暴露系配信者?
「今日から、暴露系配信者になろうと思う」
「一言一句分からないわね」
そんな話を持ちかけたのは、一ヶ月ほど前の事。
久しぶりに祖国……サンドラ王国から司令が届いたのだ。
それは何とも困る内容だった。
『全て一任する』
そんな見出しで始まったのだから。
……言ってしまえば丸投げである。
一応支援などは頼めばやって貰えるらしいが、今までと違ってこちらが情報を調べ……そして考えて動くという形。
責任の重さは段違いで、
「ははっ……」
つい口の端を引き攣らせてしまうけれど。
とはいっても、断るという選択肢はこちらにはない。
自由にやれると前向きに考えるしかないか。
そうしてハーティアにも読んでもらったところで、
「まずは、現状確認からしていこうか」
「ええ、そうしましょう」
方針を決める為の話し合いから始める。
「まずは、王国内で起きてる小競り合いかな?」
「予想通り、結構溜まっていたのね」
カルメン領の反乱が起きてから数ヶ月。
その真実が広まった事で、〇〇領で領主と民の間で小競り合いが起きている、そんな噂が王都まで流れてくる様になった。
それは1つだけではなく、各地から。
彼女の言う通り、表には出なかっただけで不満は結構溜まっていたらしい。
小競り合いが起きた地域を地図に照らし合わせると大体国境に面した領地。
他領よりも税金が高い、そんな単純な不満だけども、人を行動させるだけのパワーはあったみたいだ。
「ここまで、上手くいくとは思わなかったけど……」
あくまで本当に不満が溜まっているのかを調べたかった、その程度の気持ち。
別に彼らの領地へ潜入して、煽ったり交錯したりはしていないのだし。
ただ彼女に言わせてみればそこまで以外でもなかったらしく、
「まあ、随分長い事戦っていますから。
それに戦時中の領地の子も、学園時代に手の込んだ装飾をつけていましたし」
学園時代の話という角度から、その理由を紐解く。
やはり異世界も戦は儲かるのだ。
とはいっても、本来であれば当事者は儲からないはず。
だって、戦費の負担もバカにならないのだし。
だがそこは権力が集中している異世界、増税なんていとも容易く出来てしまう。
それにこれはあくまで王家の軍を支援という形で、矢面に立たなくて良い。
あくまで王国の騎士団の戦い、なので勝敗の責任まで負ってくれるのだ。
そのため結構美味しい立ち位置なのだった。
……ただそれは、領主側の思考。
領民からしてみれば堪ったもんじゃない。
日常的に甲冑の見知らぬ騎士たちが街を彷徨き、いつ敵軍が街へ攻めてくるかも分からない。
物資は優先的に軍へ売られて値段は上がり、税金は重くなる。
どう考えても良い事はない。
強いて言うなら、精鋭の騎士団が駐留しているため他国から攻められても安心という事ぐらいだろうか。
……ただ、そ軍を狙っていて民は狙う気はなかった、そんな攻撃に巻き込まれる危険性もあるため、一長一短ではあるけども。
というのが、あの反乱からの一連の流れ。
多分出来事としては、一番大きなモノ。
「後は、王位継承戦かしら?」
「そっちはアレだね、一騎打ち状態。
シュタイン王子……というよりバタイユ家と、第一王女のフィエルメ様の戦いって感じかな」
「よっぽど反乱の衝撃が大きかったみたいね」
彼女の言う通り、カルメンでの反乱は貴族側にとってもかなりの脅威を生み出した。
明らかに、あの事件の前後で国の荒れ方が違うのだから。
そして鎮圧しようにもタダではなく、領民を罰するのだからむしろマイナス。
外へ助けを求めようにも、他領も自分の場所を管理するので精一杯であり、王なんて反乱を起こした軍を罰しなかったのだからむしろ敵とみなす方が自然だ。
……彼らも、表立っては言わないだろうけど。
とはいえ、手に余る案件なのは事実。
そのため彼らは、王位継承戦での支持を土産に庇護を求めたのだ。
それが俺のあげた二勢力、
平民からの圧倒的な支持を持つ王女フィエルメ。
彼女の支持を約束すれば、民衆も多少は収まるだろうという判断だそうだ。
それに強力な軍を持つため、最悪の事態は避けれるだろう。
宰相を務める、バタイユ家。
かの家は、海運の貿易により莫大な富を築いている。
そしてあちらはむしろ大々的に、こちらの支持を約束したならば多額の支援を約束すると発言したのだ。
そのため、金銭的に余裕のない貴族たちはこぞって身を寄せた。
やはり金に余裕があるため、上納金などを求めてこないのも大きい。
ただ彼らはあくまでバタイユ家の支持であり、シュタイン王子を支持を選んだ訳じゃない。
何とも言えないが、ハーティアへの婚約破棄から始まるやらかしが目立ってしまい、助けを求めるのは危ないのでは?との考えみたいだ。
……そもそもカルメン領に火種を撒いたのは、元はと言えば彼のせいなのだし。
「フッ……良い気味ね」
そんな学園時代は将来の国王間違い無しと言われていたシュタイン王子。
その株があの婚約破棄から落ちる一方なのは、どうやら気分が良いみたいだ。
実際カルメン現男爵と教会の仲裁も出来ていないようだし、能力が疑われてしまうのも仕方ないだろう。
セーラとの色ボケ噂話はその最中も、しっかり聞こえてきたし。
「そんなところかな。
……ああ、あとフィエルメに気をつけろってさ」
その言伝を口にした瞬間、彼女は目を見開く。
「まさか……バレたの?」
「いや推測らしいけど、ハーティアと誰かっていう所まではバレててもおかしくないってさ。
最近開かれたパーティーは、俺たちを嵌める罠があったらしいよ」
結構大規模な戦勝記念パーティー、そこにフィエルメが参加するという情報は独自に得ていた。
ただ指令はこなかったため、それは見送ったのだ。
もし草の別メンバーが潜入していたら、迷惑をかけたり……かけられたりするかもしれないしね。
「……変な証拠をどこかに残してしまったかしら」
「まあ、あくまで状況証拠止まりじゃないかな?
捜査されてないなら、顔バレはしてないはずだし」
「繋ぎ役の人が言うには、男女ペアで錆鎌情報を取れば男の方が幻影使いと仮定できる。
そしてシュタイン王子に恨みのある女性が、今のところハーティアが第一候補に上がるからって感じだってさ」
「なるほどね……」
彼女は、どうやらその説明で一応は納得してくれたみたいだ。
ちなみにこの繋ぎ役というのは、いつもリンゴを渡してくる女性の事である。
普段はポヤポヤとした話し方の彼女のだけども、技術は本物。
きっとその推測も合っている可能性が非常に高いはず。
だから、忠告は素直に受け取る事にした。
まあ相手は王女だし、よっぽど会わないとは思うけどね。
「というのを念頭に置いて、これからどうするのか考えるのね?」
「そういう感じで」
こうして一旦現状の確認が終わったところで、未来の行動について考えていく。
「パーティーへの潜入は……やめておいたが良いかしら?」
「そっちが無難じゃないかな。
そんなに美味しい話もなさそうだし、王女と会ったら困っちゃうしさ」
最初の任務でやった様な潜入。
あくまでアレはこちらを試す行為で、わざわざ今回もやる価値があるかは疑問だ。
魔力識別門を別人に変装して潜る、というリスクを犯さなければいけないし。
「やるなら、外かな?逃げやすくて、人に紛れやすいし」
「それは王都で?それとも、どこか別の街かしら?」
「そこは決まってないかな」
何ともざっくりした案しか出てこない。
流石のハーティアも呆れ顔で、ため息を一つ零しながらも、
「どうせなら、カルメンと相性が良いモノがいいわね」
そんなアイデアの手助けを出してくれる。
カルメンと相性が良いモノ……か。
言ってしまえば、領地で反乱が起こせそうな仕掛けをやりたいという事だ。
正直、そんな容易ではない。
アレだけの人数の気持ちを操る様な真似は特に。
……日本の時、それだけ大勢の民衆をを動かすのはどんなイベントだっただろうか?
例えば、オリンピックの様な日本を代表する選手が世界と戦う様なモノだったり、後は……アイドルとか歌手の歌だったり。
漫画やアニメを始めとするエンタメなんかも、やっぱりすごい熱狂を引き起こしていた。
後は……スキャンダル、とか。
「炎上……か」
「えっ、何か燃やすのかしら?」
「それはちょっと、違うけど……」
流石にこの異世界にモノが燃えるという意味はあっても、スキャンダルの方の炎上という言葉はない。
もちろん、俺が言っているのも物理的な方じゃない。
意図的に炎上を引き起こす……カルメンの反乱とはシナジーしていそうだ。
貴族が放蕩三昧どころか、犯罪行為をしていたならその怒りの炎は中々のモノになるはず。
しかも、リア凸という行為が制限されている訳でもないのだから。
結構悪くない案かもしれない。
そしてそれを引き起こすなら、どういうモノが良いか。
紙の雑誌は……高すぎて無理、というか足がつく。
だから一番良いのは……アレか、
「今日から、暴露系配信者になろうと思う」
「一言一句分からないわね」
異世界で初めての職業?に就く事にした。




