【二一】心愛、花梨と花江、初音
「次は、心愛・・」「・・うん・・」
「今回、心愛には他の開発にも手を貸してもらいながらのオケアノス開発だった・・俺も少し焦り過ぎていたのかも知れない、無理をさせてすまなかった・・」
「・・大丈夫、物作りは得意・・」
「分かってる・・それだからこそ頼んだんだが・・モノには限度というものがあることを思い知らされたよ・・でも、オケアノスを完成させてくれたこと、ありがとう・・」
「・・うん・・」
「心愛が俺のことを好きだと言ってくれて嬉しかった・・そして俺は心愛に何もしてやれていないことにも気付いた、何の助けにもなっていない・・本当に俺で良いのか?」
「・・うん、勇作が良い・・勇作が褒めてくれるだけでやる気が出る・・」
「ありがとう・・俺も心愛のことが好きだよ・・」
勇作は小柄で黒髪ショートの心愛を抱き上げるように抱き締めると、心愛は勇作の首に腕を回した。
おでこにキスをしようとした、その時、心愛から首を固定され・・またしても唇を奪われた。
「・・ムグッ・・」「チュパッ・・」
「「「「・・ああっ・・」」」」
メンバー達もまさか心愛までもが勇作の唇を奪うとは予想しておらず、志摩を除く全員が固まった。
唇が離れて、暫し見つめ合う勇作と心愛。
心愛は普段見せないような満面の笑みを浮かべて舌舐めずりしながら「・・ご褒美・・」と勇作の首から腕を解いた。
「・・全く、油断も隙も無い・・が、ご褒美と言われては・・しかたないか」
動揺しながらも勇作は懸命にもやもやを振り切って次に進んだ。
「・・次は・・花梨・・」「・・はい、ですわ・・」
勇作は花梨を見つめて「花梨にも専門外のエルピーダの開発を担当してもらった・・大変だったと思う」と労りの言葉を掛けた。
「そうね・・今までで一番大変で過酷だったかも知れないわ」
「そうだろうな・・何度、壁にぶち当たっても諦めずに良くエルピーダを開発してくれた・・でも、花梨が倒れた時は本気で開発を止めようと思った」
「その節はごめんなさいですわ・・」
「いや、謝るのは俺の方さ・・専門外と分かってて・・苦労をさせてしまうのが分かっていて頼んだんだ・・すまなかった、そして・・ありがとう」
「少し入れ込み過ぎたのは私の落ち度ですわ・・勇作は何も悪くない、苦労するのが分かっていて請け負ったんだもの・・そんな苦労は・・勇作から褒めてもらえれば・・それだけで良いの・・」
上目遣いに勇作の表情を伺う花梨はほっそりした身体もあって儚げで美しかった。
「ゴ、ゴホン・・そう言ってくれるのはありがたいが・・苦労させてしまったことは事実だ、反省してる・・花梨から・・好きだと言ってもらえたこと、光栄に思う・・俺も花梨のことが好きだよ」
勇作は花梨を優しく抱き締めた。金髪、ロング髪の花梨からは柑橘系のような甘酸っぱい香りがした。
彼女のおでこにキスしようとして、ほっそりしたしなやかな手に唇を遮られた。
「・・??」「不公平ですわ・・」
「ん?・・何が不公平なんだ?」
「全くもう・・勇作、あなたという人は・・本当に女子の気持ちに鈍いのですわね・・わ、私も心愛と同じように唇に頂きたいですわ・・」
花梨は頬を真っ赤に染めながらも勇作をジト目で見上げながらそう言った。
「い、いや、しかし・・あれは心愛が・・」
それを聞いた花梨は急に瞳から零れんばかりの涙を溜めて「私にはして下さいませんのね・・」と呟いた。
一斉に刺すような非難と言う名の威圧をメンバー全員から浴びる勇作。
「す、すまん・・そういうつもりじゃ無いと言うか・・悪かった、あれは心愛がしてきたことだと言いたかっただけなんだ・・」
勇作から視線を外さない花梨の瞳から涙が零れ落ちた。
メンバー達からの威圧は凄まじいものになっていた。
「わ、分かったから・・皆、心臓に良くないから威圧するな、勘弁してくれ・・それと花梨、今までにキスしたことは無いと言っていたよな?」
「ありませんわ・・」「初めてが俺で良いのか?」「違いますわ・・勇作が良いのですわ」
暫し、見つめ合う勇作と花梨。「・・分かった」。
勇作は覚悟を決めた。花梨を少し抱き上げるように唇を重ねた。
彼女の甘酸っぱい柑橘系の香が勇作を包んだ。
二人の唇が離れた。「・・あ、ありがとうですわ」と花梨は頬を染めて俯いた。
花梨と離れた勇作はふと、背中にいくつもの殺気を感じて身震いした。
その後、勇作はおでこにしかキスしていない希美、陽鞠、早苗、心愛と愛理の五人から押し倒されるように唇を次々と奪われた。
やっとの思いで彼女達から解放された勇作は女教師達に向き合った。
「・・はぁはぁ・・好き放題してくれて・・全く、肉食女子達め、少しはこっちの身にもなってくれ・・ふぅ、最後になってしまいすみません、先生方・・」
「あ、あのう・・私達は別に・・」「そ、そうよ・・彼女達が優先で良いのよ・・」
花江と初音は頬を染めながら、教師という立場と大人という立場から自ら身を引くと言い出した。
「ちょっと、待って頂けるかしら?」
花梨が勇作と女教師二人の間に入り、彼女達に向き直った。
「何故、遠慮するのですか?・・先日、皆で話し合った時はあんなに勇作を好きだと言っていたではないですか?・・違いますこと?」
「あわわ・・そ、それは言わない約束で・・」「・・確かに言いましたね・・でも・・」
「でもも何もありませんわ・・勇作が好き、それで良いではありませんか」
「勇作くんの周りには貴女達がいるもの・・」「そうですね、流石に七人の女性がいる中には・・ちょっと・・」
「・・じゃあ、勇作は頂くだけ・・」と心愛。泣きそうになる女教師達。
「先生達も私達に混ざっちゃいなよー!」と陽鞠。ぱぁっと表情が明るくなる女教師達。
「ここは素直になれば良いんじゃないかねぇ・・」と早苗。途端に表情の曇る女教師達。
「こんな世界やから、前の世界の常識なんてあって無いようなもんや・・」と志摩。涙ぐむ女教師達。
「あらあら、先生達が泣き出しちゃったわよ?」と希美。
「先生、私達は勇作くんを独占するつもりはありません・・ここにいる皆は同じ男性を好きになった者同士じゃないですか・・私達七人に先生達お二人が加わって九人になってもさほど変わりませんよ?・・」
頬を涙に濡らす女教師達は七人の少女達を見回した。
全員が女教師達を見て頷いた。
皆が自分達を受け入れると言ってくれる。一緒に未来を歩こうと言ってくれる。同じ男性を好きになった同士だと言ってくれる。
「・・あ、ありがとう・・」「・・皆には感謝の言葉しか無いわ・・」
堰を切ったように泣き出す花江をよしよしと頭を撫でて「苦しかったわね・・でももう大丈夫」と希美。
「・・でも、本当に良いのかしら?」と不安な顔を見せる初音に勇作は答えた。
「実際のところ、俺もピンときていないと言うか・・こんな経験初めてですし・・ただ、これだけは言えます、先生達を含めて皆を幸せにしたい」
花江と初音は勇作を見つめた。
彼はそういう男性なのだ。責任感が人一倍強く、行動力、統率力に優れ・・そして何より暖かい。
「花江さん、初音さん・・貴女方から見れば俺なんてまだまだ若造も良いところだと思います・・でも、こんな世界に突然飛ばされて文字通り苦楽を共にしてきた何より大切な仲間です」
「・・ありがと」「そうね・・」
「先生方から俺のことを好きだと言ってくれた時は・・他のメンバーの時もそうでしたが、それ以上に信じられませんでした」
「・・本当よ・・」「私自身も未だに信じられないわ・・でも、この気持ちは本物よ」
「ありがとうございます・・年上のお姉さんにそう言ってもらえると俺も男として少し自信が付きますよ」
「・・勇作くん・・格好良いんだもの・・」「頼りになる存在だわ・・くらっと来ても仕様がないわね」
「正直なところ直球過ぎて・・反応に困るんだけどな・・」
黙ってやりとりを見守って来た花梨が前に出た。
「勇作、先生方もああ言っているのですわ・・私達と同じように・・ほら、しっかりしなさい!」と尻を叩かれた。
「痛っ・・って何をするんだよ?・・全く、俺の気も知らないで・・こういうのには覚悟がいるんだよ、覚悟が・・」
「・・覚悟出来た?・・」「早くしろだねぇ・・」心愛と早苗が煽る。
「・・分かってるって・・ゴホン、まだまだ頼りないとは思いますが、俺も・・先生方のことが好きです・・これからも宜しくお願いします」と勇作は頭を下げた。
「あら?・・それで終わり?」「勇作!・・しないのー?」希美と陽鞠が更に煽る。
「い、いや・・さすがにそれは・・」年上の女性への告白には同年代の女子に対するのとは違った緊張感があった。
「今更ですわ・・」「ヘタレやな・・」「勇作くん!ガンバ・・」花梨、志摩の突っ込みと愛理からのエール。
背中にメンバー達の視線を一身に受けながら花江の前に立った。
「・・先生・・」「・・な、名前で呼んで下さい」勇作は背中に冷や汗を掻きながら。
「・・花江・・さん」「・・さん、なんて要らない・・」更に冷や汗を掻き。
「・・花江・・」「・・はい・・」と花江は頬を染めて上目遣いに答えた。
「色々と気遣いありがとうございました・・そしてこれからもよろしくお願いします・・」
「・・うん、頑張るわ」
花江は勇作の胸に身体を預けると見つめながらゆっくりと目を閉じた。
これはもう後戻りは出来ない。覚悟を決めた。
花江を抱き締めると仄かに漂う石鹸の香に包まれながら、目の前にある彼女の唇にキスをした。
柔らかな花江の唇は微かに震えていた。
抱擁を解くと花江の瞳は涙に濡れていた。
「・・先生?」「・・名前で呼んでって頼んでるのに!・・でも大丈夫、嬉し涙だから・・」
後悔している訳では無いことにホッとした。続いて、すぐ横にいる初音と向き合った。
「わ、私のことも・・な、名前で呼んでね・・」「はい・・初音・・」
勇作が名前を呼ぶと初音は真っ赤になって俯くと、勇作の胸に飛び込んだ。
受け止めた勇作は初音が落ち着くまで待ち、上目遣いに初音が見上げたタイミングで唇を重ねた。
「うっ・・」突然のキスだったが、初音はゆっくりと瞳を閉じた。身体は強張ったままだった。
二人の唇が離れ「・・強引なのね、勇作くん・・私、初めてなのよ?」と頬を染めて俯いた。
「えっ?・・そうなんですか?・・」「な、何よ・・仕様がないじゃない、出会いが無かったんだから」
「べ、別にそんなことは思っていないですよ?」「・・そ、そう」
「今までありがとうございます・・そしてこれからもよろしくお願いします・・」
「分かってる・・精一杯頑張るわ・・」
結局、メンバー全てとキスすることになってしまった。
「いったいこの先どうなるんだ・・」




