 当然、普通のバイクな訳が無く、ルーフ、サイドパネル付きの全天候型で小型収束エンジンを二基搭載した最高出力八百五十馬力のモンスターマシンだ。

 前席一名(運転手)、後席二名の三人乗りのトライク型バイクで、収束ガトリングガンを左右に一基ずつ配備した戦闘マシンだ。

 ミニホバーと違ってキッチンやベッドはバイク外でのアウトドア仕様で対応する。

 「趣味」と言いつつ、とんでもマシンを作ったものだ。


 「見えたぞ、エルピーダだ」

 「本当や・・何やろ、この久し振りに帰って来た感は」

 「全くだ・・一週間ばかり留守にしていただけなのにな・・」

 既にメンバーの何組かは戻って来ているようだ。

 「お帰り-!・・さっきぶりだけどー!」と陽鞠が飛び出して来る。

 「無事にお帰りだねぇ・・」と早苗(さなえ)が微笑む。

 「お帰りなさい、勇作くん」と涙を溜めた瞳で愛理(あいり)が迎えてくれた。

 「あらあら、勇作お帰り・・皆、嬉しそうね」と変わらずおっとりした話し方の希美(のぞみ)。

 「・・お帰り・・」表情はあまり変わらず口数も少ないがホッとしている様子の心愛(ここあ)。

 「お帰りなさい、勇作君・・」柔らかな声で花江(はなえ)が迎えてくれる。

 メンバーを見回して「ただいま・・」勇作が答えた。

 「何や・・皆、勇作にばかりお帰り言うて・・私も帰って来たんやで?」

 メンバーは顔を見合わせ「「「志摩、お帰り!」」」と若干ふて腐れ気味の志摩を揉(も)みくちゃにした。

 「ところで、帰って来ていないのは花梨(かりん)達だけなのか?」

 「そうだねぇ・・明日の昼頃までには帰って来ると思うけどねぇ」

 「勇作くん、志摩・・長旅で疲れたでしょ?機内でゆっくり休んで」

 「すまん・・そうさせてもらう」

 「『そうさせてもらう』やて・・愛理には格好つけへんのやな」

 「えっ?それってどう言う・・」

 「何でもあらへん・・悪いけど先に休ませてもらうで」

 愛理を少しからかった後、志摩は自室へと引っ込んだ。

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