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『完結』婚約破棄令嬢 家柄……今は× 資金……今は× スパイ適正……◎ 〜家を追い出された令嬢が敵国のスパイと手を組み、破壊工作で祖国を滅ぼすまで〜  作者: お汁粉パンチ
バタイユ家の侵略編

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フェイク動画


「コラ動画?何だそれは?」


 当たり前だけど、この世界では英語は使われていない。

 だからフィエルメには、全く伝わっていなかった。


 そのため、未知のモノへの警戒感からかその足を止めてしまう。

 だがこの状況では致命的。

 こちらが作り出した映像が、この場にいる者達の前へと流れ始めた。


「……なっ……な、な……何だ、これはっっっ!?!?」


 

 幻影で作られた画面に、1人の女性が映されていた。

 それは赤毛を腰の辺りまで垂らし、黒色で透け透けのレースを身に纏ったなんとも扇情的な格好をした女性。

 そんな彼女は白い指を銀色のポールに滑らせ、体を柔らかく揺らす。

 きっと街の片隅にある酒場ぐらいでしか見られない光景。


 そのポールダンスを踊る彼女。

 顔はずっと、丸見え状態だった。


「おい……あれ」


「ああ、見間違いかと思ったが……」


「まさか、フィエルメ……様?」


 ここへ集まった人間達の間へ、どよめきが走る。

 何度目を擦っても、顔はものすごく見覚えのあるモノから変わらないのだから。


「違うっっ!私ではないっ!!」


「いやいや。それ、この暴露後毎回言われるんですよね〜」


「サマヨエルっっ!!」


「おや、殴りかかってきてもよろしいのですか?

まるで本当の事を晒されて、怒っている様にしか見えませんが?」


「くっ……でもっ……いやっ、しかしっだな……」


 怒りに我を忘れそうになった彼女も、その釘挿しをされては動けず。

 頭を抱えて、うんうんと唸るしかなかった。


 その間も映像が止まることは無く、衛兵も住人も男は皆釘付けである。

 高嶺の華と思われていた王女様、そんな彼女が見せる痴態なのだから。


 ……当たり前だが、これは本物ではない。



 コラ動画


 それは現代の地球において、画像編集によって他人の画像を切り貼りしたもの。

 笑えるものもあれば、今回の様にあたかも本人のR18画像の様に仕立てるモノもあった。

 そして中には、よく観察しなければ見抜けられないほどのクオリティのモノも時折存在する。

 

 

 昔エッチなビデオで見たポールダンサー、に扮する女優。

 その顔を、フィエルメ王女と入れ換えたモノが、現在上映されていたのだ。


 普段使っている幻影は、生身の人間のつけても違和感がないぐらいのクオリティなのだ。

 映像との合成なんて朝飯前、クオリティも胸を張れるレベルである。

 ……まあ、やってる事は胸を張れないのけれど。

 

「くっ……お前達!これはっ、あちらの偽の動画だ!

ただこちらを撹乱しようとしているだけに、過ぎない!」


「い、いえ……でも、しかしながら……」


 男達が集まっている方向へ、彼女は振り向きながら叫ぶもあまり届いていない様子。

 それもそうだ、フェイク画像なんて概念は異世界にはない。

 そもそも幻影を使って動画にする、という事自体が異例なんだから。


 だから彼らは、画面を食い入る様に見ていた。

 まるでこの光景を目に焼き付けるかの様に。



「もういい!今すぐ殺してっやる!!」


 あまりの屈辱、だが抵抗も許されないこの状況。

 それは少し……彼女を追い込み過ぎた。

 

 完全にブチギレた様子で、もう話を聞いてくれそうな態度じゃない。


「ではっ、一足先に失礼!!」


 懐から取り出したのは、数個の煙玉。

 勢いよく叩きつけ、


 ボンッッッ


 爆発音と共に、白煙が通路を支配していく。


「そんな小細工っ、効くと思っているのかっっ!!」


 だが先ほどより量が多くとも、彼女のやる事は変わらなかった。

 人間が立っていられないほどの突風、それは容易に煙を晴らしてしまう。

 

 ただ先ほどまで立っていた場所にはもう、サマヨエルは……いない。


「どこに消えた、あいつはっ!?」


「フィエルメ様!下水がっ、空いております!」

 

 先ほどまで映像を見ていた彼も、風に頭を冷やされてか正気に戻ったらしい。

 そして彼の指を指す先には、道路に置かれた下水の蓋が開けられたまま放置されているのが確認された。


「くそ……私は中に入るぞっ!

お前達は、全ての出入り口を封鎖していろ!」


「おやめ下さい、フィエルメ様!

流石に下水へ王女様が入られるのはっ」


「うるさいぞ!お前達、あんな偽物動画に釘付けになっていただろ!

そんな奴らに任せられるか!」


 取っ組み合いになりそうな程にヒートアップした喧嘩。

 そうして衛兵達の制止を振り切り、フィエルメは下水へと消えていく。


「……俺たちも、行くぞ!」


「「「「おおおお!」」」」


「お〜!」



 上に残った衛兵達には、下水の入り口を塞ぐ仕事がある。

 そのためまだ数百人ほど、この広場にいた。

 そんな中に、俺は幻影で紛れ込んでいたのだ。


 そう……下水の蓋は、ただのフェイク。

 開けただけで、煙玉は衛兵達にまぎれこむためだけに使ったのだ。


 そうして俺は衛兵の格好をして、他と同じ様に各地へ散っていく。

 

「じゃあ、ちょっと俺はトイレに……」


「おう、じゃあ先行ってるぜ?」


 一緒に行動していた人間は、特に気にする事なく未知の先へと行った。

 声は……少し意識して変えたぐらいだけども、きっとあちらは気にしていない。

 やっぱり先入観が、ここにサマヨエルがいるはずないと思わせているのだろう。


 これで任務は成功。

 後はルンルン気分で家に帰るだけ……



「おや、どこへ行くのかな?……サマヨエル君?」


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