表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完結』婚約破棄令嬢 家柄……今は× 資金……今は× スパイ適正……◎ 〜家を追い出された令嬢が敵国のスパイと手を組み、破壊工作で祖国を滅ぼすまで〜  作者: お汁粉パンチ
カルメン領反乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/50

ネタバラシ


 今回行われたのは作戦名、『遅れた収穫祭』。

 ちなみに命名は、現地の草であるジャンだ。


 その作戦は、戦いよりもずっと前……収穫後の小麦が送られ始めた頃から開始していた。




 まず圧倒的に足りないのは反乱軍のメンバー。

 あちらは600人にプラスで回復役の教会関係者が数人。

 対してこちらは200人ちょっと。

 そのためカルメン領民を巻き込む事になった。

 

 ただ味方に引き入れるといっても、彼らはあくまで農民。

 今まで戦った事も無いだろうし、マトモな武装もないため二の足を踏む事は目に見えていた。


 だから最後に背中を押すため、約200名の錆鎌メンバーで、領地に入ってくる物資を略奪するのが計画の第一歩。

 これは領内の物価を急激に引き上げるためだ。

 事前に麦を売り渡した領主側から1日あたり銀貨1枚支給する、という情報はあったためその作戦を取る事になった。

 

 とはいえこの作戦は領民を締め上げて、武器を取らせるというモノ。

 だから前提として、かなり領民を苦しませる事になる。

 そのため、錆鎌では反対者も多かったけれど。

 俺とハーティアがゴリ押しし、リーダーのマルゲンが渋々首を縦に振った事で開始された。

 その時、これ以上の案が出なかったというのもある。


 そうして錆鎌メンバーは、カルメン領を訪れる商人達から略奪を繰り返した。

 その際出来るだけ、生存者を多く残すのがポイントだ。

 殺してしまうと彼らも罪悪感から辞めたくなるかもしれないし、この領地が危険という評判も伝わらない。

 実際自分命に危険を感じたなら、生き残った際には良かれと思ってその情報を広めてくれるだろう。

 ここだけの話と言って……ね?


 どうやらそれは成功した様で、反乱決行日近くでは通りかかる人間は滅多にいなくなった。

 せいぜい里帰りなどの目的で、元領民が行き来する程度だけとなる。


 領内を歩いていれば感じられる領主への不満。

 毎日の様に値上げされる食料。

 

 麦を収穫したあの日から、くすぶり続けていた不満の炎。

 それは静かに、彼らの心の中にある怒りの導火線へと火をつけていく。

 

 そして銀貨1枚でパン1つ買えなくなったあの日に、各地で大爆発を引き起こしたのだ。





「う〜ん。北へ行くみたいだし、王都が目的地かな?」


「事前に話を聞いていた通り、600とちょっとぐらいですわね」


「そうだね、なら計画は……3番かな」


 そんな会話を交わす俺達は、領都ラカンとその周辺を見下ろせる丘上で待機していた。

 

 ちなみに護衛などはいない。

 あっちはつけると言っていたけども「領主軍はこっち襲ってる場合じゃないでしょ」という感じで断ったから。

 ……監視されたくないから、っていうのが本音なんだけどね。


 そして俺達がこんな見晴らしの良い場所にいるのは、別に物見遊山ではない。

 全軍への情報伝達という、最重要といっても良いほどの役割を任されていた。


 どうやって幻影魔法しか使えない奴が伝えるのかって?

 そのやり方はとっても簡単!


 あちらで秘密裏に入手した鉄の板へ、幻影を貼り付ける。

 そうしたら後は『幻影』によって文字や地図を、こちらの匙加減で映し出せる様になる、そんな仕組みだ。

 ちなみに彼らには、他国で開発された遠くの情報を受け取れる魔法の道具と言ってある。

 彼らも元は軍所属、このアイテムの価値は良く理解してくれた様で、大喜びで持っていってくれた。

 ……そんなものが本当にあったら、当たり前だけど他国が流出させる訳ないんだけどね。


 それは置いておいて……現在、そこには同時にリアルタイムの地図が表示されている。

 作りとしては、カルメン領の地図に書かれた道へ双六のマスが割り当てられているイメージ。

 大体この辺に領主軍がいるだろうという場所は赤く光らせ、10分経ったら前に1マス進めるという感じだ。

 上手く西と東が軍を動かしてくれれば、先回りも出来たりするかもしれない。

 


 そんな感じで、これで俺たちの仕事は一旦終わりだ……事前に教えたモノは。

 敵軍がラカンの外へ逃げ出した際に、どの方角へ行き、どの道を通るかを全軍に知らせるというのが与えられた仕事だしね

 という訳で、もうこの場所に用はない。


 敵軍が降伏する計画1と領都ラカンへ籠城する計画2は、ボツになったし。


「良いかな、ネメア?」


「ええ、じゃあ後ろに乗って下さいな」


 そうして馬上から手を伸ばす、ネメアことハーティアの手を取り、俺も馬上へと腰を下ろす。

 それを確認した彼女は手綱を手に取り、馬を動かす。


 馬2匹借りれば良くない?と思われるかもしれない。

 確かに馬は反乱軍にとって貴重だけども、言ったら貸してくれるだろう。

 だけども、実は俺……馬に乗れないのだ。


 前世では乗馬する機会がなく、今世もずっと王都暮らし。

 別にスパイ活動で乗馬は要らないため、カリキュラムに載せてなかったのだろう。

 そんな訳で恥を忍んで、ハーティアの後ろに乗せてもらう事になったのだ。


「……ネメアは、馬に乗れるんだね」


「ええ、私達貴族は幼い時から練習させられますから。

私は7歳ぐらいから乗れましたわ」


 聞いといてアレだけど、確かに馬に乗れない貴族は見た事ない。

 貴族にとっては、日本でいう小学生ぐらいの時に自転車を練習する感じなのだろうか?

 これだけやらかした、カルメン領主も乗れるくらいだし。

 ……暇があったら、練習しようかな。


 

 そんな戦とは関係ない会話も挟みながら、向かうは北側で待機していた反乱軍。

 計画によれば左右の草むらにて息を潜め、ハッタリの足留めの罠で止まった瞬間から投石。

 その後に乱戦へ持ちこむという算段になっている。


 ガキンッッッ!!


 まだ遠くのここまで聞こえる金属がぶつかり合う音。

 どうやら、上手く交戦までは漕ぎ着けたらしい。


 もう反乱軍も全員隠れずに突っ込んで行った様で、裏側から見ても草むらには誰1人としていない。

 だから遠慮なく歩を進めて行き、反乱軍が隠れていた時と同じ視点で戦場を見る。


 奇襲は成功したはず。

 だけども、倒れているのは反乱軍ばかり。

 それは……正直分かっていた、装備だけは揃えられなかったし。


 地面へ出来た血溜まり。

 今も剣が貫く反乱軍の体。


「親父の仇だッッッ!!」


「くそっ、コイツら何人いるんだよッッッ!?」


「しっかり囲んで殺せッッッ、人数はこちらの方が多いッッ!!」


 恨みを叫びながら刃を交わし、体を傷つけ合う。

 武器を手放した者でも、お互い容赦なくトドメを刺す。

 この戦場という場所では、殺さなければ…殺される側になってしまうから。


 

 その光景はあまりにグロテスクで……人間のリアルを写し出していた。


 でも不思議と気持ち悪くならない。

 何故だろうか……教育のせい?

 それとも、あまりの非現実的光景で夢だと思っているから?


 謎に冷静な俺の体は勝手に動き始める。

 それは……錆鎌にも教えていない、台本のために。


 発動された幻影。

 対象は人間、それも……敵相手に。


 遠距離の人間相手のため再現度はそれほど良くない。

 だがこの場に、そんな事を気にするほど余裕があるものはいなかった。

 躊躇なく切り捨てられ、首は落ちる。

 

 幾ら回復魔法が強力でも……死者蘇生は不可能だ。


 そして一斉に幻影を解除したところで、俺は戦場へ背を向けて歩き出す。

 後方には乗ってきた馬と、背中を木に預けたまましゃがみ込むハーティアの姿。


「任務完了……帰ろうか」


「貴方……思ったより、鬼畜なのね」


「……今回は否定しない」



 行きとは打って変わって静かな道中。

 目的地は王都……ではなく、隣のサーミル伯爵領。

 いきなり王都へ行くと怪しまれる可能性があるため、回り道で帰宅する。

 

 それに……錆鎌メンバーに、このタイミングで抜けると言っていないし。

 不義理な形で、この反乱の間だけの関係は終わった。


「ねぇ、キース」


「何かあった?」


「今回も報酬は、半分なのよね?」


 深い森の中、彼女からの問いかけ。

 このタイミング?とは、少しだけ思ってしまう。

 

「そうだね、前回と同じ感じで……」


「なら、今回の責任も半分こ。 ねっ?」


「……ありがとう、ハーティア」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ