【二七】肉食女子達の覚悟
希美、志摩と初めての夜を過ごした翌日の昼頃、勇作達は王都に向けてトゴイル島を出航した。
トゴイル島からは島民総出で特産品を山程積み込んでくれた。
酒精の強い酒も樽で数十本を是非にと積み込まれた。
勇作達は島民の熱い見送りを受けながら、出航したのだった。
トゴイル島から王都のある港町ハミルブルックまではゆっくり進んでも三日と掛からない行程なのだが、出航直後からほとんど進んでいなかった。
オケアノスのダメージが深いのか?エルピーダに不測の事態が起きたのか?・・そのどちらでも無かった。
勇作達・・いや、今の女子メンバー達にとって王都凱旋などどうでも良かった。
それよりも遥かに優先されるべき問題が発生していたからだ。
それは・・当然、勇作との関係である。
トゴイル島出航前日、なんと希美と志摩は初めてを勇作に捧げてしまったのだ。
事情を聴く限り、勇作に落ち度は無く、希美達に押し切られてしまったのだろう。
だが、そんなことはどうでも良かった。
トゴイル島に極近い小島の入り江にエルピーダ、オケアノス両機は停泊していた。
女子メンバー達が言うには四日間はここから動かないと言う。
オケアノスよりエルピーダの方が艦内に余裕があるということで、メンバー全員がエルピーダに集まっていた。
夕食を済ませシャワーを浴びた勇作が自室に戻ると陽鞠と早苗が部屋を訪ねてきた。
二人を除く他のメンバーは交代で夜間哨戒を行うらしい。
陽鞠は黄色、早苗は薄紫を基調にした寝間着を着ていた。
そう言えば昨夜、希美は橙色、志摩は薄緑色の寝間着を着ていたことを思い出した。
各自それぞれの好み、自分の色があるのだろうか?
「勇作ー!・・来ちゃったよ、ドキドキが止まらないよー!」
そう言うと陽鞠はベッドに腰掛けている勇作の胸に飛び込んで来た。
勇作は彼女の爽やかな香に包まれた。
いつもは栗毛色のセミロングの髪をツインテールにしている陽鞠だが、今夜は少し濡れた髪を下ろしていて抱き締めると彼女の爽やかな香がより強く漂った。
「陽鞠はいつも一直線だねぇ・・でも私も今夜は遠慮しないからねぇ・・」
早苗は勇作の後ろから抱き付いて来た。
彼女からは痺れるような香に包まれた。これはいつも薬品を扱っているからなのだろう。
「ひ、陽鞠、早苗・・何をしようとしてるんだ?」
「何って、決まってるよー!・・勇作に抱いてもらうんだー!」「だねぇ・・」
「昨夜、希美達とあんなことになって今更言い訳は出来ないが、陽鞠・・早苗・・自分の言っていることが分かっているのか?」
「分かってるよー!・・私も勇作と仲良くなりたいよー!」
「し、しかしだな・・」
「勇作は私達じゃ嫌なのかねぇ?・・」
「・・そっか、希美達とは良いけど・・私達とは嫌なんだ・・」
俯いて、見る見るうちに陽鞠の瞳で膨れ上がる涙に勇作は慌てた。
抱き付いている陽鞠の手を解いて立たせた。
「そ、そんなことは言ってないぞ・・嫌な訳があるか、本当はこっちからお願いしたいくらいなんだ・・って何言ってんだ、俺は・・」
陽鞠から涙を一杯溜めた瞳で見つめられ、余裕を無くして行く勇作。
「そ、そんな瞳で見詰めるな・・全く、分かったよ・・本心を言おう・・俺も陽鞠を抱きたい、早苗を抱きたいと思う」
一旦、言葉を切って呼吸を整えた。
「でもな、良く考えてくれ・・女性にとって何より大切なものだろう?・・そんな簡単に・・」
「簡単じゃ無い・・良く考えたもん、それでも、私は勇作が好きなんだー!」
陽鞠は勇作の胸に文字通り突撃するように抱き付いて来た。
「ぐっ・・」
「はあ・・勇作、鈍いのもいい加減にしないと嫌われるよ?・・この部屋に来た時点でそんな覚悟は出来てるに決まってるんだねぇ・・」
「・・そうか・・早苗もそうなのか?」
「当然!・・今更だねぇ・・」
勇作は腕の中から心配げに見つめる陽鞠を見た。
その瞳には駆け引きや邪な気持ちなど微塵も浮かんでいなかった。
「未だ、どこかで逃げていたのかもしれないな・・俺の悪いところだな・・」
勇作は陽鞠を横抱き(お姫様抱っこである)に抱き上げてベッドへと静かに下ろした。
そのまま待っていてくれと陽鞠にアイコンタクトを送って早苗に近付いた。
「な、何かねぇ?・・」
勇作は何も言わずに早苗も横抱きに抱き上げた。
「きゃっ!・・急にだとびっくりするんだねぇ・・」
「ふふ・・早苗の可愛い悲鳴が聞けたのは役得だな」
「なっ!・・何を言うのかねぇ?・・ち、ちょっと驚いただけだねぇ」
顔を真っ赤にして言い訳する早苗。普段の冷静で澄ました表情と違って可愛い。
「早苗・・可愛いよ」「!・・だ、だからお世辞はいらないんだねぇ」
早苗を静かにベッドに下ろすと勇作は寝間着を脱ぎ捨てて、二人に覆い被さるようにベッドへ上がった。
「二人の気持ちは分かった・・俺も陽鞠、早苗のことが好きだ」
勇作は陽鞠、早苗を抱き寄せて時間を掛けてキスをした。
三人はお互いを確かめ合い、受け入れて愛の逃避行?第一夜は更けていった。
ちなみに希美と志摩との夜はフライング、抜け駆けをしてしまったため第0夜になる・・らしい。言っている意味が分からん。
翌朝、お決まりのようにギクシャクと内股で歩く陽鞠と早苗がいた。
メンバー達からは暖かく弄られ、讃えられていた。
勇作は少しでも王都に向かって進んだ方が良いのではないかと進言したが、女子メンバー全員に断固として拒否されてしまった。
そして第二夜、心愛と花梨が勇作の部屋を訪ねてきた。
「・・来た・・」「やっとこの日が来ましたわ・・」
何となく二人の瞳が妖しく光っているようで怖い・・。背筋に悪寒が走る・・。
見た目は微乳ロリっ子の二人だが、実はかなりの肉食系女子である。
心愛は水色の寝間着を全て脱ぎ捨てて勇作の胸に飛び込んできた。
慌てて抱き留めると心愛の甘いミルク臭に包まれた。
「あ、あ・・心愛、ズルイですわよ・・抜け駆けはしないって約束でしたのに・・」
「・・ふっ、甘い奴・・」
「キーッ・・心愛は全くですわ・・」
花梨は急いで薄桃色の寝間着を足元に落とすと、心愛を押し退けるように勇作の胸に飛び込んできた。
花梨から柑橘系の甘酸っぱい香に包まれた。
「・・花梨、邪魔・・」「そちらの方がですわ・・」
勇作の胸の少しでも良い位置を取ろうと二人は押し合いをしていた。
二人の香にクラクラしながら、二人の頭に手加減した拳骨を落とした。
「「コツンッ・・」」「「・・痛いっ・・」」
かなり手加減したので涙目になるほどでは無かったがそれなりに痛かったらしい。
不服そうに上目遣いで見上げてくる二人に宣告した。
「これ以上喧嘩するなら、すぐに自分の部屋へ帰れ!・・」
「「!・・ごめんなさい(ですわ)」」
「分かれば良い・・喧嘩するなら叩き出すからな」
二人が同時に頷くのを確認した勇作は改めて二人を抱き締めた。
「ありがとうな心愛、花梨・・何か最近お礼ばっかり言ってる気がするが、俺の率直な気持ちなんだ」
心愛、花梨とキスを繰り返した。
「・・勇作、抱いて・・」「勇作、抱いて欲しいですわ・・」
「分かった・・」
これ以上の言葉は必要無かった。
その後、順番を巡って言い争いがあって、再び拳骨を喰らうという一幕もあったが。
何だかんだ言ってもこの二人は仲が良いのだ。
翌朝、もうお決まりのギクシャク、内股歩きの心愛と花梨にメンバー達からの手荒い歓迎があった。
勇作は再度、少しでも王都に向かって進んだ方が良いのではないかと進言したが、またしても女子メンバー全員に断固として拒否されてしまった。
物事の優先順位としてそれで良いのかと悩む勇作だった。
第三夜は何と初音と花江が部屋を訪ねて来た。
勇作のことを好きだと言ってくれた二人だが、そこは大人の女性である。
彼のことを好ましいとは思っても若い心愛達とは違って、一線を越えるのを躊躇すると思っていたのだ。
「私も来てしまいました・・迷惑でしたら帰ります・・」と顔を赤くしてもじもじと話す花江。
「無理は言いたく無いから、連夜で疲れているだろうし・・」と照れ隠しなのか顔を赤くしながらもツンツンとした物言いをする初音。
花江は栗毛セミロングで三十歳になる巨乳持ちの控えめなおっとり癒し系美女だ。
初音は黒毛ロングで三十二歳になる美乳持ちのインテリ系ツンデレ素養のある美女だ。
異世界に飛ばされて以来、二人の女教師は黒子に徹して皆を支え続けてくれた。
突拍子の無い行動をするメンバー達を前に出ること無く、暖かく見守ってくれている。
二人がいてくれたお陰でどれ程、精神的な支えになったことか。感謝しか無い。
それを伝えると「そんなこと無い・・私達の方が助けてもらっているもの」「そうね、私達だけじゃとても支え切れなかった・・感謝してるのはこっちよ?」と返されてしまった。
勇作はもう言葉は不要と寝間着を脱ぎ捨てて両手を広げた。
花江は赤い寝間着を、初音は黒い寝間着を床に落としてそっと彼の胸に抱き付いて来た。
二人をベッドに誘い、抱き合いながら倒れ込んで覆い被さった。
聞いたところ、二人ともにはじめてだと言う。
「この人ならと思うような出会いが無かったのよ・・でも勇作くんとなら・・」
「仕方が無いじゃない・・私だって焦ってたのよ?・・でも勇作くんがいるから・・」
年上の女性から率直に求められるのは男として素直に嬉しい。
勇作は二人を抱き締めると長いキスをした。今夜も中々眠らせてもらえそうもない。
翌朝、大人な花江と初音は、ギクシャクと内股で歩くこと無く食堂に現れた。
満面の笑みを浮かべて肌ツルの花江、はにかみながらも澄ました表情を崩さない、でも同じく肌ツルの初音。
隠しきれない充足感が滲み出てしまっている。メンバーは皆、苦笑いをして見守っていた。
勇作はと言うと、希美達を入れれば日に二人ずつ連続四日愛を交歓したことになる。
疲労のため朝食までに起きることが出来なかった。
心配したメンバー達は愛理に様子を見てくるように促した。
尻込みする愛理を宥めすかして、朝食を届けさせることに成功した。
「おはようございます、勇作くん・・朝食を持って来ました」
「・・」「勇作くん?・・」
もう一度、声を掛けてから部屋にそっと入って行った。
部屋の中はカーテンが閉められているので薄暗い。
ボンヤリ見える勇作は未だ寝ているようで、微かに寝息が聞こえる。
「やだ・・何か夜這いしているみたい・・」
テーブルに朝食を置いて勇作に近付いて行くと、彼を間近に見た瞬間、固まった。
「・・!」
布団ははだけていて辛うじて腰回りに巻き付いている。上半身や太腿から下は裸のままだった。
愛理は声を上げないように両手で口元を押さえたまま、でも勇作から目を離せないでいた。
引き締まり筋肉質な男の上半身。愛理は自身の顔が火照るのを感じた。
普段はキリッとした表情の多い勇作だが、今はどこかあどけない表情で寝ている。
「・・やっぱり勇作くん、格好良いな・・今は寝顔が可愛い」
ベッドサイドに近づくと、勇作の引き締まった胸にそっと頬を寄せた。
勇作の心臓の規則正しい音が聞こえて来る。生きているんだと実感した。
寝返りを打った際に愛理は、避け損ねて彼の腹部に下顎を打ってしまった。
「・・痛っ・・」「う・・ううん・・ん?愛理か、どうしたんだ?」
勇作は目を覚まし、自身の腹部に顔を乗せている愛理を確認した。
「えっ・・あの、その・・そうです、朝食を持ってきたんです」
慌てて勇作から離れて朝食のトレーを指差した。
「ああ、もうそんな時間なのか・・疲れてて寝坊してしまったんだな」
勇作はベッドを下りて立ち上がった。
「キャッ・・ゆ、勇作くん!」「・・ん?ああ、すまん」
立ち上がった勇作は下着一枚の姿だった。
真っ赤になって顔を手で覆う愛理を気にしながら、ガウンを羽織った。
「今日の朝食はBLTサンドか・・ふむ、相変わらず美味いな」
「あ、後でトレーは流しに出しておいて下さい・・じゃ、これで!」
愛理は逃げるように彼の部屋を出て行った。




