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舞台裏


 サミーユ伯爵夫人とナックレー子爵の不倫。

 そのニュースは直接目にした平民だけでなく、貴族界隈でも大きな話題として取り扱われた。

 

 そしてこの問題に一番怒り狂ったのは、もちろんサミーユ伯爵。

 自分の妻を寝取られた、というのもあるが一番は、男としての格付け。

 

 サミーユ伯爵が不甲斐ないから、ナックレー子爵へ懸想したのではないか?


 ただの下世話な、外野からの評価。

 普段なら一蹴するような内容だが、今の彼にとってそんな事は許せなかった。

 同じ……第一王女派閥、その弟分にしていたナックレー子爵に裏切られたのだから。


 その処罰は永久的な接近禁止、そして多額の賠償。

 この不倫には伯爵夫人が自家から連れてきた侍女も関わっており、その者たちは牢に繋がれる事となった。

 

 言ってしまえばただの不倫。

 きっと暴露されずに気づいていたならば、互いの家で秘密裏に終わらせれた問題。

 だがこうして王都中にばら撒かれてしまっては、軽い罰で手打ちにするという選択肢は取れなかったのだ。

 同じ貴族とはいえ、間男を罰せれないとなっては貴族としての沽券にも関わってくるのだから。


 その問題からサミーユ伯爵夫人とナックレー子爵の顔からは、貼り付けた様な笑み以外見る事が出来なくなった。

 調査によれば2人の関係は秘密裏に、学生時代から続いていたそうな。


 

 王都中を巻き込んだ貴族同士の不倫事件は、こうして幕を閉じたのだ。

 

 だが他の貴族たちは、今回の話題を上げる中で内心頰を引き攣らせていた。

 脛に傷を負っていない者は少なくないのだから。

 口にしたならば自分の傷を突かれてしまう、そんな利害関係で黙っていただけ。

 

 だが今はどうだ?


 サマヨエル、きっとどこの陣営にも属していない。

 ならばソイツを通して告発し、ライバルの失脚を狙えるのでは?

 そう考える者も少なくないだろう。

 たとえ猛毒でも、上手く御すればかなりのリターンを得られるのだから。


 そうして貴族たちは、秘密裏に4大通りへと使用人を派遣する。

 ここで得られた情報が、これからの政治に作用するのを肌に感じていたのだ。

 

 生き残っている貴族たちも、長い間家を守り続けた怪物に違いないのだから。

 こうして暴露TVは……今ルイス王国で、最も熱い場所へと変わったのだ。




『我々は1人では無力である。

だが、結果を見てみればどうだ!』



『我々の刃はっ!貴族にも届きうる、それを今回っ!証明して見せたッッ!!』


「「「「うぉおおおおおお!!!」」」」

 

「オレたちも、貴族と戦えるんだ!!」


「ありがとう、サマヨエルッッッ!!!


「「「「サッマヨエル!サッマヨエル!サッマヨエル!」」」」


 熱は最高潮。

 

 サマヨエルコールさえも、始まるほどに。

 

 催眠か何かを受けた様に、熱は冷めない。

 だが、全員精神には何も受けていない。


 ただスキャンダルの暴露という、公開処刑。

 血の流れないこの方法に、ブレーキは一切効かないだけなのだ。


『では、次の発表をしようではないか!』


 そうして彼らは空を見ながら口を開き、ゴシップ(エサ)を待つのだった。







 ガチャリ……


「ふぅ……」


「お疲れ様、今日も楽しそうだったわね」

 

「まあ、それなりに?」


 彼女の言葉に答えながら、サマヨエルとしての衣装を脱いでいく。

 

 実際自分の行動で大勢を扇動できているのは気持ちいいのは確かだ。

 ……ゴシップは正直そんな好きじゃないからアレだけど。

 

「あちらさんは、どう動くかしら?」


「まあ、血眼になって探す……というかもう探しているだろうね。

とはいえ、証拠は残ってないけどさ」


 あの映像は幻影を使ったもので、こちらの家から映している。

 だから探そうにも、そのとっかかりすら無いのだ。

 もし見つかるのであれば2択、

 

 こちらが不手際で顔を晒してしまうか、あちらが家宅捜索でサマヨエルの衣装を発見する、これだけ。


 そのため、よっぽどの事が無い限り大丈夫だろう。

 

「計画通りには、いっているようね」


「それは、もちろん。

……まあ、情報集めが大変すぎるけど」


 当たり前だが、ゴシップ屋なんて無い。

 まあ情報屋はあるんだけど、使ったら足がつく。

 そのため2人の足で……あと、もう1人で集めたものだった

 

 そうリンゴの繋ぎ役の彼女だ。

 今回の不倫ゴシップを持って来てくれたのは本当に大きい。

 これで、貴族社会にヒビを入れれただろう。

 ……本当にこんな情報、どこから持ってきたんだか。

 聞いてみたいけども、きっと企業秘密だろう。


 まあ、それは置いておいて……


「いやあ……あの情報の公開、どうなるかな?」


 今回のモノは全て、カモフラージュ。

 本命の情報を漏らすための、添え物に過ぎないのだから。



「それはきっと……面白い事になりそうね」


 ハーティアは、ニヤリと口角を上げて笑うのだった。

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