スパイの報酬は……
街を行き交う人々、きっと今の時間的に朝の通勤。
作業服を着た男達は、職人街へ……城壁工事へ、そんな方向へと消えて行く。
今までの俺と、同じ様な暮らしぶりだった。
スパイとしての活動が始まる前の。
ルイス王国の草、そんな俺に課せられた任務は完遂された。
報酬も、今までの金銀貨と同量の……宝石という大盤振る舞い!
地球換算だったら、宝くじ1等当たりました、ぐらいの額。
この世界でも一生遊んで暮らせるぐらいだ!
ただサンドラ王国に来る事、という条件はある。
……だが、それをブッチしてどっかに隠居するのだ!
それもそうだ、だってまたスパイ活動させられたら溜まったもんじゃないし!
ちゃんと仕事したから許して、の精神で今から逃げるところなのである。
チャリンッ……チャリンッ……
ひとまずの路銀を、と買い取ってもらったその代金が詰まった袋。
それをポンポンと上に投げながら、考え事をしていた。
「カミーナか、サルロトとか?アルバス王国は……やめとこうか」
「あら、サンドラ王国じゃないの?」
「いや、そこに行かないために考え……あ?」
逃げる先の国を独り言として、口に出しながら考えていたら誰かと会話になっていた。
しかも……聞き覚えがすごいあるし。
でも流石にいる訳が……と思いながら振り向くと、
「……何でいるのさ」
「私が王都にいてはいけないかしら?」
「いや、そうは言ってないけど……」
普通にハーティアがいた。
メイクで印象は可愛らしい方向へ、ガラリと変わっているけども。
雰囲気で……というか、声を聞いたら流石に一発で分かってしまう。
そしてその手に握られているのは、俺が持っていたはずの貨幣が詰まった袋である。
大通りでは人目が多いという事で、一旦路地に入った所で仕切り直す。
「……まず、どうやってここまで来たの?」
「変装して、屋敷から抜け出して、そのままキースの家に。
そしたら貴方が出かけるところみたいだったし、ずっと後つけてたの」
……それはもう、ストーカーじゃないか?
確かに彼女の変装技術ならば、抜け出すぐらいは出来るだろう。
きっと今頃、バタイユ家の屋敷は大騒ぎだろうけど。
「……目的は?」
「そう言えば報酬貰ってなかったなと思って。
私と一緒に仕事やったんだから、半分こ……でしょ?」
バタイユ家なら、金を湯水の様に使えるじゃないか……。
そう言いたかった気持ちもあるけども、彼女の貢献度は確かだ。
だからリュックから取り出した宝石を、半分包んで彼女に渡す。
「ど〜も、……結構貰ったのね?」
「そうそう。流石に任務としてはデカかったからね」
今回のモノを全てを総括しての報酬だからだ。
まあ渡すのは少し惜しい気持ちはあるけども、どうせ使えきれないだろうし……いっか。
「ふ〜ん……そう言えば、サンドラに帰らないのよね?」
「そうだね」
「じゃあ、これから前に言ってた田舎暮らしでもするの?」
「……よく覚えてたね。
まあ、そんな感じで生きていこうかな?」
彼女の口から出てきたのは、予想外の出来事。
確かにそんな話したな〜、ぐらい薄い記憶しか残っていない。
「ちなみに、それって……報酬になるのかしら?」
「まあ、報酬と言えなくないかも?
一応、任務を果たさなければ貰えなかったモノだし」
「……そうよね。じゃあ」
「その生活も、私と半分こ……よね?
「……はぇ?」
明日のラスト1話で完結となります。




