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「孤島立国」異世界で自分達の国を作ろう   作者: 八神夕輝
第二章 システア共和国
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【四一】ドワーフ族 その二

 高大一貫教育の大学三年生になり、実習のために船で離れ小島へ向かっていた主人公は突然の嵐に遭遇してしまう。

 気が付くと大学生男子一名、女子七名と女教師二名だけが異世界の孤島に漂着していた。

 ここから孤島でのサバイバル生活が始まる。彼、彼女らは専門分野別に集められたエリート達だった。

 生活する上で不可欠な拠点造り、食料の調達から始めることになる。

 かつての世界の技術力を駆使した武器や輸送手段を筆頭に様々な開発も行うことになった。

 最大の問題は武器、輸送機に使用されていた原料がこの世界には存在し無いこと。

 新たなエネルギーを得るために悪戦苦闘するメンバー達。

 発見された常識を覆す新エネルギーは後の大発明へとつながって行くことになる。

 この世界を統治する王国や巨大生物、未知の病などと格闘する日々が続く。

 次々と降り掛かる問題を持ち前の技術力と結束力で乗り越えて行く。

 自分達の国を創り上げるため奔走する冒険と青春の物語である。

 翌朝、昨日地図で確認しながら決めた五つの調査ポイントを順番に回ることになった。

 案内役は施設長のアスターが買って出てくれた。

 まず下水道の下流合流箇所がある商業地区裏手のポイントから順に上流のポイントへと向かう。

 最下流のポイントでは下水道独特の臭気が鼻をつく。

 愛理達は既にバトルスーツを着込んでいて、早々にフルタイプシールドを被(かぶ)った。

 アスターにはポイントへは近づかないよう言ってある。

 小動物の死体や蠢(うごめ)く何かの虫達の中から検体を採取した。

 下水道下流から上流へと向かいながら更に二箇所で検体を採取した。

 続いて訪れたポイントは居住区に近い大きな厩舎(きゅうしゃ)だった。

 繋(つな)がれている馬達を見て回り、糞(ふん)から検体を採取していた愛理が突然、慌(あわ)てた声を上げた。

 「ち、ちょっと、希美!こっちに来て!」

 普段から冷静沈着な愛理の慌てた様子に訝(いぶか)しく思いながら駆け寄った。

 「どうしたの?指差した方に何かあるの?・・あ、あら、あれって?もしかして・・」

 愛理の指差した方向には他の馬達から隔離されたケージに一頭の馬が横になっていた。

 愛理達が驚いたのは馬が一頭だけ隔離されている事では無く、横になっている事でも無かった。

 その馬の体表にはいくつもの水疱があり、四肢の末端は黒ずんで崩れ落ちていた。

 「・・愛理、これって|馬痘よね?」「・・間違い無いと思います」

 「「・・」」二人は顔を見合わせた。

 アスターに頼んで厩舎の責任者を連れて来て貰った。

 「ちょっと伺いたいんですが、この馬の症状はいつ頃からですか?」

 「はい、二週間ぐらい前からだと思います」

 「症状の進み具合を教えて頂けますか?」

 「まず、体表に小さな疱疹のようなものが出来始めました・・何か出来物でも出来たのかと思っていたのですが、一週間程すると疱疹状の出来物の数が増えて大きくなってきました・・薬草なども与えたのですが効果も無く・・」

 「四肢の末端の損傷はいつ頃からなのかしら?」

 「はい、疱疹状の出来物が大きくなるのと同時期に四肢の末端が黒く染まってきました・・その後、立ち上がることも出来なくなり気付いたときには末端から組織が崩れ落ちていたのです」

 「・・そうですか、ありがとうございました」

 「愛理・・これワクチン開発の検体になるわね?」

 「はい、これ以上無いぐらいの・・」

 入念に検体を採取し終えた愛理達は「絶対にこの馬に触れないこと、隔離して看病して欲しいこと」を伝えて次のポイントに移動した。

 最後のポイントも厩舎であったが、先のような症状を発症している馬はいなかった。

 但し、発病していなくても可能性を考えて体表にいるノミを採取しておいた。


 検体の採取を完了した早苗達は携帯型の消毒カプセルを使って、フルシールドとバトルスーツの除菌を行った。

 アスターには感染防止用のゴム手袋を渡して、感染源として疑われるものに触れる時は必ず両手に装着すること、使用後は煮沸消毒を徹底するよう伝えた。

 既に陽は落ち暗くなっていたため、今夜はハルモニア町長が用意してくれた宿に泊まって明朝、拠点に向かって出発することにした。


 翌朝、宿で待ち合わせたアスターが用意してくれた馬車に乗って山門までやってきた。

 「アスターさん、送って頂きありがとうございました・・これから私達の拠点がある獣人族の領地に戻ります、ハルモニア町長には宜しくお伝え下さい」

 「はい、承知しました、お伝えしておきます・・お二人も帰り道にはお気を付け下さい」

 「あら、そんなにこの辺は物騒なのかしら?・・来る時、竜巻には襲われたけど・・」

 「この山麓から一定の距離までは岩礁地帯が続きます・・この岩礁地帯に盗賊達が根城を置いているという情報があるのです・・場所の特定や盗賊達の確認が出来ている訳ではないですし、確実な情報とまでは言い切れ無いのですが・・」

 「なるほど分かったわ・・気を付けるにこしたことは無いわね」

 「十分気を付けて行きます・・色々とありがとうございました」

 アスターと分かれた愛理達は山門の衛兵に断りを入れて、ミニホバーの駐機場所に移動した。

 待機モードで停泊させていたホバーには特に異常は無かった。

 「何も無かったようで良かったわね・・この子が無事でいてくれないと私達、拠点に戻れないものね」

 「はい、待機中にも異常は無かったようですね・・では、拠点に向けてホバー発進します」

 「了解よ、ホバー発進!」

 エネルギー収束エンジンに火を入れた。

 機体下部の噴射口から軽やかな噴射音が高まる。

 直後、フワリと機体が地面より浮き上がった。

 ホバーは滑るように走り出した。

 一日目は順調に進み、岩礁地帯の一角にホバーを停泊させて野宿の準備を始めた。

 ホバーに備え付けのタープとスクリーンを伸ばして、テーブルと椅子をセットすれば簡易テントと食卓が完成した。

 タープは雨露を凌(しの)ぐため、スクリーンは虫や小動物が入って来ないようにするための装備で野宿には必需品である。

 「スタンダードタイプのホバーだったら中で食事もできるのにね・・」

 「確かにそうですけど、今回の任務であれは大きすぎますよ」

 「そうよねー、でも面倒なのよね・・毎回これは」

 「全く芸家部の希美が言うことでは無いですよ?」

 「あん、料理は良いのよ、好きだし・・でもテントとか食卓設営からとか、面倒じゃない?」

 「はあ・・だからそっちは私がやってますよ、ね?」

 「料理は私がやるから分担制と言うことで・・ね」

 「・・」

 何を言っても希美のペースは変えられそうも無いので話題を変えた。

 「ところで盗賊達が出没するって言ってましたね・・今夜は交代で見張り番やりますか?」

 「えー!ホバーの自動警戒モードにしておけば大丈夫じゃないの?」

 「まあ、基本的には大丈夫だとは思いますけど・・」

 「睡眠不足はお肌の大敵よ、ちゃんと寝ましょ?」

 「・・」

 どこまで行っても希美であった。

 岩礁地帯に入って間もない位置で停泊しているので、今夜は大丈夫かと監視はホバーに任せて愛理も就寝ことにした。

 結局、何事も無く朝を迎えて出発した。

 二日目の夜、岩礁地帯の中央付近を少し過ぎた辺りで停泊することになった。

 上手くすれば明日中には岩礁地帯を抜けられる予定だ。

 夕食を摂った後、明日の行程を考えて監視はホバーに任せることにし、二人は早めに就寝することにした。

 夜半過ぎ、突然機内にアラーム音が鳴り響いた。

 「「・・!」」

 飛び起きた愛理と希美はすぐに臨戦態勢に移る。

 モニタを確認すると赤外線カメラに複数の人影が写っていた。

 「本当に来ましたね」

 「あら、想定の範囲内ってやつじゃない?早速、殺っちゃう?」

 「でもまだ何もされてないんですよ?」

 「馬鹿ね、愛理は・・されてからでは遅いじゃない、それにドワーフの町で聞いたところでは何回も旅人を惨殺(ざんさつ)して略奪してる奴ららしいわよ?・・ここで情けを掛ければ次に旅人の誰かがひどい目に遭うわ・・それでも良いの?」

 「・・」

 「ちゃんと、遭遇した場合には殺っちゃて良いって町長から事前に許可もらってあるし問題無いわよ」

 「・・用意周到ですね・・分かったわ」

 それぞれ操縦席に着くと、愛理は自動アナウンスを流した。

 「それ以上、本機に許可無く近付いた場合、敵対行動と見なし強制排除を行います」

 一瞬、ビクッとアナウンスの声に驚いて周囲を見回していた盗賊達は女性の声であったことと、周辺に人の気配が無いことから剣や斧を片手にジリジリと近付いてきた。

 それでも近付いて来る盗賊達に向けて、愛理は更にアナウンスを流す。

 「威嚇(いかく)射撃を行います」

 アナウンスの直後、機体の両脇から収束ガトリングガンが一基ずつせり出し、盗賊達の足下に向けて出力を最小に絞った威嚇用の射撃を放った。

 しかし、驚いて飛び下がったものの次の攻撃が来ないことを見た盗賊達は、錆びた盾を掲げながらジリジリと再度近付いて来た。

 「警告を無視したと判断し、迎撃に移ります」

 感情の無い無機質な最後通告を流したホバーは、更に機体上部からエネルギー収束砲一門がせり出した。

 両脇のガトリングガン二基が同調して盗賊達に照準が合わされた。

 「ガガガガガガガッ・・」

ガトリングガンの発射される連続音と共に機体が振動し、次にモニタを確認した時には全ての人影が地に這っていた。

 単なる人相手では収束砲の使用は必要なかった。

 完全にオーバースペックである。

 ガトリングガンを知らない盗賊への一方的な斉射であったにしても中々の殲滅(せんめつ)力である。

 浮かない顔の愛理に「まだ、周囲に盗賊の仲間がいるかもしれないから、少し早いけど出発しましょう」と声を掛けた。

 機外に出るのは危険と判断し、ホバー搭載のマニュピレータを使って盗賊達を埋葬し終えた愛理達は、まだ陽の明ける前であったが拠点に向けて出発した。

 (こんな時、勇作くんならどうしてたのかな?・・説得する?武器を使って威圧する?・・それとも逃げちゃう?)

 初めての人との戦闘、それも一方的な殺人に愛理の気分は落ち込んでいた。

 自分達に危険が迫り、ホバーが無ければ女二人でどこまで出来ていたか・・幸い、後から盗賊の仲間が現れることは無かったが、それはただの幸運に過ぎない。

 いかに優秀な武器を持っていても所詮は女二人。ましてや希美はかつての世界で武術や戦闘術には無縁であった。

 付け焼き刃で戦闘訓練はしているものの、盗賊達が物量に物を言わせて攻めて来られたらどうすることも出来ないだろう。

 普通に見てかなりの美少女である二人だ。盗賊達がただで済ませる訳が無い。

 愛理は自身の身体を両腕で抱きしめると、二つの意味で怖さを覚えブルッを震えた。


 日付が変わった陽が昇る前に出発した愛理達はその日の夕方には岩礁地帯を抜けて見渡す限り続く平原に出ていた。

 「ここまで来れば安心ね・・」

 希美は見晴らしの良い草原に小さな池を見付けて、その畔に停泊することにした。

 「ほら、お腹空いたでしょ?ご飯にするわよ?手伝って・・」

 どこか元気の無い愛理に声を掛けて夕食の準備を始めた。

 タープとスクリーン、食卓を愛理に準備させた希美は、少し気温の下がった夕空に暖かい食事を用意した。

 「・・頂きます・・ふぅ、暖かい」

 少し肌寒い夕空の元、暖かな食事は生きているのだと実感できて心まで温かくなった。

 「勇作くん・・早く会いたい・・」

 愛理はたくさんの星が瞬(またた)きだした夕闇広がる空に向かって呟(つぶや)くのだった。

 その夜は何事も無く朝を迎え、拠点に向けて出立した。


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