【三六】首都
高大一貫教育の大学三年生になり、実習のために船で離れ小島へ向かっていた主人公は突然の嵐に遭遇してしまう。
気が付くと大学生男子一名、女子七名と女教師二名だけが異世界の孤島に漂着していた。
ここから孤島でのサバイバル生活が始まる。彼、彼女らは専門分野別に集められたエリート達だった。
生活する上で不可欠な拠点造り、食料の調達から始めることになる。
かつての世界の技術力を駆使した武器や輸送手段を筆頭に様々な開発も行うことになった。
最大の問題は武器、輸送機に使用されていた原料がこの世界には存在し無いこと。
新たなエネルギーを得るために悪戦苦闘するメンバー達。
発見された常識を覆す新エネルギーは後の大発明へとつながって行くことになる。
この世界を統治する王国や巨大生物、未知の病などと格闘する日々が続く。
次々と降り掛かる問題を持ち前の技術力と結束力で乗り越えて行く。
自分達の国を創り上げるため奔走する冒険と青春の物語である。
衛兵達が平原に到着するまでの二日間、昼間は各準備を行って夕方からは各自自由行動とした。
夕食を摂ってシャワーを浴びた勇作は自室に戻った。
明日中には衛兵達が平原に到着する予定だ。
トゴイル島での討伐後、メンバー全員と情を通じて以来、誰かしらが勇作と夜を共にするようになっていた。
一昨夜は花江、初音と夜を共にした。
花江は情熱的な赤色、初音は煽情的な黒色のナイトガウンを羽織って彼のところにやって来た。
タイプの違う年上の女性の反応を愉しみながら、二人に嬌声を上げさせ熟れた柔肌に包まれて眠りに付いた。
勇作が目覚めた時には両隣りで寝ていたはずの彼女達の姿は無かった。
どうも起き抜けの顔を見られるのが嫌らしい。女心は不可思議である。
昨夜は陽鞠と早苗がやって来た。
陽鞠は鮮やかな黄色、早苗は薄紫色のナイトガウンを羽織っている。
いつも元気な陽鞠には黄色が良く似合う。
物静かだが芯のある、どこか危うい早苗にも薄紫色は良く似合っていた。
陽鞠が肉食系であるのは想像に易いが、意外にも早苗も肉食系なのだ。
元気一杯に勇作の腕の中へと飛び込んで来る陽鞠とは対照的に薄っすらと笑みを浮かべて背後から抱き付いて来る早苗には毎回ドキドキさせられる。
二人の猛攻を受け止めながらも必死に反撃に出た勇作だったが、悉く空振りに終わり、結局のところ散々翻弄された後、彼女達の香りに包まれて眠った。
勇作が目覚めた時にはやはり彼女達の姿は無かった。
その日の夕方になって、馬車に乗った衛兵たちが平原に到着した。
今から首都に入るとすぐに夜になってしまうので翌朝、首都門前で落ち合うことになった。
衛兵達は首都内の宿舎を借りて宿泊するらしい。
その日の夜、夕食を作るのを勇作も手伝った。
数多くのレパートリーのある方では無かったが、以前作って好評だった香辛料を利かせたメキシカンピラフと発酵乳製品に二日程漬け込んだ鶏肉に香辛料をまぶして焼き上げたタンドリーチキンを用意した。
生野菜にドレッシングをたっぷりかけたサラダとオニオンスープも副菜として添えた。
「今日は勇作が作ったんか・・おー、ピラフとタンドリーの最強タッグやんか」
「うわーい!・・勇作のタンドリーチキン美味しいから好きー!」
「メキシカンピラフとタンドリーチキンか、美味しいんだけど私には少し刺激が強いんだよねぇ・・ん?香辛料を控えた私用のも用意した?・・流石、出来る男は違うねぇ・・」
「あらあら、早苗だけ特別扱いなのね・・えっ?私にも特別メニューがあるの?健康オタクの私に乳酸菌ドリンクを用意したくれたって?・・ふふっ、勇作、大好きよ!」
希美は勇作に抱き付くとキスの嵐を降らせた。
「こ、こら、希美・・皆が見てるだろ」
「あら、見られたら困ることでもあるのかしら?」
皆から一斉にジト目で非難を向けられても、希美に堪えた感じは全く無い。
「希美にも困ったもんやな、抜け駆けは無しやで・・!!何やこれ美味っ!」
タンドリーチキンに齧り付いた志摩は口の中に広がる濃厚な肉汁とスパイスの香りに陶然となった。
「・・辛いの苦手・・」
「そう言われると思って辛さ控えめの心愛用のものも作ってあるぞ・・」
そう言って勇作は心愛の前に辛さを控えた皿を置いた。
心愛はおもむろに料理を口に運んだ。
「心愛、どうだ?」
「・・美味しい、辛く無い・・」
勇作は心配そうに心愛の顔を覗き込んだ。
心愛は「・・勇作、グッジョブ・・ありがとう・・」と言って勇作の首に腕を回して引き寄せると口づけた。
「「「「 ! 」」」」
皆の視線が勇作と心愛に突き刺さる。心愛はそんな視線など一向に気にしてしない。
十分に時間を使って勇作を堪能した心愛は暫し彼を見詰めた後、食事を再開した。
「ゴホンッ・・」
花梨の咳払いによって現実に引き戻された勇作は、冷や汗を掻きながら残りの料理を配膳するのだった。
「全く心愛は節操が無さ過ぎですわ・・淑女として恥ずべき振る舞いよ」
「・・ふっ、嫉妬か・・」
「ち、違いますわよ・・全く何を見当違いなことを言ってるのかしら?」
「・・負け犬め・・」
「ムキーッ・・またしても喧嘩を売ってますのね?・・宜しいですわ、買ってあげますわ!」
「・・子供か・・」と両手を広げて溜息を付く心愛。
ブチッと切れた音がした花梨は綺麗な顔を般若の形相にして立ちあがると「今日と言う今日は絶対に許しませんわ」と心愛に詰め寄った。
花梨と心愛は両手を組み合わせて取っ組み合いを始めた。
「コツン・・」「ゴツン・・」「痛っ・・」「・・!・・」
花梨の脳天に軽い拳骨が、心愛の脳天にはキツイ拳骨が下った。
驚いて頭を擦る花梨と言葉が出ずに呻き声を上げる心愛がいた。
「今のは心愛が悪い、花梨も簡単に挑発に乗るな・・全く、お前達は夕飯抜きだ」
その言葉にビクッと反応した二人は脳天の痛みに蹲りながら涙目で勇作を見上げた。
「えっ?そんな、勇作のご飯が食べられないなんて・・ごめんなさいですわ」
「・・ごめん、勇作・・」
溜息を一つ付いて勇作は「何で毎度毎度喧嘩になるんだ?お前達は・・ちゃんと反省したのか?なら席に座れ、折角の料理が冷めてしまうだろ」と二人が座るのを待って料理を配膳した。
「本当に美味しい・・勇作くんは料理が上手ですね」と愛理。
「本当だわ・・サラダのドレッシングもまろやかで美味しいわ」と花江。
「悔しいぐらいに美味しいわね・・年上の女性としては立場が無いわ」と初音。
絶賛をくれた三人の美少女、美女達に「そう言ってくれるのは嬉しいがレパートリーの数があまり無いからな」と勇作は照れ隠しに言い訳した。
異世界に飛ばされて以来、メンバー達は力を合わせて懸命に生きてきた。
かつての世界のように必ず明日が保証されている訳では無い。
だからこそ、今の自分の想いを隠さずに口にするようになった。
後悔は先に立たず、今出来ることはやっておく、今言えることは今伝えておくように変化していった。
騒がしくも楽しい夕食を摂りながら夜は更けていった。
その夜、勇作が自室で休んでいると心愛と花梨がやって来た。
心愛は水色、花梨は薄桃色のナイトガウンを羽織っていた。
喧嘩する程、仲が良いとは良く言われるが、この二人はそれを地でいっている。
喧嘩しているかと思えば開発品の相談をし、夕食のおかずを食べられたと喧嘩になり、今こうして二人で勇作のところに来ている。
昼間のことがあって気まずい雰囲気が漂っていた。
ベッドの端に座った勇作は黙って両手を広げた。
二人は顔を見合わせると花を彷彿とさせる満面の笑み(心愛は元々表情が乏しいので口元が上がっただけだが)を浮かべ、ガウンを脱ぎ捨てて勇作の胸に飛び込んで来た。
心愛と花梨は両側から勇作を挟むように抱き付くと、ロリ体形であってもしっかりと主張している膨らみを押し付けながら彼にキスの雨を降らせた。
勇作は彼女達の髪を優しく撫でてキスに応え、二人の嬌声を響かせながら夜は更けていった。
翌朝、衛兵達と待ち合わせていた首都壁門前に集まった。
エルピーダは自動待機モードにして平原端に置いて来ている。
今回も全員で共和国首都内にある宮殿に向かう。
自動待機モードでは予め登録した者以外が接近すると、警告を発した後に自動で迎撃を開始する防衛機能が稼動する。
衛兵達には厳重にこのことを注意しておいた。
案内役の衛兵と合流した勇作達は用意された馬車に分乗して宮殿に向かった。
二時間ほどの行程で宮殿前の堅固な門前に到着した。
そこにはアサルド王国の王城で会った狐獣人である使者ガーダの姿があった。
「遠いところをお越し頂きましてありがとうございます・・お待ちしておりました、こちらへどうぞ」
ガーダは広い庭園を抜けて宮殿入口へと向かった。
勇作は後について行きながら庭園の世話をしている者達に視線を配った。
数人の男女が草花の剪定や雑草の除去等を行っているようだった。
(メイド長のシステアと約束したのだ、後で誰かにこの人達のことを聞いて見なければいけないな・・)
宮殿内に入った勇作達は広い通路を何度か曲がり、応接室であろう大きな部屋に通された。
ガーダは「暫し、こちらでお待ち下さい・・準備が出来次第お迎えに上がります」と言って部屋を出て行った。
入れ替わりにメイド服を着た女性達が入って来た。
見た目は獣人族と違って人族に近いが皆、透き通るような色白でスレンダーな身体つきをしている。
何よりかつての世界で語られていた空想と同じく、耳が人族よりも尖っていた。
興味深く見ている勇作に一人のメイドが話し掛けてきた。
「エルフ族をご覧になるのは初めてですか?」
「・・えっ?・・はい」
「そうですか、長寿であること以外はあまり人族と違いは無いのですが・・」
エルフメイド達はテキパキと何かのハーブであろう爽やかな香りのするお茶を煎れ、クッキーのような菓子を配膳して回った。
「お口に合えば良いのですが・・」と伝えて壁際に下がった。
スタイル抜群の女性達がメイド服を着て壁際にズラリと並んでいるのは壮観だった。
何とは無く彼女達を眺めていた勇作の横腹に花梨の肘が入った。
「うぐっ・・な、何する、んだ?」
「ふん!・・勇作があの女性達に気を取られているからですわ」
そう言うと花梨はプイッと横を向いてしまった。
メンバー達を見ると膨れている顔、苦々しい顔、赤くなって俯いている顔・・と様々だが歓迎されていないことは分かった。
勇作は横腹をさすりながら「特に何かある訳じゃないぞ?・・ただ空想の世界でしか知らないエルフ族の女性がいるからつい見詰めてしまっただけで・・」
「その上、メイド服なんちゅうもんを着てるからやろ?・・攻撃力満載やもんな、勇作?」いつものように志摩は的確に弱いところを突いて来る。
「そ、そうなんだー、私も今度メイド服着るー!」と勝手な解釈に走る陽鞠。
「・・私も着る?・・」と上目遣いで迫る心愛。
「あらあら、勇作の耳が真っ赤よ・・皆、少し虐め過ぎよ、でもそんなに好きなら今度メンバー全員のメイド服を作りましょうか?」と何気にとどめを刺して来る希美。
「ぐっ・・もう勘弁してくれ・・」
勇作の掲げた両手に取り敢えず矛先を収めるメンバー達だった。




